昨年以来、日本市場にPCゲームプレイヤー向けのマウスがいくつか登場した。この「DHARMA TACTICAL MOUSE」も昨年から発売告知が行われたが、発売は今年になってからで、いわば「最後発商品」である。世界のトップブランドに先行された市場に挑む「DHARMA TACTICAL MOUSE」の最大の特徴は、"日本発"である。

日本人の手、日本人の使い方に合わせたマウス

細身でやや背の高い形状の「DHARMA TACTICAL MOUSE」

「DHARMA TACTICAL MOUSE」を握った時の第一印象は「細い」だ。真上から見ると一般的なマウスと同じくらいのサイズに見える。しかし、握ってみると親指と薬指が触れる側面部分が深く絞り込まれているため、触感で細さを強く感じた。昨年に発売されたゲーム用マウスは総じて大きめだったため、相対的にも細さを強く印象づけられた。実はこの細さが「DHARMA TACTICAL MOUSE」の最大のコンセプトであり、昨年の先行他社のゲーミングマウスたちと一線を画す部分だといえる。

ただ細くしただけではなく、くびれるような造形になった理由は「マウスを持ち上げやすくする」ことにある。これはゲームプレイにおいて重要なことだ。日本の住宅事情によって、というと大げさだが、小さなデスクで小さなマウスパッドを使い、画面の広い範囲をマウスで動かそうとする場合、マウスがマウスパッドの端に来たときに持ち上げて戻し、さらにマウスを動かすという動作が頻繁に起こる。また、肘を固定して手首だけでマウスを動かす場合もマウスを持ち上げて戻したい。

その点で「DHARMA TACTICAL MOUSE」はとても持ち上げやすく、持ち上げを想定した設計のためにかなり軽い。くびれ部分がざらついた仕上げになっていて、軽く握っても指がずれにくいこともありがたい。マウスを持つ指にチカラを入れて保持するという状態は疲れやすいからだ。形状だけでもかなり配慮されていると感じた。

「DHARMA TACTICAL MOUSE」は、ゲーム用途以外に女性の事務職にもオススメしたい形状だ。「手が小さいけれど全体的に小さなマウスでは使いにくい」。そんな不満を持っている人には、前後方向と高さが一般的なサイズで、持ち手の部分だけ細いという形状が心地よく感じられるのではないだろうか。

クリック感が心地よいボタン類

ホイールの回転は固め。手前は解像度(スピード)切り替えスイッチ

オムロン製スイッチを採用した左右クリックボタン、側面ボタンはカチッとしたクリック感があり、押したことを指にきちんと伝えてくれる。押すまでの反力が小さく、ストロークが短いため、押そうとした瞬間、その気持ちを先取りするかのように押下が実行される。これはシューティングゲームにおける撃ち合いで重要な要素だ。一方でホイールの回転と左右チルトスイッチは固めに調整されている。チルトの堅さは指が触れた場合の誤操作を防ぐため。ホイールの堅さはシューティングゲームでの武器選択を確実に行うにはちょうどいい。しかし、リアルタイムストラテジーゲームやRPGで画面の拡大/縮小をするにはちょっと堅すぎるような気がする。

ホイールボタンの手前には解像度切り替えスイッチがあり、4段階の変更が可能だ。奥へ倒せばマウスカーソルが速くなり、手前に倒せば遅くなる。クルマのシフトボタンのような感覚で、ゲームプレイ中に簡単に切替ができた。出荷時は400/800/1600/2000cpiに設定されているが、ユーティリティソフトを使って100cpi単位で変更できる。また、ソフトウェアエミュレーションによって最大cpiは3200まで設定できる。もっとも、実際には2000cpiでも速すぎるほどなので、400/800/1200/1600と設定してみたところちょうど良かった。

難易度が高いが詳細な設定ができるユーティリティ

カスタマイズツール「ダーマコントロール」が付属する

「DHARMA TACTICAL MOUSE」はWindowsのマウスドライバで動作するため、専用ドライバは付属していない。しかし、動作の調整や各ボタンの設定を行うためのユーティリティソフト「ダーマコントロール」が付属する。各種ボタンの機能を個別に設定できるほか、スクリプトによる自動実行の登録も可能。設定の組み合わせをグループ化して保存する機能がある。スクリプト設定ではマウスだけではなく、キーボードマクロもマウスボタンに登録できる。設定のグループ化機能ではゲームタイトルごとの設定を保存でき、そのゲームで遊びたいときにいつでも呼び出せる。また、グループ設定はマウスに搭載されたフラッシュメモリに3種類まで登録できる。

左サイド。イルミネーションは単なる装飾ではなく、3つのモード設定とスピードを示す

右サイド。モード切り替えボタンがある

カスタマイズ設定をドライバ側ではなく、マウス側のメモリに登録する。そのメリットは、マウスを別のPCに接続した場合に設定を引き継ぐためだ。Eスポーツと呼ばれるゲーム競技会では、PCは各選手とも同じスペックで用意されるが、マウスやキーボードは持ち込み可能な場合がある。このとき、マウスにあらかじめ設定が仕込まれていれば、競技会場でいちいち設定をやり直す必要はない。自宅で遊ぶだけではなく、公式競技会も考慮してこそゲーム用マウスといえる。

「ダーマコントロール」はたいへん細かく設定できるソフトだが、それだけに理解できるまでの敷居が高いと感じた。メーカー側もそれを認知しているようで、製品の公式サイトで設定手順を詳しく公開している。気負わず、必要な機能から1つずつカスタマイズしていくところから始めて、少しずつ慣れていくといいだろう。