NECエレクトロニクスは4日、W-CDMA、HSDPA、GSM/GPRSといった通信規格に対応した携帯電話向けLSI「M2」を発表した。FOMAでは約700時間の待ちうけ時間を実現したという同社の従来品「M1」と比べてほぼ同じ消費電力でありながら、ロジック回路を約2倍に増やしている。

携帯電話向けLSI「M2」

本製品は、アプリケーション処理機能とベースバンド処理機能を1チップに収めたものである。アプリケーション処理部には、DSPコアと英ARM製のプロセッサコア「ARM1176JZF-S」、グラフィックや音声処理用のCODEC、動画データの圧縮符号化方式であるH.264の処理回路、そのほかタイマやDMAコントローラなどを搭載している。DSPコアおよびプロセッサコアは、それぞれ最大500MHzで動作する。また、ベースバンド処理部は、昨年8月に同社を含む5社が共同で設立したアドコアテックが開発した。

本製品は機能マクロごとにモニタ回路を備えており、クロックを負荷に応じて自動的に制御することにより、消費電力を抑えている。さらに、高速な電源スイッチを内蔵してリーク電流を抑えたり、閾(しきい)値の異なる3つのトランジスタを用途ごとに使い分けるほか、基板バイアス(n型ウェルおよびp型ウェルの電位)を制御することによりリーク電流を減らすなど、低消費電力化のための複数の仕組みを備えている。また、同社の従来品である「M1」は90nmプロセスで製造していたが、本製品はより微細な65nmプロセスを採用した。

周辺インタフェースとして、外部バスインタフェース、DDR-SDRAMインタフェース、SDカードインタフェース、UART、I2C、SPI、IrDA、GPIO、USBなどを備えている。そのほか、カメラインタフェースやLCDインタフェース、地上デジタルTV用のインタフェースやITU-R.BT656出力なども搭載している。

同社では、本年(2007年)10月より本製品の量産出荷を開始する。2008年には月産100万個を予定。すでにサンプル出荷を開始している。サンプル価格は5,000円。本製品の開発用ボードも提供している。

「M2」の開発用ボード