Enterprise Managerが最も良く使われてきた場面は冒頭にも書いた通りOracle Databseの管理だ。これが現在では、オラクル自身のラインナップ拡張にあわせてアプリケーションサーバ・ミドルウェアからERPなどのビジネスアプリケーションまでその適用範囲を広げている。

オラクルの強みの一つ、データベース・ミドルウェア・アプリケーションの「統合」を管理ツールにも適用したものが現在のEnterprise Managerの姿といえるだろう。

「メインフレームからオープンシステムに移行して複雑になったのがシステム運用」と三澤氏。メインフレーム時代は一気通貫、システムがデータ層からインタフェース層まで一つのプラットフォームとして提供されていた。一方でオープンシステムではデータベースからミドルウェア、アプリケーションとそれぞれが個別のコンポーネントとして独立しており、管理を個別に行う必要がある。結果、管理が複雑になってしまったというわけだ。

この情報システムの複雑化という流れはSOAなど、分散指向の設計概念のもとではより加速することになる。こうして企業内に分散したサーバ、多層にまたがるコンポーネントの管理を行う必要がある。

一方で経営を取り巻く状況を見ると、BCM(Business Continuity Management)やコンプライアンスに対する要求が高まっており、分散したシステム構成の把握とアップデートの適用を確実に行う必要がある。もちろん、トラブルの未然防止と迅速処理も従来以上に求められる。

こうした情報システムと経営双方の要求に対し、Enterprise Managerでは一元管理・GUIベースの可視化と操作・自動化という手段で応える。R3でもこれらの点が強化された。

一元管理・可視化

構成の管理では、インストールされているオラクル製品の検索を行い、バージョン・適用されているパッチなどの情報を収集可能。

これをもとに適用すべきパッチ、また、パッチにより修正されるバグなどが提示される。こうした機能が、「システム」として定義されたサーバ・コンポーネントの集合に対して一元的に行われ、まとめて提示される。この内容はCSVファイルでダウンロード可能、コンプライアンスレポートなどの作成に活用することができる。

パッチを適用する際には、その内容・提供/影響範囲などが提示される。実際のアップデート処理もEnterprise Managerから行うことができる。

自動化

こうしたパッチの適用などは任意のホスト・インストールベースに対し、スケジュールを組んで実行することができる。アップデート情報の入手も同社サポートサイト"MetaLink"から自動的に行われる(※)。自動化により、パッチの見逃しや当て忘れなどがなくなるというわけだ。

米国ではR2から提供されていたMetaLinkとの連動機能がR3から日本でも提供される。

SOA対応

機能としてのSOA対応も進んでいる。R2まではデータベースとアプリケーションサーバを一元管理してきたEnterprise Managerだが、R3ではこれらに加え、Oracle SOA Suiteに対応、BPEL・ESBといった新たな適用技術が加わっている。

BPELで実行されているサービスについても、一元的な統計情報入手が可能。また、サービスの生存やレスポンスなどを調査するテストの自動作成も可能となった。