電子キーボードの演奏方法は右手でメロディーを弾き、左手でコードを押さえる。コードはギターなどを弾いていた人は馴染みのある言葉だが、たとえば「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」はコードだと「C D E F G A B」に対応する。電子キーボードの場合は、メロディーに合わせてコードを押さえると予めプリセットされた伴奏やリズムが流れてくる。また、C(ド)と同時にその隣のD(レ)を抑えるとCm(シーマイナー)、さらにE(ミ)も押さえるとC7(シーセブンス)、さらにF(ファ)も加えるとCm7(シーマイナーセブンス)とコードが変化し、これにより、音楽のバリエーションはぐっと広がる。

コードは電子キーボードに書かれているので、初心者でも安心だ

それでも、分からない場合はコードを示すシールを貼ってもらうことも

なんとなく把握したことで、早速練習を開始。メロディーをゆっくりと弾きながらそれに合わせてコードを押さえる。……あれ? 弾けている。しかも、伴奏やリズムも一緒に流れるのでとても上手に聞こえる気が。「これって、予め内蔵されている音楽をなぞって弾いているのでしょうか」と上山先生に質問すると「今弾いている曲は自分で演奏しているものですよ。コードとメロディーがちゃんと合っているからでしょう」とお褒めの言葉をいただいた。若干のミスはあったが、10分程度の練習でなんなく弾いてしまった。もちろん、これは初級者用の楽譜であり、メロディーもコードも一番簡単なものだ。そこで、次なるミッションが課せられた。「楽譜に『フィルイン1』と書かれてあるでしょう、タイミングを合わせて『シンクロ/フィルイン ネクスト』と書かれているボタンを押してみてください」(上山先生)。

楽譜に書かれた「フィルイン1」。これは何だろう……

先生に教わったとおりにボタンを弾くと、単調だった曲が盛り上がり出した

言われるがまま、コードを引き終わった手でボタンを押す。すると、単調だった曲が急に盛り上がりだした。さらに「エンディング」ボタンを押すと、選択した伴奏のエンディングが流れる。これは面白い。「さらに音のレパートリーもピアノやギター、ベースなど600種類以上入っていますし、いろんな音を組み合わせたり、機能を活用することで曲のアレンジは無限に広がります」と上山先生。

電子キーボードの中にはピアノやギター、ベースなど600種類以上入っているという。いろいろ試してみたい

1時間という短い練習時間の中だったが、黙々と練習している自分が、先ほど質問させていただいた生徒さんらと重なった。レッスンの楽しさは、教室の雰囲気だけでなく「電子キーボード自体の魅力」にあったのだ、と今更ながらに気づく。「ピアノなら長期間練習しても弾きこなせない曲を電子キーボードなら簡単に演奏することができます。音楽を純粋に楽しむことができるツールとして大勢の方に親しんでほしいですね」(上山先生)。ピアノであれば難しい演奏も、電子キーボードであればより簡単に弾きこなすことができる。読者の方にも電子キーボードで演奏する楽しみを体感していただきたいと思った今回の取材であった。

あまりの楽しさに、我を忘れて練習に没頭してしまった。我が家にも一台欲しい