女優・沢尻エリカ主演の日本テレビ系ドラマ『母になる』(きょう12日スタート、毎週水曜22:00~)から、”母になる”ことを考える連載シリーズ。ドラマでは、3歳の時に息子が誘拐され、9年の歳月をへて息子が目の前に現れるという衝撃の展開から始まるが、登場する3人の女性がそれぞれの立場で葛藤する中で、わが子ではない子どもを7年間育てる「麻子」を演じるのが、女優の小池栄子だ。今回は、等身大の小池が『母になる』に寄せる想いを、心理学者の杉山崇氏にぶつけた。

嫉妬心を越えた先の心の変化

小池栄子(こいけえいこ)。1980年11月20日生まれ、東京都出身。映画、テレビ、CM、舞台など幅広く活躍。近年のドラマ出演作に、『リーガルハイ』(フジテレビ)、『マッサン』(NHK)、『世界一難しい恋』(日本テレビ)など。今年は映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(5月27日公開)に出演するほか、舞台『子供の事情』(三谷幸喜作・演出 7月8日~8月6日 新国立劇場中劇場)が控えている
撮影: 大塚素久(SYASYA)

――小池さんご自身は今、子どもをうみたいという気持ちが高まっている時期とのことですが、それは何かきっかけがあったのでしょうか。

小池: 感じたものなので言葉にはしにくいです。結婚した当初は、「すぐに子どもがほしい」と思っていたんですが、それから仕事に燃えちゃって、仕事しか考えられなくなったんですよね。もしかしたら今は、気持ちの中で、自分が落ち着いてきたのかもしれません。周りを見てみると、子どもをうんだ同級生も多いんですよね。自然と子どもと触れ合う機会も、20代の時より増えました。それでまた、「子どもっていいな」と思うようになった気がします。

杉山: 周りから刺激を受けてという人も多いですよね。結婚と同じで、「そろそろ私も」と感じる人も多いと思います。

小池: 焦るとかではないんですよね。その幸福感がうらやましくて、「見たことがない、感じたことがない景色」を私も見てみたいなというような気持ち。あと、年齢的になんですかね。中高生の男の子を見ると「かわいくてしょうがない」という気持ちに、この数年はなってきました。

――もっと小さい子ではないんですね。中高生というと、反抗期・思春期の最中ということもあり、大人からするとちょっと生意気な年頃にも感じられる時代だと思いますが。

小池: そうですね。でも、「これからこの子たちは、いっぱいいろんな経験をして青春を謳歌するんだろうな。いいな」というような気持ちですね。もう少し自分が若い時であれば嫉妬心が強かったと思うんですが、そんな嫉妬心を通り越して、全てがかわいく感じられているんだと思います。不思議ですよね。年をとったのかな(笑)。

杉山崇(すぎやまたかし)。人を幸せにしたいという思いから心理学研究者の道に。神奈川大学人間科学部教授として教鞭をとる傍ら、臨床心理士の見地から心の悩みの相談を受ける。また、心理相談センター所長とし後進の育成に従事している。一級コンサルティング技能士の資格を持ち、社員のメンタルヘルス対策を考える企業の相談にも対応。著書に『読むだけで、人づきあいが上手くなる。』『グズほどなぜか忙しい!』他多数

杉山: 男子の青臭さがかわいく見えてくるという感じでしょうか。なんとなく分かります。でもそれは、年だけではないと思います。たぶん、小池さん自身の心のステージが上がってきたんだと思います。若い時は自分も発展途上だから、どうしても自分と周りを比べてしまう。でも、自分というものがある程度できあがってくると、周りと自分を比べる必要がなくなってきて、その分、周りの人の見え方が変わってくるということはよくあることです。

小池: そうかもしれません。比べることってなくなってきましたね。30代後半はそんな年なんでしょうか。比べてもどうしようもない、ということに気がつくというか。でも、本当に若い時って比べて焦りますよね。

現在社会で育てるには「上手に心配」を

――今の現代社会で子どもを育てるにあたり、いろんな問題もあります。小池さんご自身が、子どもを育てることになって感じるかもしれない不安、逆に、今だからできる期待はありますか。

小池: 自分たちが子どもだった時に通じたことが今は通じない、ということも多いんだろうなとは思いますよね。ただ今はまだ、母親になって子どもを育てるとしたらどんなことに気をつけないといけないのか、特に勉強しているわけではなく、分からないというのが本音です。

人によってはあんまり考えないで、なるようになる的な考えのお母さんもいれば、すっごくちゃんと準備してケアしてというお母さんもいるじゃないですか。ネット上にいろんなことが掲載されているので調べてしまうとか。

心配のネタはきりがない。「上手に心配しましょう」というのが大事になる

杉山: そんな時に私が必ず言うのは、「上手に心配しましょう」ということです。心配のネタはきりがない。全く心配しないのも問題がありますが、心配を集めてしまうと、それでパニックになってしまいます。

この世界はいい世界ではあるけれど、パラダイスではないので、悪いところもありますよね。その悪いところから子どもを守るために、「ちゃんとここだけは抑えておこう」というところをまず受け止めて、心配しすぎないように上手に心配しましょう、と言っています。

小池: 具体的にどうするかは、経験しながら見極めていかないといけないのでしょうか。