米National Instrumentsの日本法人である日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は7日、グラフィカル開発環境「LabVIEW」の最新版となる「LabVIEW 8.5」の販売を開始した。今回のバージョンアップでは、マルチコアプロセッサのための機能の強化や追加が重点的に行われた。テストスループットが向上したほか、より確定性に優れたリアルタイムシステムの構築や、多くのプロセッサを必要とする解析を効率よく行うことが可能になったという。

LabVIEWは、計測や制御、組み込システム向けの開発環境である。グラフィックを利用した言語を用いたプログラミングが行える。関数を表すアイコンを配置し、アイコンとアイコンを配線することで、処理を記述できる。これにより、処理を直感的に記述したり、理解できる点が特徴である。

グラフィカル開発環境「LabVIEW 8.5」の画面 - グラフィックを利用した言語を用いて、直感的に処理を記述できる

同社によると現在、プロセッサベンダでは、並列処理を行うマルチコアアーキテクチャの性能向上に注力している。その性能を最大限に活かすためには、マルチコアプロセッサに最適化されたアプリケーションが必要だという。今回発表した「LabVIEW8.5」は、同社が10年近くにわたって開発を続けているマルチスレッド技術を基にしている。

LabVIEWは、既存のバージョン8.20からマルチコアプロセッサに対応していたが、今回発表したバージョン8.5では新たに以下のような技術を導入し、さらなる機能の追加や強化を図った。

コア数と負荷に応じたスレッド数を制御

今回のバージョンから、スレッド数を管理する機能が追加された。LabVIEWランタイムエンジンが生成するスレッドを余剰なコアに振り分けたり、コアが不足した場合にはスレッドを減らすといったことを行う。これにより、コア数を意識しない開発が可能となる。

マルチスレッドアプリケーションを柔軟にチューニング

「タイミングループ」という機能により、明示的に新しいスレッドを生成することができるようになった。また、そのスレッドを実行するコアを指定することも可能。

リアルタイム環境でマルチコアプロセッサをサポート

新しく追加された「LabVIEW Real-Timeモジュール」により、リアルタイム環境においてもマルチコアプロセッサを使用したアプリケーションの実行が可能となった。リアルタイム性(時間確定性)を維持しつつ、アプリケーション全体のスループットを向上させることが可能となった。

メモリ管理が柔軟に

新たにメモリ確保することなく、確保済みのメモリを再利用することで、少ないメモリで大量のデータ操作が可能となった。また、メモリアクセス減少により、アプリケーションの実行速度が向上した。

マルチコアプロセッサの性能を引き出すドライバを提供

マルチプロセッサの性能を引き出すためのドライバの提供を行う。このドライバを使用することにより、マルチスレッドで実行させることによる誤動作を抑えられる。また、あるスレッドで実行中の処理を別スレッドでも同時実行が可能となり、マルチコア環境で安全かつ高速にI/O処理を実行できるようになる。

Lab VIEW 8.5の価格は、ベースパッケージが176,000円、開発システムが352,000円、プロフェッショナル開発システムが601,000円である。それぞれ初年度保守プログラム付き。なお、「Lab VIEW 8.5 日本語版」の出荷は9月中旬を予定しているという。

動画の並列処理の有無による処理時間比較。並列処理を使わなかった場合、処理時間が290msほど掛かるのに対し、並列処理を行うと180msほどで処理が終わる