JR西日本広島支社は25日、山口線新山口~津和野間を走る「SLやまぐち号」に投入される新製客車(35系客車)の試乗会を実施した。EF65形1124号機に牽引された35系客車は山陽本線新山口~下関間を走行。「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン」(山口DC)に合わせ、9月2日から「SLやまぐち号」で運行開始する予定となっている。

「SLやまぐち号」用に新製された35系客車。試乗会で山陽本線を走行した

35系客車は5両編成で、1号車(オロテ35-4001)は戦前・戦後の特急列車で活躍した展望車マイテ49形がモデルのグリーン車、2号車(スハ35-4001)・3号車(ナハ35-4001)・4号車(オハ35-4001)は戦前・戦後を通じて活躍したオハ35形をモデルとした普通車、5号車(スハテ35-4001)は二重屋根構造(ダブルルーフ)などが特徴のオハ31形をモデルとした普通車となっている。定員は245名(グリーン車23席、普通車222席)。

グリーン車の座席は横3列(2列+1列)の回転リクライニングシートで、各座席にコンセントも設置。2名用・4名用のボックスシートも用意された。展望デッキ寄りにフリースペースの展望室もある。普通車の座席は4名用のボックスシートで、テーブルとコンセントが付く。2~4号車の座席と5号車の座席はデザインやモケットの色が異なる。3号車にはフリースペース・販売スペースが設けられ、SLの歴史やしくみを学べる展示スペースに加え、SL運転シミュレーター「機関士体験 走れSL『やまぐち』号」、機関助士の仕事を体験できる「走れSL 缶焚き(かまたき)ゲーム」も楽しめる。

SL全盛期に活躍した旧型客車のイメージを踏襲する一方、5号車に車いす対応座席やバリアフリー対応の多機能トイレ、多目的室を備え、トイレは洋式で温水洗浄便座付き。全車両に荷物置場(ベビーカー置場)も設置するなど現代の車両ならではの快適性も備えた。35系客車の製造は新潟トランシス。設計最高速度は110km/h(減速性能4.9km/h/s)。6月4日に報道公開された後、蒸気機関車・電気機関車・ディーゼル機関車やラッセル車両キヤ143形の牽引による走行試験が行われてきたという。

試乗会ではEF65形1124号機が35系客車を牽引。5号車の車体側面にサボ(行先標)も掲げられていた

車内では「SLやまぐち号」用弁当の展示も

グリーン車(1号車)の座席

普通車の座席。2~4号車と5号車では座席のデザインが異なる

5号車には車いす対応の座席や多目的室、バリアフリー対応の多機能トイレなどが設置された

この日の試乗会は報道関係者向けに実施され、午前は新山口駅から下関駅へ、午後は下関駅から新山口駅へ往復した。復路では、特別な「トワイライトエクスプレス」(2016年3月に運行終了)に合わせたカラーリングのEF65形1124号機が35系客車を牽引。13時40分頃に下関駅6番線ホームを発車し、小月駅で約30分間停車した後はノンストップで新山口駅へ向かった。レトロな外観とは対照的に、冷房の行き届いた明るく静かな車内で、走行中も快適に過ごせる。普通車のテーブルを使い、パソコンを広げる記者の姿も見られた。

3号車では、展示スペースの内容説明や「走れSL 缶焚きゲーム」「機関士体験 走れSL『やまぐち』号」の実演も行われた。「『SLやまぐち号』をはじめ、SLの歴史や動くしくみを学べるので、SLへの理解を深めてほしい」との説明も。山陽本線を走行した試乗会の列車は15時18分頃、新山口駅4番線ホームに到着した。

新製客車(35系客車)の投入にともない、現行のレトロ客車(12系客車)は8月27日をもって「SLやまぐち号」としての運行を終了。新製客車がデビューする9月2日、レトロ客車による「SL『ありがとうレトロ客車』号」が運行され、山口線篠目駅にて新製客車の「SLやまぐち号」との行き違い運転も行われる(篠目駅構内では入場制限を実施)。「SLやまぐち号」は9~12月の山口DC開催期間中、土休日を中心に37日間運行。蒸気機関車C57形を中心に、11月末にD51形、12月にC56形の牽引による運行も予定されている。