まとめ~GPGPUがもたらすものとは?

最後にKirk氏はこう結んでいる。

「GPUはグラフィックスやゲームを素晴らしいものにします。ですがGPUは今やそれだけのためではないんです。膨大なデータに対して計算を行わせる処理系に使える"計算資源"(コンピューティング・リソース)なのです」(Kirk氏)

そして、Kirk氏はこの世界には、プログラムをGPGPU的に実装し直すことで、あと100倍は速くできるソフトウェアパラダイムや科学技術計算分野があることを指摘。そしてそれは単に「CPUの100倍速く実行できた」というパフォーマンス向上以上のものをもたらすと主張する。

「100倍速く実行されることで、ただ速くなっただけでなく、そこにインタラクティブ性が生まれるのです。これにより、それまでは計算を行うことだけで精一杯だった分野の研究が飛躍的に進む可能性があります。また、実際の実験を行わずとも、計算機上の実験で多くの結果を得ることもできるようになります」(Kirk氏)

インタラクティヴ性の獲得は、カット・アンド・トライ的なアプローチから新しい発想を生み出させる可能性を秘めている…と、Kirk氏はこう言いたいわけだ。

GPUのCPUへの統合について積極的なAMD(ATI)と、逆に否定的な立場を取っているNVIDIA。ただし、立場は違えど、ATIとNVIDIAは共にGPGPUの可能性と明るい未来を訴え続けている。

GPGPU活性化はGPUの新たなる活躍の場を切り開くことになり、GPUの未来市場を開拓することにも繋がる。そして、なによりも、ATI対NVIDIAのこれからのGPU戦争の新たな戦場にもなりうる領域だ。今後の展開が楽しみである。

「ソフトウェアの100倍の高速化は、そのパフォーマンス向上以上の"インタラクティブ性"というものを生み出すのです。そこにこそ大きな価値がある」(Kirk氏)

(トライゼット西川善司)