韓国の通信大手・KTは、2008年の事業計画を発表し、IPTVやWiBroなどの新事業およびそのインフラ構築に集中投資することを宣言した。

新成長動力とインフラ構築に集中

KTが示した2008年の売上額目標は12兆ウォン(約1兆4,600億円)以上。もともと国営企業の韓国通信(Korea Telecom)だった同社は2002年に民営化されたが、以降の売上は「毎年11兆ウォン台にとどまっており、まるで成長が停滞しているような姿を見せてきた」(KT)という。そこで2008年には、これまでに超えたことのない壁を越えようと、新たな戦略を発表するに至った。

売上をあげるには投資が必須だが、KTでは2008年に2兆6,000億ウォン(約3,200億円)の投資を決定している。このうちの約6割にあたる1兆6,100億ウォン(約2,000億円)は「新成長事業と、このためのインフラ構築に集中投資する計画」(KT)だという。

新成長動力というのは、IPTVサービスの「MegaTV」、WiBroサービス、VoIPなどだ。具体的な投資額としては、MegaTVに2,800億ウォン(約342億円)、WiBroに1,200億ウォン(約146億円)、VoIPに540億ウォン(約66億円)、その他の項目に1,960億ウォン(約239億円)となっている。またインフラ構築分野への具体的な投資額は、次世代のバックボーンネットワークの高度化に6,800億ウォン(約830億円)、FTTHの普及拡大に2,800億ウォン(約342億円)だ。

KTによると2007年の投資額は2兆4,000億ウォンということなので、2008年の投資額はこれよりも2,000億ウォン(約244億円)多いものとなる。それほど、売上12兆ウォンの大台への意気込みも強いということだろう。

コンテンツやサービス面でも充実はかる

こうした投資により、MegaTVは現約30万人から150万人、WiBroは現約10万人から40万人、VoIPは現約4万人から100万人へ、大幅な加入者増を目指している。

さまざまな会員取り込み計画も用意しており、上記の2兆6,000億ウォンという投資額とは別に、コンテンツ強化のために1,300億ウォン(約159億円)の予算を確保している。

さらにMegaTVや固定電話、子会社のKTFがサービスしている携帯電話などのサービスのセット販売も、今後は積極的に行っていく予定だ。とくにWiBroと3G携帯電話、Wi-Fiといった無線ブロードバンドが提供可能な商品に関しては、「移動性の価値を提供したい」(KT)と述べており、"固定電話に強いKT"というこれまでのイメージが変わっていきそうだ。

このほか、新たなタスクフォースチームを設けてサービス作りを行っていくほか、KTFの端末やサービス販売店を運営する企業に一部出資することで、流通網の強化をはかる。また、中核事業を集中的に育成するため、それ以外の事業の一部をアウトソーシングする方針も立てている。

今、韓国の通信市場は岐路に立たされている。固定通信事業でのライバル会社・Hanaro Telecomが、携帯電話最大手のSK Telecomに買収される可能性が高まっているほか、LGグループの固定通信会社・LG DacomまでがIPTVサービスを開始し、LG Powercomのブロードバンドとセット販売を展開するなど、KTにとっては緊張感が高まる局面の連続なのだ。だからこそKTには、今回発表したような大きな成長目標が必要となるのかもしれない。

KTの成長目標が達成されるかどうかは未知数だ。SK陣営やLG陣営の出方や、顧客の動きにも大いによるためだ。2008年の韓国通信市場は大変熾烈な戦いが予想される。