その目の疲れ、実はよくない生活習慣が原因かも?

今や私たちの生活においてパソコンやスマートフォン、携帯型ゲーム機などは当たり前のように使われている。ただ、これらのアイテムを使いすぎて目を酷使すると、「疲れ目」やひどい場合は「眼精疲労」という症状につながってくる。そして目の酷使は、実は頭痛や肩こり、食欲不振などの「目」以外の体の不調にも関わってくるのだ。

今回は疲れ目の原因とその治し方、そして疲れ目が引き起こすさまざまな症状に関して、あまきクリニック院長の味木幸先生に話を伺った。

疲れ目と眼精疲労の違い

まずは目が疲れるメカニズムについて理解しておこう。

私たちの目は、何かを見る際にカメラのレンズのような働きをする「水晶体」を調節することで、対象物にピントを合わせている。この水晶体を調節するのが「毛様体」と呼ばれる組織で、この毛様体の筋肉が水晶体を引っ張ったり緩めたりしている。

長時間のパソコン作業のように近くの物をじっと見るような場合、毛様体の筋肉はずっと緊張していることになり、結果として筋肉疲労を起こしてしまい目が疲れるわけだ。

味木先生は、「目が疲れていても、一晩寝て翌朝起きた際に気分爽快で快適な気分であれば、病気の部類には入りません。ですが、慢性的にひどい症状の場合は、『眼精疲労』として治療対象になります」と解説する。

比較的症状の軽い眼精疲労として、朝はよく見えるが、夕方にスマートフォンが見えなくなる「スマホ老眼」や、目の調節力を使いすぎたことにより、一時的に目の調節力が低下する「仮性老眼」などがある。だが、

■目の奥の痛みが取れない

■頭痛や吐き気がする

■手がしびれる

■目を開けるとまぶしくて涙があふれ出る

これらの症状が該当した場合、重度の眼精疲労を疑って速やかに眼科を受診した方がよいだろう。

ストレスが原因の眼精疲労が増えている

ただ、自ら眼精疲労を訴えて味木先生のクリニックを来院した人の8割には、眼疾患がないと味木先生は話す。「目の病気がないか」「眼鏡が合っているか」などをチェックして、何も異常が見当たらない場合、味木先生は「目」以外の生活習慣に問題があるケースが多いと解説する。

「目に何も問題がない場合は、生活習慣病の一つである『スマホ老眼』や、『睡眠がわるい』『運動不足』、または『精神的なもの』など、さまざまな原因が考えられます。パソコン使用時の作業姿勢や作業時間など、目が疲れ始めた時期と前後して何が違うのか患者さんに聞くと、大体何らかの環境が変わっています。また、通勤時間中に歩く時間が短縮されたなどのちょっとしたことも、眼精疲労のきっかけとなるんですよ」。

特に今増えているのが、ストレスを原因とする眼精疲労だという。20代の社会人で眼精疲労を訴える人は、強すぎる責任感がかえって"重荷"となってしまい、30~50代になると会社などでの人間関係における悩みを抱え込むようになる。ストレス社会は、私たちの心だけではなく目にも多大な影響を及ぼしているのだ。

目が体に及ぼす影響

さらに、さまざまなストレスと目の酷使が相まって、頭痛や肩こりなどの症状にもつながることがあるから要注意だ。逆に言えば、慢性的な頭痛や肩こりはストレスが原因の可能性もある。

これらの体の不調には、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが深く関わっている。採用試験の面接時など緊張を強いられる場面においては交感神経が、友人や恋人と一緒に過ごしているときなどリラックスできる場面においては副交感神経が優位になっている。

だが、日常的にストレスにさらされていると、常に交感神経が過敏に働いてしまい、自律神経のバランスが崩れてしまう。そのような状態において、ある1点だけを凝視するようなパソコン作業を連続して行い、毛様体の筋肉をずっと緊張させると交感神経の働きはさらに強くなる。結果として、頭痛や肩こり、疲労感、不眠、体のだるさ、食欲不振などの症状が出てしまうというわけだ。

生活習慣を変えるだけで目の疲労が軽減

では、疲れ目や眼精疲労を解消するためには、どのような方法があるのだろうか。実はその対策は驚くほど簡単で、「ほとんどの人は生活習慣を変えるだけで目の疲労は治ります」と味木先生は話す。下記の3つの対策を早速実践してみよう。

対策1 パソコンの作業を断続的に行うようにする

ヒトも動物である以上、周囲を警戒する動物のように目をぐるぐると動かす姿がある意味で「正常」といえる。一方で、味木先生は、「キーボードなどを打ち込んでパソコンを凝視する姿は超異常」と表現する。パソコン作業はできるだけ断続的に行い、長時間使用する場合は、1時間作業をしたら15分は目を休めるなどの工夫をしよう。

対策2 スマートフォンを使いすぎない

「スマートフォンはガラケーよりも特殊です。インターネットに接続して何かを検索するなど、とても頭を使いますし文字も小さいです。その文字もグレーっぽい色で、目に負担がかかりやすいです」(味木先生)。せっかくパソコン作業を中断しても、一服時やコーヒーブレーク時にスマートフォンを眺めていては、結局目を酷使し続けることになってしまうので注意しよう。また、スマートフォンはLEDの光も突出して強いという特徴がある。LEDディスプレーなどに含まれるブルーライトは睡眠に悪影響を及ぼすため、日没後はスマートフォンの使用を控えた方がよい。

対策3 適度な運動を取り入れる

目周辺の筋肉は首や肩、腕の筋肉とつながっているため、肩関節周辺の筋肉を刺激することは目にいい。首のストレッチには「肩を動かさずに首を回す」などが、腕のストレッチには「両手を握って前にぐっと伸ばし、そのまま上に伸びをして、手を離して後ろに回す」などがある。また、しっかりと筋肉を意識して歩くことも大切なので、通勤・通学時に1駅余分に歩くなどの生活習慣を取り入れるのもいいだろう。

写真と本文は関係ありません

記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。