世界最大のモバイル関連展示会MWC取材のためにスペイン・バルセロナに行って来た。渦中に身を置くと、そこ全体で起こっていることがわかりにくくなってしまう。MWCほどの規模のイベントだと余計にそうだ。デバイスばかりを追いかけていたら、今回のMWCは、肝心の通信のことがお留守になってしまった感がある。

そんな中で、LenovoがひっそりとLenovo Connectのサービスインをアナウンスし、Lemon X3やMiix 510 LTEなど、いくつかのデバイスを発表していた(Windows Blogの該当記事)。

Lenovoブースに展示されていたLenovo Connect

端末と通信を紐付け、海外ローミングも可能に

LenovoではEmbedded 4G LTEと呼んでいるが、いわゆるeSIMのソリューションだ。デバイスに組み込むSIMカードで、工場出荷時にデバイス内にモジュールとして埋め込まれ、事業者との契約をオンラインで実行し、その情報を書き込めるというものだ。つまり、物理的なSIMカードを差し替える必要がなく、そして、差し替えることもできない。契約者の情報はすべてソフトウェア的に保存される。

このことで、そのデバイスを購入したユーザーは、それに対応する任意の事業者とオンラインで契約し、データ通信サービスを利用できる。Lenovo Connectでは、Lenovo IDと呼ばれるサービスアカウントを使うことで、同じIDを設定している複数の異なるデバイスで、そのデータサービスをシェアするといったことができるようになるという。

このサービスは、まず、ヨーロッパでスタートし、順次、世界各国に展開されていくということだ。

Lenovo Connectの画面。Lenovo IDでサービス内容を管理する

PCメーカーがMVNO化するメリット

よく似たサービスに、iPadで使われているApple SIMがあるが、エンドユーザーから見たときには似たような環境が得られることになる。Apple SIMがあくまでも物理的なSIMカードであるのに対して、Lenovo Connectはデバイスに埋め込まれたモジュールである点が最も大きく異なる。今の時代はまだ、Apple SIMのように事業者契約が個別にでき、さらに既存のSIMに差し替えられる方が便利にも思う。

ただ、Lenovoのようなグローバルベンダーにとっては、世界各国に出荷する各種デバイスの関連パーツの差異を最小限にすることができるので、コストメリットも出てくる可能性がある。とはいえ、通信がからむので、対応バンドやアンテナなどの問題も出てくる。iPadは、とにかくあらゆる国のあらゆる周波数に対応する道を選んでいるが、それによって、感度などが犠牲になっているかもしれない。

いずれにしても、PC的なデバイスを購入し、デバイスに電源を入れた時点で、すぐにモバイルネットワークに接続できるというサービスの登場は、かつての日本でWiMAX内蔵PCがもたらした世界を再び体験できるようにするものだといえる。今回のサービスは、LenovoがMVNO的な存在として、各国の事業者とエンドユーザーの間を取り持つスタイルになるため、料金体系を含め、このサービスならではの付加価値も得られそうだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)