三陸鉄道リアス線に聖火が「乗車」する。共同通信が3月7日に配信した記事「復興の火、三陸鉄道活用へ五輪で展示、石巻市も巡回」によると、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北3県で、2020年東京五輪の聖火を「復興の火」として巡回展示する計画があるという。三陸鉄道で火を運び、沿線自治体で展示するため調整中とのこと。

  • 三陸鉄道が聖火を運ぶ(写真:マイナビニュース)

    三陸鉄道が聖火を運ぶ

朝日新聞の続報「三陸鉄道で聖火を展示へ 来年3月、リレー前イベント」では、三陸鉄道リアス線の宮古~釜石間とJR釜石線釜石~花巻間で、2020年3月22日に聖火を巡回する特別列車を運行すると報じられている。釜石線では「SL銀河」を使用したいようだ。車内ではランタンに入れた火を展示するほか、途中駅で長めに停車し、地元の人々が見学できるように配慮する。

朝日新聞の見出しに「リレー前イベント」とあるように、列車が聖火ランナーになるわけではない。聖火ランナーの出発は3月26日。聖火の乗車は4日前の3月22日だ。その後、東京オリンピック公式サイト「東京2020オリンピック聖火リレー」で詳細が明らかになった。「復興の火」イベントは、東京オリンピックにとって「復興オリンピック」とアピールしてきたからだ。聖火リレーは「Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう」というテーマで、被災地を思い、国内外に復興を遂げた姿を示す象徴的な行事となる。

聖火は2020年3月12日にギリシャの古代オリンピア広場で太陽光から採火され、まずはギリシャ国内でリレーされる。3月20日にアテネから空路で宮城県の航空自衛隊松島基地に到着すると、聖火は「復興の火」として石巻市・仙台市を巡回し、さらに北上して岩手県へ。3月22日に宮古駅・釜石駅・花巻駅、3月23日に大船渡市を巡回。3月24~26日は福島県の福島市・いわき市を経て楢葉町・広野町へ。聖火リレーのスタートは復興拠点として使用されたJリーグの練習施設「ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジ」。ここから全国47都道府県を巡り、7月24日の開会式で聖火台に点火される。

  • 3月22日に復興の火を運ぶルート(国土地理院地図を加工)

聖火が乗車する予定の三陸鉄道宮古~釜石間は、もともとJR山田線だった区間。震災で被災した直後、当時のJR東日本社長が全線の鉄道復旧を表明。その後、国からの支援が得られないこともあり、BRT化へ方針転換したけれど、沿線自治体は鉄道の復活を望んだ。結果として、JR東日本はこの区間の線路設備を復旧して自治体に譲渡し、運行事業を三陸鉄道に譲渡することになった。また、10年間の赤字補填、運賃をJR水準とするための原資として30億円を提供すると決まった。

三陸鉄道は現在、久慈~宮古間が北リアス線、釜石~盛間が南リアス線として運行されている。宮古~釜石間を譲受して1本につながり、三陸鉄道リアス線となる。三陸地域の鉄道の復旧と三陸海岸鉄道の貫通路線の誕生は、復興の大きなステップになる。

JR釜石線は被害が比較的少なかった。震災発生日は全線不通となったけれども、約1カ月後の4月6日に全線復旧している。翌日に大きな余震があり、また全線不通となったけれど、4月12日に再開した。JR東日本は震災の翌年、東北地方の観光支援を目的として「SL銀河鉄道プロジェクト」を発足。盛岡市の公園で展示されていた蒸気機関車C58形を復活させ、「SL銀河」を走らせている。こちらも東北復興プロジェクトのシンボルとして認知されている。

三陸鉄道リアス線の開業に向けた動きも活発になっている。2018年12月13日にリアス線の時刻が発表され、同時にリアス線カウントダウン企画がスタート。沿線の人々が「開通まであと●●日」という看板を持った写真を特設サイトで公開している。

1月28日から試運転が始まり、2月1日に開通記念列車の公募がスタート。2月11日に報道機関向けに試運転が行われた。2月25日に国土交通省へ運賃が申請されている。3月7日に新車両8両の安全祈願祭が行われ、3月8日に各駅で開催される開業記念イベントの内容を発表。3月13日には国土交通省から申請通りの運賃が認可されている。

三陸鉄道リアス線の開業は2019年3月23日。聖火の乗車はちょうど1年後、開業1周年記念日の前日となる。おそらく開業1周年記念イベントが開催されるだろうから、前日祭として聖火が登場すれば、大いに盛り上がりそうだ。