従来、COOL Chipsは低電力LSI関係の発表にフォーカスしていたが、今年からHPC(High Performance Computing)にも間口を広げた。そして、今年は、日本の次期スパコンプロジェクトのリーダである渡辺氏の「次世代スーパーコンピュータプロジェクトとその技術的課題」と題する講演、「1ペタフロップス スパコン用の65nm CELLプロセサ」に関する招待発表、そして、「10ペタフロップス スパコン用プロセサ」に関するパネルディスカッションなどが催された。

渡辺氏はNECに長く勤められた方で、同社の最初のスパコンであるSX-1のアーキテクトであり、地球シミュレータまでのNECのスパコンをリードして来られた日本のスパコン界の顔ともいうべき方である。また、昨年のSC2006では、日本人としては初のシーモアクレイ賞受賞されている。現在は、理研に移られて日本の次期スパコンプロジェクトのリーダを勤めておられる。

その渡辺氏の講演であるが、背景、目的、スケジュールなどを述べ、設置場所は神戸に決定し、惜しくも横浜は落選したことなどを述べた後、10ペタフロップスを実現するには消費電力、超並列プログラムの開発、巨大システムの信頼性の確保、巨大ストレージの実現などに課題があると述べられた。

しかし、前半はあちこちで既に聞いた内容であり、後半は一般論的に技術課題について述べたもので突っ込みに欠ける印象であった。講演後の質問が低調であったので、筆者が手を挙げて、「説明されたスケジュールによると基本設計は3月末で終わっているはずだが、次期スパコンの技術的内容は何時頃になったら公表されるのか」と質問をしたら、「5月末の文部科学省の審査までは発表できない。その後」という答えであった。この質問に関して、筑波大の朴先生からは、「ああいう質問をしてはイカン」とお叱りを受けたが、「皆、聞きたかった。良く質問してくれた。」という先生も居られ、筆者の質問に関しては、賛否両論であった。