もう少し楽に生きていける道を探りたい

――『母になる』では女性陣も様々な立場の方を配置されている印象です。毎週見ていると誰かのシーンで必ず泣けてしまうんですが……。

小池さん演じる麻子は、子供を産んでない人の代表という役割があります。麻子は、子供を産んだことのない人が受ける社会からのプレッシャーみたいなものを、全部受け止めてしまう。その麻子の思いと、「自分が母親なんだ」ということが確信的にわかってる結衣との間に壁や溝はあります。

かたや、板谷さん演じる莉沙子は子供を産んでいるのにわからない。それは私に近いかもしれないですが、母親になったという実感が薄い人もいると思いますし、「母親」という一言でくくられてしまうけど、女性にとってはいろんな立場や思いがあるということも盛り込みたかった。

でも逆に引いて見てみると、それぞれ抱えているものはそんなに重いことなのかなという気もして。今は、子供を産んで育てるということの意味が、どんどん重くなっているのではないかな。もう少し楽に、周りも自分も生きていける道はないのかな、という思いはあります。

――そういった立場の違いやそれぞれの思いを考えるきっかけはあったんですか?

子供が悲惨に死んでいく事件が多かった時期があって、それに対する分析本がたくさん出ていたのですが、親と子供の関係の歪みが原因だと言われていることが多いように感じました。それを読んでいつも思うのは、「客観的に何かを言ってやれる立ち位置の人はいなかったんだろうか?」ということでした。

子供に何かあった時、親だけが責められて、その後の人生が大きく変わってしまいますが、本人たちは良かれと思ってやっていたこともたくさんあったはずで。そこになぜ、第三者がいなかったんだろうか? 違う価値観の人がいれば、もうちょっと違った風に物事が運んだんじゃないか? と思うんです。親子をめぐる関係の有り様みたいなのが窮屈になっているから、もうちょっと緩めたほうがいいんじゃないかと。あまり背負い込みすぎずに、他の人に助けを求めるとか。

私も姑が助けてくれなかったら多分、すごく追い込まれていたかもしれないと思うんですが、そこは甘えることができました。そういうことが可能な環境があるなら求めてもいいと思うし、それを受け止める側の認識も含め、もう少し視野を広く持ってもいいんじゃないかなと思うんですけどね。

――それでは最後に、今夜放送の第6話の見どころを教えてください。

麻子がなぜ、広を7年間育てるに至ったかということを全部見せます。とんでもなく壮絶だと思うので、多分一番泣くと思います(笑)。でも、面白いです。見る人によっては全然感想が違いますから。麻子にすごく共感する人もいれば、「麻子が許せない」という人もいて、それがまさに立場による違いなのかもしれません。

ドラマ『母になる』(日本テレビ系、毎週水曜22:00~)

3歳で誘拐にあった息子が、9年を経て13歳になって現れ、それに関わる3人の女性たちが傷つきながらも「母になる」までの物語。出演は、沢尻エリカ、藤木直人、中島裕翔、道枝駿佑(関西ジャニーズJr.)、高橋メアリージュン、浅野和之、風吹ジュン、板谷由夏、小池栄子ほか。

(C)NTV

※5月24日掲載予定のvol.9では、キャストについてお話を伺っていきます。

"母になる"ことシリーズ

vol.1: 母になって、自分は変わったと思う?
vol.2: 自分に母親として点数をつけるとすれば何点?
vol.3: 無条件で愛したい! 母親になって実感した喜びは?
vol.4: 自分の時間はいずこ……母親になって実感した息苦しさは?
vol.5: 小池栄子が描く「母」、心理学者が語る「母としての物語」
vol.6: 小池栄子×心理学者が語る「生みの親」と「育ての親」の未来
vol.7: 2児のママ・板谷由夏が"怪獣たち"から学んだこと