連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。


自然を活用! 日々の光熱費の節約 - 光熱費の節約は間取りの検討から

南向きが一番!…わが家はマンションですが、古い建物なので、今のマンションほど断熱性能が充分ではありません。それでも南側の部屋は、1年中冷房も暖房も全く必要ありません。今年の冬の暖房は全く使っていませんし、今年の夏のクーラーも来客中以外はまだ使用していません。それに比較して北側の部屋は、暖房無しでは過ごせません。設備に頼る前に自然の恵みを最大限活用して光熱費を節約しましょう。

高気密・高断熱住宅が光熱費節減の基本!

隙間風は冷暖房の効率を著しく悪化させます。人間がきれいな空気を吸うためには、2時間に1回は室内の空気を入れ替える必要がありますが、隙間風はそれ以上の空気を逃してしまいます。また高気密・高断熱の住まいは、カビの発生を少なくし、建物を長持ちさせます。上記でわが家の北側の寒さについて述べていますが、リフォームにより、断熱材を入れ直し、サッシは共用部分のために改造できないので、防火上はやや問題ありますが、やむを得ず内側に断熱シートを貼っています。リフォーム前と比較して明らかに暖房の使用頻度は少なくなっています。

自然の光や風を最大限利用しよう!

戸建を新築するなら、自然光を最大限利用しましょう。昼間でも照明をつける必要のある空間は避けるように間取りを工夫しましょう。東日本大震災以降太陽光発電が人気ですが、まずは自然光を最大限活用する工夫を考えてみましょう。日光は資源を使いませんが、太陽光発電設備は製作するのに大いに資源を使うのです。また風通しを工夫すれば、冷房機器を使う期間が短くなります。基本的に最近の住まいは高気密ですので、換気計画は非常に重要です。給気口と換気扇で、締め切っていてもきれいな空気の流れを作るとともに、気候の良い季節は自然の風を最大限活用しましょう。

家族の団欒のあり方が光熱費を削減!

高度経済成長期に、子供たちは個室を与えられ、隣近所とのつながりも敬遠して個の生活を大切に考えてきました。しかし東日本大震災を経験して、家族のつながり、人とのつながりの大切さが見直されました。光熱費の観点からも家族の団欒のあり方次第で大いに節約できます。家族一人一人が自室で過ごした場合は暖冷房も照明の電気代もそれぞれ必要です。しかし、家族が一緒に過ごせば、その一室のみの光熱費で住みます。

前回のコラム『住まいに関する節約術(2) - その家具、本当に必要?』で掲示した下図を見ると、リビングで子供が宿題をしたり、親が肘掛け椅子でお酒を楽しんだり、時には親も子供と机を並べて資格試験の勉強をしたり…と一室でいろいろな事ができる「場」があるのが分かります。ダイニングとつながっていれば食卓も有効に活用できるでしょう。家族の気配を感じながら、光熱費を節約する一石二鳥のアイディアです。

(C)佐藤章子

昔の知恵を活用しよう!

建物の庇を長く出せば、夏の陽射しを遮り、冬は陽射しを室内まで取り込めますが、敷地に余裕のない都会ではなかなか難しいものです。しかし庇の代わりに朝顔を軒下で育てれば、夏の陽射しを緩和できます。最近人気のゴーヤなどでも同じ効果が得られます。ブドウ棚や藤棚も冬は葉を落としますので、陽射しの調節ができます。我が家でもベランダでゴーヤを育てる事がありますが、茂ったゴーヤの葉に水をかければ一層涼味を感じる事ができます。

住まいは資産。だから維持管理が大切 - 日々の管理が住まいの補修費用を節約する

以前、東京の多摩ニュータウンの団地の建物の調査をしたことがあります。水漏れ調査だったのですが、全く同じ間取りの各室を見てまわると、住民の日々の管理如何で、大きな違いがあるのが分かりました。古い建物で、換気計画がうまく設計されていないようで、住民はカビの対策に苦慮していました。特に洗面脱衣室が酷いのですが、それでもカビで真っ黒の住戸もあれば、全くきれいな住戸もありました。

住民への聞取り調査で、カビの生えた壁紙は張り替えて間もないそうで、何度張り替えてもカビが生えるそうです。反対にきれいな状態を保っていた住戸は一度も壁紙を交換していないとのことでした。日々の管理が徹底しているそうで、入浴後は浴室の換気を徹底し、湿気を残さないよう努力していました。マンションの場合は壁紙の交換費用やボードの取替え費用程度ですが、戸建住宅の場合は、確実に建物の耐用年数に違いが出ます。また万一不具合が発生した場合は早めの対応が費用を少なくするポイントです。

家具が住まいをダメにする - 家具を少なくシンプルな暮らしが節約につながる

再びわが家の事例ですが、北側の部屋は断熱材が不充分なことと、サッシもシングルガラスで昔の形状のため、ガラスやアルミのサッシについた結露水を受け止める形状にはなっていません。そのために結露水は、こまめに抜き取らないと、そのまま壁の表面に流れる結果となります。日中は勤めていましたので、その間は対処のすべもなく、どうしてもカビが発生してしまいます。特に北側の部屋の1室は狭い部屋を書斎にしていて、本棚を窓下に設置していました。大掃除で本棚を動かすと、カビで大変な状態でした。

やむを得ない場合もありますが、家具周りはどうしても空気の流れが悪くなり、壁が傷みやすくなります。モノを増やさず、家具も少なく暮らすのが、モノの購入費だけでなく、住まいのメンテナンス費用の節約にもなります。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。