--極めて刺激的な内容だが、私も全く同じ見方をしている。ところで、米国の華人人材資源の話が出た。毎度思うことだが、米国多国籍企業の経営ローカライゼーションの背景にはそもそもが移民国家で多民族社会であるという米国の社会の成り立ち、在り様そのものが控えているような気がする。そうした場合、単一民族社会を背景とする日本企業には、国際経営での比較優位が生まれにくいようにも思えるが。

たしかに、米国社会の在り様、というのは大きな要素の一つだと思う。だが、それだけではない。実は、同じ米国企業のMicrosoftが、3年前に中国事業で痛い思いをしている。当時、Microsoftが中国事業で尖兵に使ったのは、いわゆる留美学生(米国への中国人留学生)だった。Microsoftは優秀な中国人留学生を米国で採用し、かれらの母国へと派遣したわけだが、実際は、(中国本土で)働いたことがなかったウブな学生たちだけに、大した力を発揮できなかったのだ。

Microsoftから支援コンサルテーションを委嘱されたマッキンゼーが下した結論は、「IBMに学べ」であった。そもそも、Microsoftは公共関係部門(筆者注: これこそ、中国ビジネスの要諦、核心のひとつだ)を法務部の下に置いていた。これでは、「天下の公関部門」が本来の力を発揮できない。

さらに、マッキンゼーは、経験のない留学生ではなく、IBMやモトローラなどで多くの経験を積んだ現地の経営経験者のヘッドハンティングをMicrosoftに勧めた。ここでも、中国浸透を主導する人材選定のキーワードは、人材、中国語、長期間根を下す、の三点だった。

Microsoft中国は、その後短期間で持ち直し、最近三年間は年率30%超のスピードで成長を続けている。