1月に発表されてから、iPhoneはなぞに包まれた部分が多かった。そのため様々な憶測や噂がiPhoneに対する期待感を高めていたのも事実だ。iPhoneは今日のスマートフォンの使いづらさを解消するデバイスだったはずなのに、「5年先ゆく携帯電話」というような表現に尾ひれがついて、次第になんでもできるものスゴいデバイスというような盛り上がりになっていた。そのため発売直前にAppleが次々に解説ビデオを公開し、様々なところでレビューが掲載されるにつれて、「iPhoneでは、こんなことができない」というような指摘が目立ち始めた。これを期待はずれと言う人もいるだろう。

だが、スマートフォンの使いにくさを改善したいという点で、iPhoneはAppleの宣伝文句通りである。スペックを比較すれば、他のスマートフォンを圧倒するような存在ではない。低速なEDGEの採用、メディアカードスロットがなく、FLASHをサポートしていないなど、劣る面も多い。各種機能を個々で見れば、特に新しいものはない。だが全体的な使用感は、たしかに次世代の携帯電話なのだ。iPhoneのマルチタッチを使った滑らかで使っていて楽しい操作、美しい表示や効果、複数の機能のスムースな連携などを体験した後では、同じようにWebやメール、メディア再生に対応する既存のスマートフォンが古くさく見える。"ユーザーが使う"という点で、何歩も先ゆく携帯電話と言える。

使用期間はわずか1日だが、少なからず不便に思える点にもぶつかっている。ただiPodやiTunes Storeもスタート時から今のような成熟された形ではなく、むしろ不足する点が目立った。新しい製品やサービスが市場を変えるのは、製品に込められた理念である。それがはっきりと伝わってくる点で、iPhoneのインパクトは大きい。iPhoneから派生する製品やサービス、そしてiPhoneに刺激された他の携帯電話メーカーが今後どのような対抗策を打ち出すかが楽しみだ。