ニコンのデジタル一眼レフカメラ「D3」は、従来のDXフォーマット(APS-Cサイズ)ではなく、35mm判フルサイズ撮像素子を使用する意欲的なモデルである。開発者インタビューによると、DXフォーマットに固執していたのではなく、研究の積み重ねでフルサイズが"納得できる"ところまできたためだという。このD3のインプレッションをお届けしよう。なお、価格情報によると、D3の平均価格は56万円程度(2008年1月末日現在)。

初めての35mm判フルサイズデジタル

ニコンD3は、ニコンの一眼レフ ラインナップの中で、トップに位置するモデル。もちろんプロカメラマンの使用を想定している。ニコンのトップモデルは初代D1(1999年9月29日発売)以降、高速な「H」系、高画素の「S」系と分かれて進化してきたが、D3でふたたび一本化された。といっても、さらなる高画素モデル、高速モデルの可能性がないわけではないが。

D3の特長は、なんといっても35mm判フィルムとほぼ同じ36.0×23.9mmの大型撮像素子を使用していること。ニコンで言うところの「FXフォーマット」だ。デジタルに35mm判が適しているかどうかという議論はいまも続いているが、35mm版を欲しがるユーザーが多いことも確か。それが頑にDXフォーマットを続けてきたニコンから登場したのだから、カメラ好きが盛り上がるのも当然だろう。

明らかなメリットは、35mm判ながら解像度を1210万画素に抑えたこと。計算ではDXフォーマット+610万画素のD40よりも大きな画素になる。これで大幅な低ノイズ、高感度が可能になった。標準でISO 200~6400だが、ここから減感1段、増感2段、つまり最高でISO 25600相当での撮影が可能になる。これはちょっとすごい。

新登場のFXフォーマットで問題になるのは対応するレンズが少ないことだろう。もちろんフィルム時代に作られたレンズも使えるが、ポテンシャルを引き出すならデジタル用に設計されたレンズが欲しくなる。そこでいままで精根込めて開発してきたデジタル用のDXレンズを、D3でもそのまま使えるようにした。DXレンズを装着するとファインダーの周辺が薄暗くマスキングされ、撮影画角の違いがわかる仕組みだ。スポーツファインダーようで楽しい。最大出力画素数は、FXフォーマットで4256×2832ピクセルの約1205万画素、DXフォーマットでは2784×1848の約515万画素となる。

プロ機として重要な連写性能は、FXフォーマットで秒9コマ、DXでは秒11コマを可能にした。素晴らしく速い。これだけの速さを常に必要とするのは、一部のスポーツカメラマンぐらいだろう。それでも高速連写性能が重視されるのは、その速さを実現するために画像処理エンジンや機械部分、オートフォーカス性能などに高いテンシャルが必要なため。たとえシングルでしか撮影しなくても、高い連写性能は信頼や安心の指標になる。

頭頂部の凹みがデザインのポイント

ボタン類などの配置は基本的にD2系と同じ

液晶モニターは大きな3型。92万画素の高精細

上面もいつものニコン流。表示パネ

コネクター類はしっかりしたカバーで被われる

グリップも大柄。防塵・防滴性能も高い

コントラスト検出AFが可能なライブビューを搭載

D3のオートフォーカスは世界最多(ニコン調べ)の51点。うち中央寄りの15点はクロスセンサーを使用する。選択したフォーカスポイント1点を使用する「シングルポイントAFモード」、カメラ任せの「オートエリアAFモード」のほか、「ダイナミックAFモード」を装備する。これはフォーカスポイントは1点を選択するが、周辺のポイントからの情報を利用し、ピントを外れにくくする機能。従来機にあった「至近優先ダイナミックAFモード」は搭載されない。

液晶モニターは約93万画素の3型低温ポリシリコンTFT液晶で、上下左右170度の広い視野角を持つ。背面液晶には、絞りやシャッター速度、ホワイトバランスなどの撮影情報を表示できる。また、ボディ右肩の上面表示パネル、液晶モニター下の背面表示パネルも従来どおり装備するため、最大で3ヶ所も同じ情報が表示されることになる。

また、ニコンのデジタル一眼レフとしては初めてライブビュー機能も備えた。ライブビュー時のオートフォーカスは2種類。ファインダー使用時と同じTTL位相差検出方式AFセンサーを使用し、AF時にミラーを下ろす「手持ち撮影モード」と、撮像素子に映った像からピントを拾い出すコントラスト検出を使用した「三脚撮影モード」だ。ライブビューについては後ほど触れたい。ユニークなところでは内蔵の傾斜センサーを使った「水準器」機能がある。ファインダー内にバーゲージでも傾きを表示するが、背面液晶でも傾きが確認できる。

ニコンのトップモデルであるから、機械まわりが悪かろうはずがない。しっかりしたマグネシウムボディ、嵐の中でも何ともない高い防塵・防滴性能、30万回に及ぶテストをクリアした高耐久性シャッター、ミラーの振動を打ち消すミラーバランサー、視野率100%のファインダーなど、特長を挙げるときりがないほど。ただし、機械式のゴミ取り機構は搭載されない。

画像処理機能は「仕上がり設定」というあか抜けない名前から、今風な「ピクチャーコントロールシステム」に進化した。これについても後ほど詳しく触れたいが、とりあえず同機能を搭載したカメラであれば同じ絵作りの画像が得られるというコンセプトは特筆に値する。また、後処理で使う「D-ライティング」に加え、撮影時に明るさをコントロールする「アクティブD-ライティング」も搭載した。

ほぼ35mm判フルサイズの撮像素子。それでいて1210万画素しかない贅沢さ

51点の測距点。実際のファインダーでは合焦したポイントしか見えない

大型のバッテリー。D300のマルチパワーバッテリーパックにも利用できる

CFスロットをデュアルで装備。同時保存も可能

コネクター類。HDMI端子も備え、ハイビジョンモニターにも接続できる

オプションのワイヤレストランスミッター。カメラとはケーブルで接続する

D3と同時発表の「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED」。実質的なD3の標準レンズ

AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」。今回は使用できなかった