ビジネスシーンのトップランナーへのインタビューから、在宅勤務の課題を探り、解決するヒントを見つけだす本シリーズ。今回は、スターバックスとのコラボでも話題になったThink Labの井上氏に「圧倒的な集中」を可能にするための環境整備についてお話しいただきます。

ビジネスシーンのトップランナーへのインタビューから、在宅勤務の課題を探り、解決するヒントを見つけだす本シリーズ。今回は、スターバックスとのコラボでも話題になったThink Labの井上氏に「圧倒的な集中」を可能にするための環境整備についてお話しいただきます。

  • JINS Think Lab 株式会社Think Lab 取締役
    井上 一鷹氏

最も集中して仕事ができない場所はどこか?

──ビジネスパーソンが集中するためのワーキングスペース「Think Lab」を、眼鏡チェーンのJINSが誕生させたのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?

2015年に発売した眼鏡型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」が始まりです。いまはスマホを持ち歩くだけで運動量を測ることができますが、JINS MEMEは、知的な活動を計測するためのデバイスです。目線やまばたきの数などから、脳の活動量を推定します。

JINS MEMEユーザーは1万人を超えているのですが、データを分析した結果、驚くべきことが分かりました。私たちはカフェ、新幹線、ホテルのロビー、図書館など、さまざまな場所で仕事をしていますが、そのなかで圧倒的に集中できておらず、生産性の低い場所がオフィスだったんです。

  • JINS MEMEユーザーを対象とした分析結果

──衝撃的な結果ですが、一方で、それはそうだろうな、とも感じます。なぜオフィスでは集中できないのでしょうか?

それは主に同僚とスマホのせいです。人間は23分間かけて深い集中状態に入るのですが、オフィスでは平均して11分に1回話しかけられるか、メールかチャット、電話がきます。

「どうすれば集中して仕事ができるオフィスを作ることができるのだろう?」と研究を進めた結果、Think Labを立ち上げるに至りました。

──井上さんご自身は、以前から「集中する働き方」に関心がおありだったのですか?

いえ、むしろ逆でした。以前は外資系企業で「誰よりも寝ずに結果を出す」という働き方をしていました。

考え方が変わったのは32歳のときです。京都にある妙心寺春光院の副住職で、世界のトップエリートにマインドフルネスを教える川上 全龍さんが、面白い話をしてくれました。登山のような危険な競技の場合、不思議なことに、若いときよりも35歳を過ぎた方が、死亡率がガクンと下がるそうです。歳を取れば体力が減ってしまいますが、だからこそ、心技体のうち心技を磨いて、自己をマネジメントすることに本気になれると教わりました。

確かに、長く続けるだけの働き方では、体力が落ちたらそのままアウトプット量も落ちてしまうでしょう。どうすれば単位時間あたりの価値を濃密にすることができるのか? といった視点は、もっと若い頃から学校などで教えて欲しかったですね。それこそが働き方改革です。日本人は歴史的に「集中のテクノロジー」を発展させてきた実績があるのですから。

科学が解き明かした集中の秘訣

──日本における「集中のテクノロジー」とは、どういったものなのでしょうか?

人種的に見ると、日本人は最も集中に向いていないと考えられています。それは、セロトニンという安心や幸福を感じるための神経伝達物質が少ない遺伝形質だからであり、また、常に周りの目を気にして「空気を読む」文化を醸成しているからです。

しかし、集中は必要です。だからこそ、集中するためのハードウェアとして寺社仏閣が、集中するためのソフトウェアとして禅が発達してきたのではないかと私は考えています。

もともと不安を感じにくい西洋人ですら、現代の情報氾濫のなかでは集中できなくなってしまいました。そんな彼らはいま、もともと集中できない国民が生み出した禅やマインドフルネスに大きく注目しています。

実際、集中できる環境を科学的に検証したThink Labと、寺社仏閣のつくりには、重なる部分が多くあります。

──Think Labには、どのような集中のための仕掛けが施されているのでしょうか?

人の気持ちって、簡単には切り替わりません。神社には、鳥居をくぐって、暗い参道を歩いて、社と向き合うという、段階的な体験設計が施されています。

飯田橋のThink Labも同じように、入り口から25メートルの真っ暗な道を歩いてもらった上で、解放的な空間が広がるようにしています。いったん良質な緊張をしてから、リラックスすることが集中にとって重要なのです。さらにワークスペースでは、植物の配置から音環境までを計算して、五感への刺激を最適化しています。

  • 在宅勤務の”いま”と”これから”_Think Lab 井上氏_003
  • 在宅勤務の”いま”と”これから”_Think Lab 井上氏_004
  • 「緊張」を生み出す狭く、暗い通路と、その先で「リラックス」を生む解放的な空間。
    Think Labの造りは寺社仏閣に通じるところが多い

在宅勤務を工夫する / しないによって、大きな差が生まれていく

──大がかりな改装ができない自宅でも、集中のための環境を用意することは可能なのでしょうか?

JINS MEMEの計測によって、在宅勤務での生産性向上に必要なものが明らかになってきました。最も影響が大きいのは「机とイス」です。6割もの在宅勤務者がダイニングテーブルで仕事をしているのですが、ここは何時間もの作業をするような設計はされていません。ディスプレイは目の高さに、キーボードは肘が曲がらない場所に置かないと、身体を悪くしてしまいます。高さを調整できるオフィス用品を家でも使うことが重要です。

──在宅勤務下では、オン / オフの切り替えがしにくいという悩みも聞きます。

仕事や家庭、趣味といったさまざまなロールをひとつの場所で行うことは、マインドセットを阻害する原因になります。先日当社からリリースしたThink Lab HOMEのような組み立て式の書斎を使うことや、「照明と香り」によって頭を切り替えることをオススメしています。

  • Think Lab HOME

人間は青い光を浴びないと覚醒しないので、仕事用にタスクライト(※)を使いましょう。また、目や耳は常に作動している器官なので、嗅覚や触覚を使うと気持ちをスイッチしやすいです。Think Labでは、集中のためのオリジナルアロマを用意しています。

そして、こうしたことを「仕事を楽しむための工夫」として、前向きにとらえて欲しいと考えています。いまは、自分で働き方をカスタマイズできるようになったわけですから、集中のために仮眠を何回取ってもいいですし、いったんオフにするためお風呂に入ってもいいでしょう。自分の集中を作れるかどうかで、成長曲線が変わる時代だと思っています。

──社員のテレワークを支援するために、企業ができることは何でしょうか?

イスや机、PC、マイクといったファシリティを、社員の家庭環境に合わせて数パターン用意して、提供していくような仕組みをつくることが必要だと思います。

23区内にオフィスを構えれば、従業員一人あたり月額数万円の空間経費が必要ですが、20年後どころか、来年の働き方も分からないような状況になりました。今後は、テレワークのためのファシリティ投資をどれだけできるかが、従業員満足や採用PRに直結していく時代になっていくでしょう。

また、テレワークを推進するならば、「オーディオ環境」に力を入れることがすごく大事です。見たくなければ目を逸らせばいい視覚情報と比べて、聴覚情報はいったんすべてが脳に届いてから取捨選択をするため、無意識のうちにリソースを割いています。雑音が酷かったり、ハウリングに気付かなかったり、そんな人とは、打ち合わせしたくないでしょう。オンラインミーティングの集中を高めたいならば、オーディオ環境を見直してください。

──ありがとうございました。

>>LenovoPRO 「在宅勤務のための知識、PCと周辺機器」特集はこちら

(※)タスクライト

仕事や勉強など、作業をする机に置く部屋の照明とは別の照明。作業をする人に必要な手元の明るさを補ってくれることを機能とする。


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