そして、NQEは、ファイナルと同じVictorvilleのSouthern California Logistic Airportにおいて10月26日から31日に掛けて実施された。NQEに35チームが参加したことから、ファイナルに進むチームも上限の20チームに近い数のチームになるのではないかと思われたが、結果としてファイナルに選ばれたのは11チームであった。このように少数のチームに絞り込まれたことは、非常に高い技術基準で選抜されたことをうかがわせる。この11チームは、

  1. 3:Stanford Racing Team (Junior)
  2. 13:Team UCF (Knight Rider)
  3. 15:Honeywell / Intelligent Vehicle Systems Team (XAV-250)
  4. 19:Tartan Racing (Boss)
  5. 21:Team Oshkosh Truck (TerraMax)
  6. 26:Team Cornell (Skynet)
  7. 32:Victor Tango (Odin)
  8. 54:Team AnnieWay (AnnieWAY)
  9. 62:CarOLO (Caroline)
  10. 74:The Ben Franklin Racing Team (Little Ben)
  11. 79:MIT (Talos)

である。なお、数字は各チームのチーム番号であり、( )内はロボットカーに付けられた愛称である。

チームナンバー3のStanford Racingは言わずと知れたStanford大学のチームで、前回の2005年のGrand Challengeを制した最有力チームである。そして、チームナンバー13のTeam UCFはUniversity of Central Floridaのチームで、予算が少ないので1996年という古いスバルを改造してKnight Riderを作り上げたというチームである。チームナンバー15のHoneywell / IVSは、Fordや自動車部品メーカーのDelphi、制御関係に強いHoneywellなどの有志の技術者が集まって作ったチームであり、FordのF-250小型トラックを改造して作ったのでXAV-250という名前が付けられている。

チームナンバー19のTartan RacingはCarnegie Mellon大(CMU)のチームであり、2004年のGrand Challengeではベスト、2005年には惜しくもStanfordに優勝をさらわれたが僅差の2位、3位を占めた強豪チームである。チームナンバー21のTeam Oshkosh Truckは軍用トラックメーカーであるOshkosh社のチームであり、唯一、大型のトラックであるTerraMaxで参戦している。このチームは2005年のGrand Challengeでは10時間の制限には若干遅れたものの完走を果たし、5位になった実力を持っている。

チームナンバー21のTeam CornellはCornell大学のチームであり、チームナンバー32のVictor TangoはVirginia工科大学のチームである。そして、チームナンバー54のAnnieWayはKarlsruhe大学などが設立したCollaborative Research Center on Cognitive Automobilesのチームであり、チームナンバー62のCarOLOはBraunschweig工科大学のメンバーを中心とするドイツのチームである。自動車工業が強いドイツの2チームが参戦することに不思議は無いが、今ではドイツ以上に強い自動車メーカーを持つ日本から参加するチームが全く存在しないのは残念である。

チームナンバー74のBen Franklin Racing TeamはPennsylvania大とLehigh大の連合チームである。このチームのLittle Benはプリウスベースのロボットカーであり、UCFのポンコツ(?)スバルと並ぶ、このレースに参加する2台の日本車である。チームナンバー79は東部の名門工科大のMassachusetts工科大(MIT)である。MITのTalosは、4コアのブレードを10枚搭載し、今回出場の中でコンピュータとセンサーではもっとも重装備の車で、そのために6KWの発電機を備え、冷却のために専用のエアコンを屋根に搭載している。

レースは3つのミッションに分かれており、それぞれのミッションの中に6、7個のサブミッションがあるという形になっている。サブミッションは、指定されたルートを通ってどこそこの地点に行くとか、駐車場の指定されたスポットに停車するとか言うものである。これらのミッションは、レース開始の直前にUSBメモリで与えられるので、各チームはこれをオンボードのコンピュータにインプットすることになる。コースの地図は、こちらに掲載されているが、ストリート名が記入されている舗装道路だけではなく、中央に見える円形の空き地にトラフィックサークルが設けられたり、周辺の未舗装の道を走るコースも含まれていたりしている。なお、各車の後ろには人間のドライバーが乗った追走車が追いかけ、万一の場合には、緊急停止のリモコンボタンを押すことになっている。

基本的には各チームに与えられるミッションは同じであるが、サブミッションの順序やルートなどの選択順序は個別に設定されているようで、ロボットカー同士がすれ違う場面が出てくる。更に、市街地の交通を模擬するため、プロのドライバーが運転する37台のトラフィックビークルが配置され、指令されたルートでコース内を走行する。従って、信号の無い交差点で各方向からロボットカーやトラフィックビークルが走ってくるというような難しい状況が出現する。まあ、混みあった都市の交通というほどの状況ではないが、一応、市街地の交通状況を模擬していると言えると思う。

ロボットカーと追走車、トラフィックビークルが入り乱れる交差点の状況(左)。スタート直前の、コンクリートの隔壁で仕切られた各チームのピット(右)。左側のスタンドには多数の観客が見られる。(出典:DARPAのWebcast)