いよいよ世界最大の家電ショー「2008 International CES」が現地時間7日、開幕した。オープニングアクトをつとめたのは松下電器産業AVCネットワークス社の坂本俊弘社長。主催者CEA(Consumer Electronics Association)のGary Shapiro会長の開幕あいさつに続いて、坂本社長が2008年のCESのオープニング基調講演を行った。

松下電器AVCネットワークス社の坂本俊弘社長

坂本社長はまず、2004年のCESで大坪文雄AVC社社長(当時、現松下電器社長)が同様に基調講演をしてから、HDTV、HDカメラ、Blu-ray Discプレイヤー、HD-PLCなどが登場し、SDメモリーカードはデファクトスタンダードにまで普及したことを強調。SDカードに関しては今年早々にも32GBを発売し、microSDカードも4GB版を発売すると話す。

全体的に坂本社長の話は、基調講演にふさわしく松下電器の目指す方向性やビジョンを語りつつ、「ジャイアントサプライズ」(坂本社長)も用意していた。

150型に1インチ以下、未来もかいま見せる坂本社長

まずはテレビ。2005年のCESで同社は103型の世界最大のプラズマテレビを紹介、これが長らく世界一の座を誇っていたが、今回はこれを自ら更新し、さらに大型化した新たな世界最大のプラズマテレビのサイズは150型。人が見上げるほどの大きさで、「50型テレビ9枚分に相当する」(同)レベルだ。1,920×1,080のフルHD解像度でも、ここまで大きくなると高精細感がなくなってしまうため4K×2K(4,096×2,160)解像度をサポート。この解像度に対応したコンテンツを使うことで高精細な映像を超大画面で楽しむこともできる。

下に移動用の台があるとはいえ、ただごとではない大きさ。個人での購入も可能らしい

松下電器は現在、兵庫県尼崎市にプラズマディスプレイの第2工場を建設中で、2009年5月には稼働を開始する予定だ。この150型テレビはこの新工場稼働にあわせて製品化する予定だという。

大きさだけではない。パイオニアやシャープといった各社と同様にパネルの薄型化も追求しており、今回は50型で従来の約4分の1の薄さを実現。重さも2分の1程度となる25kgとなった。厚さは最薄で1インチ以下で、このサイズで壁掛けなども可能になりそうだ。

こちらは薄いテレビ。横から見ると薄さがよく分かる

さらに松下電器ではプラズマパネルの輝度をこれまでの2倍に向上させ、その結果、同じ輝度を従来の半分の電力消費で実現することができた。今後、さらに4分の1程度まで電力消費を軽減させる考えだ。さらに、CRTでは1台につき3.4kg使われていた鉛がプラズマディスプレイでは70g(37型)まで減っており、これをさらにゼロにする。水銀に関しても同様にゼロにし、電力消費の軽減とあわせて二酸化炭素の排出量を今後3年で30万トン減少させる計画。

これに加えて、さらに正式版の仕様が公開されたばかりのWireless HD規格を使い、HDビデオカメラとBlu-ray Discプレイヤー、HDTVを接続するデモも行われた。壇上にはBDプレイヤーとプラズマテレビが置かれ、BDプレイヤーの映像が流されていたのだが、坂本社長がプレイヤーとテレビの間のケーブルをばっさりと切断。実はWireless HDで接続していたので、ケーブルを切断しても映像がとぎれることなく流れ続ける、というデモ。さらに、同時に撮影していたHDビデオカメラを壇上のワゴンの上に置くだけで映像が転送され、ケーブルをつなぐことなく視聴できた。最大4Gbpsでの伝送ができるとあって転送速度も速く、「ビエラリンクのおかげで」(同)テレビのリモコン1つですべて操作できる、というのも売りだ。

ちょっと分かりにくいが、ケーブルを切断したところ。それでも後ろのテレビに映像が映り続けている

ケーブル切断後。右にあるのがBDプレイヤー。ここからワイヤレスで映像を送信している

これも分かりづらいが、BDプレイヤーの上の台にビデオカメラが置かれており、そのデータがテレビに無線で送信、ビエラのリモコンで再生などの操作ができる

続いてのデモはもっとも未来的な「Life Wall」。壁全体を1つの画面に見立て、壁紙を変えたり、窓を作って写真を表示したり自由に変更できる。壁に十字キーのようなボタンが現れ、手をかざしてアイコンを選択するとテレビが表示されたりネットにアクセスできたり、テレビの画面サイズを、手を動かして自由に変更して移動させるなど、これまでにない新しい生活空間を作り出せる仕組みだ。これに関しては今後登場するかもしれない未来の技術だ。

Life Wallのデモ。背景は自由に変更できる。十字の操作パネルに向けて手をかざすと選択でき、テレビやインターネットの画面がまた壁に現れる

手を動かすと一緒に十字キーも動く

テレビを表示し、そのテレビをまた動かしている

テレビ電話の拡大版、のようなもの

協業でさらにテレビをデジタルの中心に

講演のもう1つの大きなトピックが連携企業の発表だ。連携するのはGoogle。Googleと協業することで、動画共有サイトYouTubeと写真共有サイトPicasaをインターネット対応「ビエラ」から閲覧できるようにする「VIERACast」を開始する。YouTubeやPicasaのサイトを直接ビエラで表示するのではなく、ビエラで見やすく、リモコンでも操作しやすいようにして表示し、YouTubeの動画を流し見したり、Picasaにアップロードされた友人の写真を見ることができる。

発表にあわせて登壇したGoogleのProduct Manager for Picasa・Mike Horowitz氏(左)とYouTubeの共同設立者でCTOのSteve Chen氏(中央)

VIERACastの画面

YouTube(左)とPicasa

このPicasaに関してはさらに無線LAN対応のデジタルカメラLUMIXを紹介。無線LAN対応LUMIXは、T-Mobileと提携して外出先のホットスポットから撮影した画像を直接Picasaにアップロードできるようにした。これによって、撮影してすぐに画像を公開することができる。無線LAN対応LUMIXの登場は「間もなく」(同)とのことだ。

また、CATVのComcastとも連携し、従来は視聴に必要だったSTB(セットトップボックス)を内蔵したビエラを発表。さらにComcastの番組を録画して持ち歩けるポータブルプレイヤー「AnyPlay Portable DVR」も公開し、Comcastの番組をどこでも見られるようにした。

右がComcastの会長兼CEO・Brian L. Roberts氏。中央にあるのがAnyPlay Portable DVR」

新製品、新技術、新たなパートナーシップと盛りだくさんの坂本社長の講演。その根底には、ビエラをデジタルのハブとして配置し、すべてを接続していく、というビジョンがある。そして「家族の時間を取り戻す」。そのため、米国の家庭に同社のHDTVやHDビデオカメラ、デジカメなどのデジタル製品を配布して使ってもらい、それらが家族の交流にどう役にたつかを検証しているという。単に技術を紹介するのではなく、その目的・目標までを明確に語り、松下電器のビジョンを示した。

テレビはホームエンタテインメントを超えて生活をつなげるもの、と指摘。ビエラを中心として安心、安全、コミュニケーション、家族の団らんを実現する--それが坂本社長のメッセージだった。

安心・安全の例。外出先から家の様子を確認したり、カーナビからエアコンのオン・オフなどを設定することができる