三陸鉄道リアス線が3月23日に開通し、翌24日から営業運転が始まった。全国紙、地方紙、テレビニュースなどでも大きく報じられた。東日本大震災から8年、復興事業の大きな節目ととらえたメディアが多かったようだ。BRT化が提案されたJR山田線の不通区間は、地元の熱意によって鉄道として復活した。もちろん鉄道ファンとしても喜ばしい。

  • リアス線開通を祝うヘッドマークを掲げた36-700形の普通列車(写真:マイナビニュース)

    リアス線開通を祝うヘッドマークを掲げた36-700形の普通列車。三陸鉄道はリアス線開通にあたり、新車両を8両導入し、計26両の体制になったという

3月19日放送のNHKニュース「開通まであと4日! 三陸鉄道リアス線 記念の人文字 岩手 宮古」では、沿線の人々からの期待を紹介している。宮古市で163人が参加して人文字を作り、記念写真を撮影したという。縦横10mほどの大きさで、白地に赤と青のラインが三陸鉄道の車両を示す。手前に「祝三陸鉄道リアス線開通」の横断幕、周囲を大漁旗が盛り上げる。ゆるキャラ「さんてつくん」も写真に収まった。この写真は宮古市の公式サイトで紹介されるほか、3月23日に行われた式典の会場にも飾られたようだ。

開通初日の3月23日、JR東日本から移管された釜石~宮古間は記念列車のみの運行となった。NHKニュース「岩手 三陸鉄道リアス線きょう開通」によると、最初の記念列車は11時40分に釜石駅を出発し、途中の13駅で地元の人々による郷土芸能の踊りなどで歓迎され、13時22分に宮古駅に到着したという。その後、14時30分から宮古市で記念式典を開催。記念列車は合わせて4往復運行され、2月1日から乗車希望者を募集しており、定員280人のところ、約4,000人の応募があったそうだ。

共同通信の3月23日配信の記事「三陸鉄道リアス線式典にのんさん」では、三陸地域を舞台としたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で主演した「のん」さんが登壇したと報道。祝賀ムードに華を添えた。『あまちゃん』では、三陸鉄道北リアス線が「北三陸鉄道」の名で“出演”している。劇中で開業の場面や復旧後の運転再開の場面も描かれた。今回のリアス線開通式典や記念列車は、あの名場面を覚えている人にとって懐かしいだろう。

同日の「ANNnewsCH」のYouTube版も、開通式と記念列車の様子を伝えている。地元の人々の喜ぶ表情に加え、8歳未満のこどもたちの中には列車が走る姿を見たことがないという子も多く、踏切を渡る練習も行われたという。新規開業となった八木沢・宮古短大駅では、地元の人が「いままで釜石へはバスの乗換えが必要だった。これからは楽になる」と喜んでいた。

復活した旧山田線の沿岸区間はバス路線が並行しており、鉄道の定期券を持っている人は代行バスとして利用できた。山田町内にある「道の駅やまだ」(岩手船越駅から徒歩7分)を境に、北側の宮古まで岩手県北バス、南側の釜石まで岩手県交通の路線が運行していた。筆者も以前、このバスで三陸鉄道の南リアス線から北リアス線へ向かったことがある。「道の駅やまだ」は地元の人たちが作った野菜や和菓子などを売っていて楽しいけれども、乗換えを強いられる人にとっては不便だったかもしれない。ほとんどの鉄道ファンも開通を心待ちにしていたはず。春休みということもあり、訪れる人も多いようだ。

■気になるフリーきっぷを紹介

日本最長の第三セクター鉄道路線となったリアス線(盛~久慈間163.0km)を楽しむために、三陸鉄道はいくつかのフリーきっぷを用意している。

●リアス線全線フリー乗車券

リアス線の全区間を自由に乗降できるきっぷ。土休日限定で発売され、発売額は6,000円(小児半額)。2日間有効とされ、土曜日に購入して使用開始した場合は土・日曜日、日曜日から使用開始した場合は翌日の月曜日まで利用できる。発売箇所は盛駅、綾里駅、三陸駅、釜石駅、大槌駅、陸中山田駅、宮古駅、島越駅、田野畑駅、普代駅、陸中野田駅、久慈駅となっている。

●1日フリー乗車券(土休日用)

リアス線を旧南リアス線区間(盛~釜石間)、旧山田線区間(釜石~宮古間)、旧北リアス線区間(宮古~久慈間)の3ブロックに分け、それぞれの区間で1日乗り放題となるきっぷ。いずれも利用期間は土休日とされている。

  • 釜石~宮古間用の「1日フリー乗車券」は2,300円で販売

盛~釜石間用は1,500円(小児750円)で、発売駅は盛駅、綾里駅、三陸駅、釜石駅。釜石~宮古間用は2,300円(小児1,150円)で、発売駅は釜石駅、大槌駅、陸中山田駅、宮古駅。宮古~久慈間用は2,500円(小児1,250円)で、発売駅は宮古駅、島越駅、田野畑駅、普代駅、陸中野田駅、久慈駅となる。

●片道途中下車きっぷ

三陸鉄道リアス線は全区間乗り通すと163kmあり、全線直通列車の所要時間は約4時間半。これだけの距離と時間があっても、三陸鉄道の普通乗車券は「下車前途無効」となっているため、途中下車はできない。気に入った駅で降りて散策したい人は、フリー乗車券だけでなく、一方通行の「片道途中下車きっぷ」を使おう。

  • 盛→久慈間(盛駅発売) : 3,710円(小児1,890円)、2日間有効
  • 久慈→盛間(久慈駅発売) : 3,710円(小児1,890円)、2日間有効
  • 盛→宮古間(盛駅発売) : 2,270円(小児1,140円)、1日間有効
  • 宮古→盛間(宮古駅発売) : 2,270円(小児1,140円)、1日間有効
  • 釜石→久慈間(釜石駅発売) : 2,990円(小児1,500円)、2日間有効
  • 久慈→釜石間(久慈駅発売) : 2,990円(小児1,500円)、2日間有効
  • 宮古→久慈間(宮古駅発売) : 1,850円(小児930円)、2日間有効
  • 久慈→宮古間(久慈駅発売) : 1,850円(小児930円)、2日間有効

「リアス線全線フリー乗車券」「1日フリー乗車券」との違いは後戻りできないこと。ただし、「片道途中下車きっぷ」は通年で販売され、平日も利用可能だ。

なお、南リアス線用だった「途中下車片道きっぷ」は廃止。位置情報ゲーム「コロプラ」とタイアップした「コロプラフリー乗車券」は3月31日をもって廃止するとのこと。

■気になる列車を紹介

三陸鉄道リアス線のダイヤを見ると、ほとんどの列車が平日・土休日ともに同じ。夜間の宮古~岩泉小本間の1往復だけが土休日運休となっている。すべて各駅に停車する普通列車で、快速運転は発表されていない。

全区間を直通する列車は、下りが盛駅8時5分発・久慈駅12時35分着と盛駅15時20分発・久慈駅19時58分着の2本、上りが久慈駅5時52分発、盛駅10時25分着、久慈駅8時8分発・盛駅12時28分着、久慈駅16時6分発・盛駅20時27分着の3本となっている。

その他、注目の列車を挙げてみよう。

●釜石駅で「SL銀河」と接続する列車

久慈駅を5時52分に発車する盛行の列車は、釜石駅に9時27分に到着。釜石駅を10時58分に発車するJR釜石線の上り「SL銀河」(4月30日から運行)に乗り換えられる。盛駅を10時0分に発車する宮古行の列車は釜石駅に10時53分に到着し、短い時間ながら上り「SL銀河」に乗換え可能。一方、下り「SL銀河」(4月29日から運行)は釜石駅に15時8分に到着し、同駅15時46分発の盛行、同駅16時22分発の宮古行に乗り換えられる。

●久慈駅で「リゾートうみねこ」と接続する列車

JR八戸線の下り「リゾートうみねこ」は久慈駅に14時7分に到着し、リアス線の久慈駅14時13分発、宮古行の列車に乗り換えられる。逆方向は宮古駅13時15分発・久慈駅14時54分着の列車に乗ると、久慈駅15時0分発の上り「リゾートうみねこ」に乗車できる。八戸駅には16時52分に着く。

●久慈駅で「TOHOKU EMOTION」と接続する列車

JR八戸線で運行される「TOHOKU EMOTION」は片道利用も可能。往路は八戸駅11時5分頃発・久慈駅12時56分頃着で、リアス線の久慈駅14時13分発、宮古行の列車に乗車できる。逆方向は盛駅を8時5分に発車する全区間直通の普通列車に乗ると、久慈駅に12時35分に到着。久慈駅14時20分頃発・八戸駅16時7分頃着の「TOHOKU EMOTION」(復路)を利用できる。

  • 三陸鉄道開業時からの車両36-100形・36-200形もリアス線で活躍(写真は36-200形2両編成の普通列車)

ひとつにつながったリアス線全区間を一気に乗り通すか、途中下車してのんびり行くか。観光列車との乗り比べも楽しそうだ。