「Chipset」

ATIのチップセットがAMDブランドで登場するようになり、結果としてマーケットはIntel/AMD/NVIDIAの三つ巴の様相を見せつつある。VIAは事実上リテール向けチップセットから撤退しており、今後はEmbedded向けに若干の製品を出す以外は、基本的には自社のEdenを初めとするプラットフォーム向けに特化した形となり、SiSはIntel/NVIDIA向けのローエンドでかろうじて存在を主張できる程度にまで追い込まれている。

もう一つ大きな見所は、Intelは統合グラフィックを本当に立て直せるか、である。G35の開発に失敗、結局G965に搭載されていたGMA X3000ベースのコアの手直しで製品をリリースしたものの、Vista向けドライバが相変わらずまともに動かないなどの状態で、搭載した製品もごく僅かしかない。実際IntelはG35を半ば「無かったこと」にしたいようだが、果たしてG45が本当にまともに出るのか、を疑問視する声は小さくない。

もっとも下手を打ってるのはIntelだけではない。AMDというかATIの場合、相変わらずサウスブリッジが足かせになっており、一体SB700はどうしたんだ? という状況にある。そんなわけで、以下細かく見てゆきたい。ちなみにそういうわけで、今回からVIAのチップセットはロードマップから落すことにした。

Intel

まずはIntelから見てゆこう。表11が大まかなロードマップ、表12が詳細スペックである。まず現在のX38に加えて、第1四半期末にX48が登場するが、これは単なるマイナーチェンジ。1600MHz FSBとDDR3-1600を正式にサポートしたものになるが、現在のX38も非公式ながらこれらの動作は可能で、実際これをサポートしたマザーボードも少なからず登場している事を考えると、実はあまり意味はない。

表11 : ロードマップ

表12 : 製品仕様

これに続き、おそらく6月のCOMPUTEX前後のタイミングでP45/G45が、そこから1四半期遅れてQ45/Q43がそれぞれリリースされる。P45/G45とP35/G33の違いは、

  • DDR3-1333をサポート。
  • グラフィックインタフェースがPCI Express Gen2になった。
  • グラフィックコアにGMA X4500を搭載した。
  • ICHがICH9ファミリーからICH10ファミリーに変更。

という程度でしかない。このうちメモリとPCIeについては説明の必要はないだろうから、GMA X4500とICH10についてもう少し。GMA X4500は遂にSM 4.0対応のシェーダを搭載し、G33比で3倍、G35比でも1.7倍高速としているが、この数字が本当だとしても、G33/35の描画性能がそもそもお話にならないレベルなので、3Dに関してはそれほど期待できないだろう。ただ、Windows VistaのAeroがそこそこ使い物になる程度の事は期待できそうだ。またHD-DVD/Blu-rayに対応したハードウェアデコーダ(詳細は不明だが、少なくともVC-1のハードウェアデコーダは入る模様だ)が搭載されるほか、DVI/HDMIに加えてDisplayPortの出力もサポートされる。

一方ICH10だが、これもICH9と殆ど変わらない。一部で噂されていた10GbEのサポートは当然ながら無し(MCHとの接続がDMI 2.0のままだから、これは当然だろう)。SATA Gen3(6Gbps)のサポートも見送られた。LPCに関しても引き続き残るようで、そうすると何がICH9と違うのか? という話になるが、目立った差異はICH10(R無しモデル)でもAHCIがサポートされたことと、Corwin SpringsというWakeup Eventのサポートが追加された程度だ。ICHから出るPCIeレーンは引き続きGen1のままであり、なのでICH9のマイナーバージョンアップと捕らえるのが無難であろう。

一方のQ45/Q43は、Q35/Q33の後継となる製品である。G45に比べて幾分動作周波数と機能を落としたGMA 4500が搭載される他は、G45とそれほど変わらない。ではQ45/Q43の差は何か? というと、まず利用できるICHがQ45はICH10DO、Q45はICH10Dとなり、これに関連してQ43はIntel AMT3どまりのサポートだが、Q45ではIntel AMT5がサポートされる事が最大の相違点となる。

これに続き、年末にはNehalemをサポートする初のチップセットであるTylersburg-DTがリリースされる。型番などは現時点では不明で、従来の延長でX50とかになるのか、全く新しいネーミングになるのかもまだ定まっていない模様だ。Nehalem世代の場合、メモリコントローラがCPU側に移動するから、事実上はQPI(QuickPath Interconnect)とPCI Expressのブリッジとして動作することになる。X38/X48と同じく2本のPCI Express Gen2 x16レーンを持つほか、I/O向けにDMI 2.0経由でICH10と接続する形態になるようだ。

面白いのはこの他のチップセットである。バリュー向けのIntel P31/G31とか、Intel 945GCすらも、2008年一杯生産が続く模様だ。これは2009年以降は製品ラインナップがNehalemベースのものに変わってゆく関係で、チップセットそのものの構造が大きく変わる事になる。なので、無理にバリュー向けに新製品を投入しなくても現行の製品ラインを維持する形でカバーできると見ているようだ。流石に2009年に入ると、P45とかQ45をベースにした製品にしないと能力的にきついかもしれないが、2008年一杯はP41とかG41などを出さなくても済むと踏んでいるようだ。もっとも945GCなどはCeleron 220とかDiamondville向けといっても過言ではないし、Pentium EシリーズならP31/G31で十分という事だろう。