元メガバンク支店長の著者が信用金庫への預金を薦めるなど意外性と説得力のある内容で40万部のベストセラーとなった書籍『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)。その第二弾でこちらもベストセラーとなっているのが、『家族のお金が増えるのは、どっち!?』だ。そこで以前掲載した第一弾の『お金が貯まるのは、どっち!?』のインタビューに続き、第二弾『家族のお金が増えるのは、どっち!?』について、著者の菅井敏之氏にインタビューした内容を紹介したい。

同書は、お金に好かれる「親子」と「夫婦」の法則を解説。家族全員が安心して暮らすために知っておきたい「お金の話」を伝授する。巻末特別付録として「家族のお金が増える書き込み式ライフプラン表」が付く。

主な内容は、「親は自分の『資産の内容』を子どもに教えるべきか?」「家計が苦しいとき、親は子にどんな説明をすべきか?」「自分と『同じ銀行』に、子どもに口座をつくらせなさい」など。

人生を生きる人々は皆「経営者」

――前回インタビューさせていただいた『お金が貯まるのは、どっち!?』は今でも書店で平積みされてロングセラーになっていますが、その理由はどんなふうに思われますか?

実はこの本は若い年代を意識して書いたのですが、実際手にとられて読まれたのは50代、60代の方も多くて、息子さんに読ませたいという形で広がっていったようなんです。

――なるほど。中高年層の方々にも響いたわけですね。

その方たちは、自分は70代、80代の親を抱えた子供であり、一方では夫であり、あるいは大学生の親であったりと、家族の中でいろいろな役割がある。子供としての自分、夫としての自分、親としての自分、それらをお金という面でどういう役割をもたなければいけないのか。読者がそういう事に関して関心を持っていることに気づき、第二弾として『家族のお金が増えるのは、どっち!?』を書いたわけなんです。

――私もいま40代ですが、まさに高齢の親を持つ子供であり、夫であり、2人の子供の親でもあります。その中で、お金というものに関して向き合わざるを得ない局面は多々ありますね。

お金といっても、投資信託の専門家、証券の専門家、不動産投資の専門家、そういった方々はたくさんいらっしゃいますよね。だけど、我々は自分が家族という会社の社長として、人生を歩んでいるわけです。経営者なわけです。そうした視点から、私が人生のコンサルタントといえば恥ずかしいですが、投資本とか、お金の教科書みたいなものではなく、人生を生きる"経営者"の方々が、自分の人生を豊かなものにするための、お金に関する全体最適を目指す本が必要だと感じたのです。

僕の場合は、銀行員として、いろんな企業経営を見てきたし、人生経営を見てきたわけです。全体を俯瞰できるんですね。そこが違うんです、おそらく他の本と。

菅井敏之氏

同じ信用金庫で口座を作ることで、家族3代の信用を引き継ぐ

――そうかもしれないですね。菅井さんのプロフィールのところにも、お金を貸す側と借りる側の両方を経験されたのが強みと書かれていますが、私も銀行って何で特別な存在なんだろうと勉強していて、何で銀行員は特別な存在なのかということを考えたときに、今菅井さんがおっしゃったように全体を俯瞰できるという。

立ち位置なんです。産業界でお金を血液としていろんな業界に供給していて、いろんな業界も見られました。個人の方を含めて。住宅ローンやアパートローンなど、どういう人がお金を貸していい人なのか、全体を俯瞰できるわけです。一様に成功している人というのは、銀行から信用されて、信頼されて、お金を上手に使って、資産を増やして、フローの収入も増えています。このロジックの中に銀行というのが組み込まれているんです。銀行員とうまく付き合う。信用されるというのが成功するための必須条件じゃないですか。であれば、そのロジックがどういうものかを言ってくれる人が今までいなかったですね。

――結構赤裸々に書かれている部分もありますね。

義侠心じゃないですけれど、友達、同期、先輩総スカンを覚悟で書きました。元はメガバンクにいながら、信用金庫と取引しろなんて、何言ってくれるんだという話ですよ。だけど、失ってもいいと、腹を括ったということなんです。

――なるほど。『家族のお金が増えるのは、どっち!?』もそうした思いで書かれたわけですね。ただ、単身で生きることを選ぶ人も増えていると思うのですが、この本ではむしろ家族であるからこそ、お金が増えると書かれています。

一人で300万円しか稼げない人が、お金を借りるのは難しいです。だけど、400万円の年収のある女性を妻にすると、世帯収入が700万円になるわけです。そうしたら住宅ローンが組めるんです。単純にいえば、そんな話です。年収300万円の人が単身で家を持つのは難しいですよね。奥さんも働いて、子供を実家に預けて教育してもらって自分も働く。昔は妻も野良仕事をしていて、祖母が子守をしていたんです。そうやって世帯収入を増やして、家計を維持していたわけです。家族が多いほどいいのです、この世の中。

――やはり菅井さんのお話はいつも目から鱗(うろこ)ですね。前回の本では、元メガバンクの人が信金を薦めたというのが衝撃の一つだったと思うのですが、第二弾のこちらの本では、その信金を親子で、三世代で連結して活用するという方法が語られています。

信用金庫に口座がある100坪の広い敷地を持つ高齢の方に息子さんがいる。これは息子さんにとって信用になります。ですがその息子さんがメガバンクに行って口座つくってくれといったら、ただの何とかさんです。どっちが有利でしょう、という話です。

――菅井さんも山形で祖父の方が養蚕をされていたとか。そういうところからの発想ですか?

いやいや、やっぱり銀行で成功している人を見ているからです。帝王学は代々つながっているものがあるんです。名家。地元の名士。商工会議所で代々会頭をやっている家とか、代々地主でその村の主みたいな人が確実にいるわけです。そうした方々は決して派手ではないですし、地味でむしろ質素です。しかしながら、心は豊かで社会貢献にも関心を持っているのです。

そういう方々は、自分の築いた信用、築いた人脈をいかに自分の子供に継承させるかということに対してものすごくこだわります。それはお金、目に見える資産だけではない、自分の信用というのも自分の大事な財産だという認識があるからです。それを子供にも相続させたい、連続させたい、というのが帝王学です。それはお金持ちだけの特権ではありません。普通のサラリーマンでも、個人事業主として、自分を独立した経営者として位置づければ、自分の子供に信用を引き継いでもらったほうがいいですよね。

――まじめにコツコツ生きてきた信用を、子供にも同じ信用金庫に口座を作ってもらうことで、継承させることができるわけですね。

悩みを聞いて解決する能力を親が付けてあげることが必要

――ファミリーレストランで子供に「観察」させて「質問」をする話が出てきますよね。ファミリーレストランを経営する「経営者」やビルの「オーナー」の存在を感じさせるという。そうした"帝王学"もサラリーマンでもできますよね。

教育というと、従業員として言うことを聞く、仕事を覚える、といったような雇われ根性みたいな教育がずっと行われてきているわけです。いっぱい知識を詰め込んで暗記した人が頭がいいというような。それは違いますね。そんなものはインターネットで検索すればすぐ出てくる話で、そうではなく、問題そのものを設定する能力だとか、あるいは問題を解決する能力だとか、答えが一つでなくてもそういう能力を子供に身に付けさせるのが"帝王学"となります。

――自分はまったくやったことがないです。

悩みを聞いて解決することとか、実社会においてはそちらの方が単に知識をもっていることより余程貢献度が高いわけです。不思議なんですけど、学校ではそういうことを一切教えないですよね。では学校で教えてくれないなら、誰が教えるんだと。親しかいないですよね。

そういうことがわかっている人は、子供が若いうちから教えるし、"虎の穴"ではないですが、地獄の特訓で子供に筋肉をつけてあげたらいいのではないでしょうか。4万円も5万円もかけて子供に塾に通わせて、訳のわからない問題を解かせる一方で、稼ぐ力を付けてあげることなどは全く手つかずでしょう。このアンバランスさが不思議でしょうがないです。成功している人はそういうことを意識してやっているのを見てきましたので、世の中全体が豊かになるために多くの人に伝えたいのです、私からのメッセージとして。

お金についてもっと家族で話そうよ

――まさにおっしゃる通りだと思います。また今回の本では、冒頭で息子がお父さんがいくらの生命保険を聞いたら怒ったという話が出てきますね。私も聞こうにも聞けないのですが、日本人はお金について話すことがいけないことというような雰囲気がありますよね。

ありますね。それは絶対払拭しなければいけませんね。

――なぜでしょうか。

卑しいものという認識があるからでしょう。だけどお金というのは社会貢献によって得られる物というふうに教えれば、むしろお金を持っているということは、たくさん人に貢献したんだなと、子供に教えなければいけません。人に貢献した人だからこそお金を持ったんだよ、あの人はすごいねと。見習おうねと言わなければいけないのに、何悪いことしたんだろうとか。何だまくらしたんだと教えるから卑しい人、卑しいことになってしまうんです。

――お金についてもっと家族で話そうよ、ということでしょうか。

お金が欲しいからとお金を追いかけている人にはお金ってついてこないんだよと。人から信頼される、信用されるから、その結果としてお金を貸してもらえるし、お金を貸してもらえるから会社を興したりできるということです。

元々の信用がなかったら、何でもお金ってついてこないんだよと。みんな信用、信頼にこだわっている。信用、信頼の残高が多い人のところにお金はよってくるんだよと。だから靴も磨けよ、机の上もきれいにしろよ、言葉使いもきれいにしろよ、立ち振る舞いをスマートにしろよ、よれよれの服を着てるなよ、髭を剃れよ、要するにそういうことですよね。人から信用されるためにはどういう服を選ばなければいけないのか。信用、信頼を大事に思っているからです。

――お金というのは人に貢献しているから、人から信用されて、その結果もらえるものだと。そういう視点が日本にはあまりないですね。

お金持ちはたくさんの人を豊かにし、悩みを解決した、その成功者です。愛をいっぱい与えたからああいうふうになったんだぞ、お前もああいうふうにならないとだめだぞと言わなければだめなんです。

妻への真の愛とは?

――菅井さんが見られてきたのはお金持ちですけれど、普通の会社員も実践するべきということですね。

65歳を過ぎたら、好むと好まざるとにかかわらず、いわゆる社長として放り出されるわけですから。

あとは奥さんに投資をすることです。自分株式会社の"不稼働資産"なわけです。夫は65歳になったら伸びしろはないです。ガンガン働いて、50歳、60歳まで働いていたわけですから、そこから先は難しいです。だけど、奥さんは子育てを終えて、元々能力は高いですよ、この方々は。だけど、家庭で、あるいはパートで、ライターの技能でもいいし、美容師の資格でもいいし、そういった稼げる、50万円60万円じゃなくていいから、10万円、15万円稼ぐ。投資すれば世帯収入は増える。家としての世帯収入を考えたときに、不稼働資産、ものすごい言葉ですが、ポテンシャルが高い経営資源に投資し、そこでニューマネーを稼ぐという、これは価値のあることです。

サラリーマンは特に、50万円の収入の人が70万円ってなかなか難しいですけれど、俺に社長になれよということかということになるわけです。残業なんてつかないし、だけど奥さんは余地があって、そういう人にちゃんと10万円働けるだけの力を身に付けてもらえれば安心ですよね。自分のことばかり考えているんじゃなく、きちんと奥さんの将来を考えてということです。60歳を過ぎても、自分がいなくなってもこれで食べていけるから、自分は安心して死ねると言えばいいのです。

――本の巻末にあるこのライフプラン表ですね。

どっちが先に80歳になるのですかという話です。女性の平均寿命は87歳というのはわかっている話です。ということは、自分が死んでも10年間は生きているわけです。妻の残りの人生に責任は持たないのですかということです。ライフプラン表を見ればわかるわけです。成り行きで放漫経営をしてはだめでしょうと。そうなったら、自分のためには働けないけど、妻のためだったらそれなりのことをしてあげなければと思うのが愛です。

――本当の愛ですね。親や子供、妻に関する考え方、本当に勉強になりました。本日はありがとうございました。


いかがだっただろうか。菅井さんの家族に対する愛、そして一家を経営する人としての覚悟がビンビン伝わってくるインタビューだった。皆さんもぜひ、書店で手にとってご一読ください。