--中国企業のグローバル経営についても、聞いておきたい。聯想(Lenovo)がThinkpad部門を買収して話題になったが、いまやグローバル本社はニューヨークでCEOも米国人だ。近い将来、おおくの中国企業が多国籍化すると思われるが、かれらの経営ローカライゼーションは、いかなるものになるのだろうか。

私は、1995年の一年間をニューヨークで過ごした。そのときの仕事は、米国消費市場を目指す中国企業に、ご当地米国のトップマネジメント(CEO)を探し、紹介し、定着させることだった。現在の中国企業の規模は、80年代、プラザ合意直後に海外へ出た日本企業の規模には未だ及ばないが、10年後には、本格的な多国籍企業化がおこる。そしてその時に中国企業が模範とするのは、やはりIBMを始めとする米国の多国籍企業だろう。

私のIBM時代の上司はキューバ系米国人で、カストロ時代に命からがら米国に亡命し、米国で高等教育を受け、ビッグブルーの一員となった人物だった。かれは天津に赴任した当日、私に向かい、「中国人の聡明さを信じている。米国人を凌ぐほどだと思っている。IBMのやり方を理解してほしい。ともに、IBM天津の一員としてがんばろう」と言った。私は非常に尊重されたと感じ、発奮したものだ。

--最後に、このインタビューを読む日本企業の関係者、日本の産業界の関係者に向けてメッセージを送ってほしい。

日本企業のなかにも、例えばSONYやトヨタ、松下のように多国籍企業として大きな成功を収めている企業がある。社会風土も、真の多国籍企業を産む重要な土壌だろうが、より重要なのは、グローバル経営の経験、実践を積み重ねることだと思う。そうした観点から、中国に直接投資をおこない、成功を目指す日本企業にアドバイスを送るとすれば--

  1. 中方、日方と現地法人スタッフを「分け」ない
  2. 効果的なキャリアパスを用意して積極性を引き上げる
  3. 日本の経営理念、思想、文化を現地法人にうまく紹介しつつ、中国へ派遣する日本人スタッフへの派遣前研修--中国の文化、習慣、中国人の価値観、言語等の学習--をしっかりおこなう
ということだ。特に、言語はきわめて重要である。米国に派遣するスタッフには英語能力を求めるのに、中国に派遣するスタッフには英語でとりあえず済ませろ、というのはおかしい。コミュニケーション、思想交流が全ての基礎だ。日本、日本企業に思いを寄せる者として、率直に話をさせてもらった。日本の友人たちの、何らかの参考になれば幸いだ。