多くの人が不安を抱えている老後の生活。そんな中、会社や年金など他人が作った制度に頼るのではなく、自分で道を切り開くべきだと話すのが、著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム、1,300円(税別))がベストセラーになっている菅井敏之氏だ。菅井敏之氏は元メガバンクの銀行員で、現在は6棟78室のアパート経営で年間7,000万円ほどの不動産収入を得ている。菅井氏のように年金に頼らず収入を確保するにはどうすればいいのか? 菅井氏がオーナーである東京・田園調布のカフェ『SUGER COFFEE』でインタビューした。

菅井敏之氏は1960年生まれ。学習院大学卒業後、1983年に三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。2003年には金沢八景支店長(横浜)に、2005年には中野支店長(東京)に就任する。48才のときに銀行を退職し、その後、不動産などを手掛けるTSネッツを設立。2012年にはカフェ「SUGER COFFEE」を開店した。

元メガバンクの銀行員で、書籍『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)著者の菅井敏之氏

――今回、マイナビニュースの「マネーチャンネル」で年金の特集をすることになりました。そこでお聞きしたいのですが、菅井さんは、今の年金制度は続くと思いますか?

続かないと思います。恐らく将来的に年金の支給年齢は75歳になるのではないでしょうか。年金保険制度を維持していくには、保険料を増やすか、年金支給時期をずらすか、年金支給額を減らすか、いずれかの選択肢しかありません。ですが、これ以上、消費税も上げて、社会保険料も上げたら、現役世代は悲鳴を上げます。現実的ではありません。その一方で、国際的にも日本の年金支給時期は早い方なんです。コンセンサスを得やすい方向としては、65歳という時期が66歳になり、67歳になり、70歳になり、最終的に75歳になるというところまでいくと思います。

――一応続くことは続くとお考えですか。

はい。続くことは続くけど、時期については、今の20代、30代の人は自分は70歳を過ぎてからでないと年金はもらえないと見ておかないといけません。

――では、今の現役世代の人たちは、70歳すぎまで、何を頼って生きていくべきなのでしょうか?

長生きするようになったんだから働きましょう、というのが僕の考えなんです。会社の定年は他の人が決めた制度で、生物学的には自分は元気でいるわけですから、健康でいれば怖くありません。

僕の問題意識では、55歳ぐらいになると、好むと好まざるとにかかわらず、会社をクビになったり、あるいは人に使われるのは嫌だと思ったりする時期が出てくる可能性があります。この先このままでいても嘱託かもしれないとか、関連会社に出向させられたりだとか、勤めに疲れたりだとか、そういう可能性です。

もしそうなった場合、定年制度や年金受給など、他人が作った仕組みではないもので自分で生きていける方法が2つあると思っています。一つは自分で事業主となって商売を始めるという方法です。もう一つは、現役時代にお金を調達して不動産を買い、不動産収入を確保しておいて、居酒屋を開くとか、フラワー教室を開くとか、自分のやりたいことでお金を稼ぐ方法です。

この2つの方法、いずれの場合もお金が必要になるわけです。後者の方法をとったとして、アパートを建てるために1億円とか貯まっていればいいですが、普通の人はそんなにお金が貯まっていません。居酒屋を開くといってもいろいろな準備があるのでお金がかかります。お金が貯まっていればいいですけれども、貯まっていないケースが多い。そのときには、誰かからお金を借りなければいけないということになるわけです。

お金を借りる先として、銀行にメリット

――菅井さんの著書『お金が貯まるのは、どっち!?』では、そうした場合にお金を借りる先として、銀行がメリットがあると述べてますね。

『お金が貯まるのは、どっち!?』

同じ銀行でも、お金を借りるときにどこの銀行ならお金を貸してくれやすいのかというと、メガバンクなど大手金融機関は、大企業や中堅企業を相手にお金を貸すケースが多いのです。そこで、個人事業主になろうと思った場合には、信用金庫などが借りやすいわけです。

しかし、いきなり信用金庫に行っても、何の取引もしていなくて、定年になったら居酒屋を開くので500万円貸してくださいと言っても貸してくれません。貸してもらうためには、20代、30代のうちから長期間、信用金庫の口座を給与振り込み口座、ガス、水道などを支払うメイン口座にしていれば、信用金庫の側でも、長年の生活ぶりなり、貯蓄状況などを全部把握できるわけですから、お金を貸しやすいのです。若いうちから信用を築いていくのが第二の人生、老後、年金というものに対する備えになるのではないでしょうか。

――私も『お金が貯まるのは、どっち!?』を読んで、"目からウロコ"でした。「銀行はお金を預けるところである」という先入観が強くて、お金を借りるところであるというのは、あまり考えていませんでした。銀行から信用を得る方法があるわけですよね。その最もいい方法の一つとして、給与から天引きでお金を貯めていくことなどを挙げてらっしゃいますね。

そういう形でお金の資金管理をするのが、一番いい信用蓄積になるわけです。

――他にも、クレジットカードの保有枚数などにも触れてますね。

カードローンは必要最小限の枚数にする。『お金が貯まるのは、どっち!?』では、全くないというわけはいかないのでクレジットカードは2枚と書きましたが、少ないにこしたことはありません。

菅井氏がオーナーの東京・田園調布のカフェ『SUGER COFFEE』

住宅ローンは"魔法の道具"

――ちまたでは「老後に備えて金融商品で運用しよう」などの考えもありますが、それについてはどう思われますか?

FXとか株など運用商品はそれはそれでいいのですが、結局、仮にそこで1割、2割儲けたとしても、人生は変わらないわけです。100万が120万円になって儲かったといっても、20万円なんてすっと消えて終わりです。確かに、運用という意味では、100万円の定期預金の利息はゼロですから何もないみたいなものです。だけれども、信用金庫で100万円、200万円を持っているというのは、その人の信用力という点で、いざお金を借りるというときにはものすごく威力を発揮するわけです。

――『お金が貯まるのは、どっち!?』で一番面白いと思ったのは、住宅ローンが"魔法の道具"という点です。

住宅ローンは金利が相当に安いのです。しかも35年とか、ものすごく長い期間貸してくれる。これはサラリーマンの資産形成においては、すごく武器になるのです。

――自分の家を買ったら終わりととらえている人が多いと思うのですが、そうではないということでしょうか。

家というのは自分の幸せのためだけのものという実需ベースでとらえて、そのための住宅ローンだと思うからそこで終わってしまいます。ところが、住宅ローンは、もしかしたら、自分の資産形成に、いわゆる不動産投資と考えたときにすごく大きな資金調達手段になるのです。

――住宅ローンをそういうふうにとらえたことは、『お金が貯まるのは、どっち!?』を読むまで全くありませんでした。

石田さんは、どちらのご出身ですか。

――福岡です。

ご両親は福岡にいますか。

――はい。

もし石田さんが東京で家を買った後、ご両親が亡くなって実家の家を相続したとします。東京が息苦しいので福岡に帰るという人生を選ばれたとしたら、向うで相続した家に住んで東京の家は人に貸したらいいわけです。そこで15万円くらいの家賃収入がもらえれば、年金にプラスした不労所得として、豊かな老後を送るための大きい財産になるわけです。それは家を持ったからです。ところがそれを人に貸せないように辺鄙なところに買ったら全然財産にならないわけです。売ったとしても自分のローンを返せないようであれば財産ではありません。ですから、住宅は、実需としての側面と、不動産投資としての側面の二つあることを認識すべきなんです。

――なるほど。

自分たちが住むということだけではなくて、人に貸したときにどれぐらいの家賃がとれるのか、売らなければいけないときに高く売れるのか。この二つの視点を同時に入れておかなければだめだということです。家を買うということは、不動産投資なんだということです。自分が住むんだけれども、不動産投資でもあるんだという意識を持ったほうがいい。そのための重要なツールが住宅ローンだということです。自分の会社員としての信用力、そのポテンシャルを十分に生かせるのも住宅ローンです。住宅ローンを有利に借りるためにも、若いうちから銀行に対して自らの信用力を高めていくことが重要なのです。

――なるほど。『お金が貯まるのは、どっち!?』では、自らの信用力を高めていくために役立つ方法が満載ですね。

自分が自分の人生の経営者だという意識を持つことが大事だと思います。きちっと数字を抑えておくことが、すなわち経営のキモです。ところが、それをないがしろにしていて、国に頼っていたり、会社に頼っていたりしているから、心細くなるし、不安になるのです。あなたは操縦桿をどこで握っているのですか、ということです。会社では社長に握られ、年金は国に握られ、自分で稼いだ金すら奥さんに握られ、だんなで経営者であるあなたは何を操縦しているのかということです。『お金が貯まるのは、どっち!?』では、自分が操縦桿を握る方法を書いたつもりです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。