グローバル化やICT化など、社会の急激な変化によって、今求められている知識や能力が将来にわたっても有効か否かが不明瞭な時代を迎えつつあります。こうした中、昨今の学校現場では、特定の知識や能力ではなく、主体性、判断力などを総合した「人生を主体的に切り拓く能力」の育成が求められています。

「人生を主体的に切り拓く能力」は、児童生徒を指導する教員側にも同様に求められるものです。未来の教員を養成している国立大学法人 山口大学(以下、山口大学)教育学部では、このテーマに対して「ちゃぶ台方式」と呼ばれるユニークな教育プログラムを実践。同プログラムを通じて「主体性」と「判断力」、「ICTスキルや活用力」を身につけた学生が、卒業後、これらの能力を次代の子どもたちに引き継ぐことが目指されています。

さらに同学部では、2017年より、授業や課外活動で学生が日々利用する推奨ノートPCにSurface Pro 4を採用。学校現場のICT環境が多様化する中、学生が卒業後、あらゆる学校環境でICTを効果的に活⽤するための「ICTに対する柔軟性」、「ICTに対する主体性」を育むことに挑戦しています。

国立大学法人 山口大学

プロファイル

国立大学法人 山口大学は、9学部10研究科からなる、学生数1万人を超える総合大学です。1815年の創設後、200年以上もの歴史を持つ同大学では、学生と教職員が共に力を合わせ、共に育み合い、共に喜びを分かち合う、「共同、共育、共有の精神"山大スピリット"」をもって、人間力とチャレンジ精神を持つ人材を輩出しています。

導入の背景とねらい
ICT環境が多様化する学校現場。柔軟かつ主体的に対応できる教員の養成には、推奨ノートPCの活用の幅の拡大が必要だった

ICTの発展は、私たちの生活を日々豊かなものにしています。しかし、これを有効活用するには、ICTスキルとは別の能力を利用者が有している必要があります。たとえば、インターネットは安易かつ迅速な情報入手を可能にしますが、膨大な情報の中から的確なもの、正しいものを読み取るには、自らの指標のもとで物事を捉える力である「主体性」と「判断力」が必要となるのです。

学習指導要領2020でも、「人生を主体的に切り拓く能力」という言葉のもと、ICTスキルや主体性、判断力を育むことの重要性が大きくフォーカスされています。こうした次世代の教育に対応した教員を養成すべく、山口大学 教育学部では「ちゃぶ台方式」と呼ばれるユニークな教育プログラムを実践しています。

国立大学法人 山口大学 教育学部 教授 鷹岡 亮氏

ちゃぶ台方式の教育では、円卓(ちゃぶ台)を取り囲むようにして教員と学生、地域の教育関係者が教育課題について議論、実践することで、相互に学び合いながら教育課題を解決していくことが目指されています。さらに、プログラム中で「主体的な問題提起」と「課題解決策の思考と判断」が行われることにより、学生の中に主体性と判断力が培われることとなるのです。こうした実践の中で、2001年より必携化されているノートPCが目的や課題に応じて柔軟に活用されています。

国立大学法人 山口大学教育学部 教授 鷹岡 亮氏は、ちゃぶ台方式の教育を通じて主体性と判断力を身につけ、さらにICTスキルや活用力をも習得した学生が、卒業後、これらの能力を次代の子どもたちへ引き継ぐことに期待していると語ります。

「学校現場でもっとも大切なことは、児童生徒との間で信頼関係を築くことにあります。信頼関係を築くことさえできれば、子どもたちは日々の学習以上に、先生の考え方や能力を吸収するようになるかもしれません。ちゃぶ台方式の教育で学生がまず挑戦するのは、児童生徒、教員や地域との信頼関係の構築です。そしてその失敗を繰り返す過程を通して、主体性と判断力、さらにICTスキルや活用力も育まれることとなるのかもしれません。これは結果として、本学を卒業した教員が、『人生を主体的に切り拓く能力』を、信頼関係のもとで児童、生徒たちへ引き継ぐことにつながるのではないかと考えています」(鷹岡氏)。

教員を目指す学生には、自らの成長と変革のためにICTを利用することによって、ICTスキルや活用力を児童生徒へ引き継いでいく義務があります。その入り口を担う推奨ノートPCは、きわめて重要な存在だといえるでしょう。

ノートPCの必携化から15年以上が経過した今、ノートPCの活用は、日々の教育の中で一般化しています。そしてこの15年という時の流れで、全国の学校がICTを積極的に導入する時代を迎えています。山口大学 教育学部の学生が卒業後に勤務する学校現場において、今後、適材適所でICTを取り入れた授業や学習が活発になることは間違いありません。ここで留意せねばならないことの1つは、学校間にあるICT環境の差異です。

ICTの導入状況は学校によってさまざまです。教務タブレットを導入する学校もあれば、まだ電子黒板を導入していない学校もあります。卒業後、学生があらゆる学校環境でICT を効果的に活用するためには、どのようなICT環境にも対応できる『ICTに対する柔軟性』、そして与えられた環境の中で自ら活用策を模索する『ICTに対する主体性』を持っていなければならないのです。

山口大学 教育学部ではこれまで、ラップトップ型の製品を中心として、推奨ノートPCの機種選定を進めてきました。しかし、前述した導入状況の多様化を背景として、推奨ノート PC の選定に新たな条件が求められるようになってきたといいます。教育学部の先生方は、この点について「これまで推奨ノートPCには、あらゆる学校現場で使用されていること、つまり『スタンダードであること』を重視してラップトップ型PCを採用してきました。しかし、近年のICT環境の多様化に伴い、新しい使い方が求められる時代になってきました。また、ラップトップ型の場合、そこでの用途がおおむね固まっているため、『ICT に対する柔軟性、主体性』を育むツールにはなりにくいというデメリットもありました。そこで、2017年の新入生に向けた機種選定では、『活用の幅の拡大』という指標を新たに設けることにしたのです」と説明します。

システムの概要
学生のICTに対する柔軟性と主体性の育成に期待し、Surface Pro 4を採用

国立大学法人 山口大学 教育学部 准教授 阿濱 茂樹氏

山口大学 教育学部が実践するちゃぶ台方式の教育は、人と人との信頼を育む教育です。そのため、同学部の講義では学年を経るごとに、信頼関係を構築する術となる「アナログ」の要素が強まっていくこととなります。学生のICTに対する柔軟性、主体性を育む方法としては、教育プログラムに無理矢理ICTの活用を組み込むのではなく、学生自らが進んでICTを活用したくなる環境を整備することが望まれました。

この環境整備の有効な方法として、推奨ノートPCへのSurface Pro 4の採用が検討されました。「推奨ノートパソコン選定部会」の一員を担う、国立大学法人 山口大学 教育学部 准教授 阿濱 茂樹氏は、このねらいについて次のように説明します。

「2in1タブレットであるSurface Pro 4は、ラップトップ型と比較してデバイスの活用の幅を飛躍的に拡大できます。また、本学ではこれまでWindowsをベースに教材を作成しており、資産活用という観点からWindows搭載であることを推奨ノートPCの条件としてきましたが、最新バージョンのWindows 10では標準機能の数々によって活用の幅をさらに広げることが可能です。Surface Pro 4は、我々教員が想像しないような使い方を生み出す可能性を秘めており、ひいてはそれが、学生のICTに対する柔軟性と主体性を育むと期待したのです」(阿濱氏)。

Surface Pro 4

同学部が数ある製品の中からSurface Pro 4を採用した背景には、1つ、大きな理由があります。いかにデジタルネイティブと呼ばれる世代であっても、学生のICTリテラシーにはばらつきがあります。特にPCに関していえば、学生のICTリテラシーは決して高いとはいえないでしょう。これは、さまざまな可能性を秘めるSurface Pro 4を提供しても、その用途が分からなければ有効活用する学生が一部にとどまってしまうことを意味します。

鷹岡氏は、こうした懸念を払拭するうえで、日本マイクロソフトが製品導入校向けに開催するワークショッププログラムの存在が非常に効果的であると語ります。

「学生は、日々の生活でスマホなどのデジタル機器を活用しています。また、いろいろなアイデアも持っています。と考えれば、後は、学生に活用方法や用途の可能性さえ周知されれば、学事だけでなく、日々のさまざまな場面でスマホのようにタブレットPCを活用してくれます。しかし、残念ながら私たち教員側も、最新の機器やOSの機能を熟知できているわけではありません。日本マイクロソフトが開催するワークショッププログラムは、この可能性に気付かせてくれるものでした。デバイスの提供だけでなく活用に向けた支援まで頂けることは、学生のICTに対する柔軟性、主体性を育むうえで間違いなく有効だと思います」(鷹岡氏)。

導入効果
Surface Pro 4への憧れとワークショッププログラムが、主体的なICT活用の動きを生み出す

山口大学 教育学部では、性能や携行性、2in1タブレットとしての完成度の高さなど、デバイス自体の有用性も高く評価してSurface Pro 4を推奨ノートPCに採用しています。特に「デザイン性」の秀逸さについては、実際に新入生が推奨ノートPCを購入する段階で、大きな効果を感じたといいます。この点について、学生の大学生活や PC 利用を支援する、山口大学生活協同組合 中井 傑氏と新里 高史氏は、次のように説明します。

山口大学生活協同組合 専務理事 中井 傑氏

山口大学生活協同組合 推奨ノート PC 担当 新里 高史氏

「教育に有効な機種を推奨ノートPCに採用されたとしても、購入する学生が少なければ意味を成しません。山口大学では学部、学科ごとで異なる推奨ノートPCが採用されていますが、2017年度における推奨ノートPC購入者の『昨年比の台数、伸び率』とも、教育学部が採用したSurface Pro 4が圧倒的に高いという結果となりました。約75%の新入生がSurface Pro 4を購入した結果から、学生にとって『ほしい』と直観的に感じてもらえるデバイスだったのだと思います」(中井氏)。

「スタイリッシュなデザインや、『優れたデバイス』というブランド イメージが、購入率の高さに直結したと感じています。他学部の学生や教育学部の先輩学生からは『うらやましい』『私の学年も Surface Proだったらよかったのに』という声が上がっており、多くの学生がSurface Proというブランドに対して憧れに似た印象を持っているようです。こうしたイメージは、購入者が積極的に活用してくれる『主体性』にもつながるため、非常に重要だと考えています」(新里氏)。

新入生が入学した後、山口大学 教育学部では2017年4~5月の2か月間で、日本マイクロソフトによる学生向けワークショッププログラムを2回開催しています。このプログラムでは、Windows 10が備える手書き機能「Windows Ink」の活用法や、「OneNote」の学校現場での活用法、「Office Mix」による教材作成方法などが主にレクチャーされました。

2回目に開催されたワークショッププログラムも、講師である村井(左)のもとで進行。午前中は、新入生必修の情報教育でSurface Pro 4の使い方がレクチャーされた。これから4年間Surface Pro 4を利用することになる参加者の姿からは、最新ICTの可能性に触れて思わず笑顔になる場面を多くみることができた

2年生以降の上級生は、Surface Pro 4とは別の推奨ノートPCを利用している。そうした世代の学生にも最新のICTに触れる機会を提供して「ICTに対する柔軟性、主体性」を育むべく、上級生に向けたSurface Pro 4のレクチャーも実施された

座学ではなく実戦形式で進められたワークショッププログラムに、学生も興味深く積極的に参加していた(左)。プログラムの中では、Windows Inkを利用して画面にメモ書きを行ったり(中)、高い精度を持つペンを利用してイラストを描いたり(右)と、早くもSurface Pro 4を使いこなす学生の姿を多く見かけた。ワーク ショップ終了後、Surfaceの魅力に触れた学生からは、「残り3年間の学生生活でSurfaceを使いたい」と、購入を検討する声も上がった

日本マイクロソフトのレクチャーを担当した講師の村井 琴美は、次のように説明します。

日本マイクロソフト株式会社 ワークショップ講師 村井 琴美

「Surface Pro 4やWindows 10、最新のOfficeは非常に多くの機能を持っていますが、単に機能を説明するだけでは、その活用シーンまでイメージできません。たとえばWindows Inkのスケッチ パッド機能を利用すれば、授業に絵本の要素を取り入れることが可能ですし、OneNoteの英語読み上げ機能や品詞の色分け機能などを活用すれば、近年求められている英語教育の授業を容易に行うことができます。ワークショッププログラムの目的は、単なる機能説明ではなく、学生が自発的、主体的にICTを活用するようになるヒントを与えることです。そのため、『どのように教育シーンで活用できるのか』というアイデアを主としてレクチャーを実施しました。これは、学生の中の『将来の先生像』を育むことや、学生の意欲向上にもつながると考えています」(村井)。

全国の教育委員会も担当する村井のもとには、実際に現場の教員が Surfaceをどのように活用しているのか、どのような機能を好んでいるのかという生の声も集まるといいます。こうした情報が盛り込まれたワークショッププログラムを経たことにより、自ら新たな活用法を実践する学生の姿が増えつつあると、鷹岡氏は笑顔で語ります。

「ワークショッププログラム後には、日本マイクロソフトにレクチャーいただいた用途に加えて、まったく想像しなかった形でSurface Pro 4を活用する学生も見かけるようになりました。たとえば休憩時間に広場でダンスの練習を行うサークルは、Surface Pro 4で撮影した練習風景の映像に手書きで訂正点を記入し、改善すべき内容を仲間内で共有するといった形で活用しています。これはまさに、『こんなことができたら・・・』と主体的に考えている学生に新しいICTの機能が提供されたことで柔軟に使いこなすという、『学生自身の成長のため、変革のためのICT活用』の一端を示しているのではないでしょうか」(鷹岡氏)。

広場でダンスの練習をする学生のようす。Surface Pro 4が学事だけでなく、日々のさまざまなシーン、さまざまなで用途で活用されることにより、ICTに対する柔軟性と主体性が培われていく

今後の展望
マイクロソフトの支援を活用し、学生へのサポートを継続していく

推奨ノートPCにSurface Pro 4を採用したことで、学生のICTに対する柔軟性、主体性の向上を目指した、山口大学 教育学部。文部科学省は近年、タブレットや電子黒板だけでなく、クラウド活用によるパーソナライズされた教育の提供など、先進ICTの学校現場への適用を提言しています。こうした先進ICTであっても、同学部を卒業した人材であれば、ICTに対する高い主体性のもと、積極的かつ正しくそれを活用することでしょう。

こうした未来を確たるものとするために、阿濱氏は今後、大学教員側もICTへの十分な知見をもって学生を支援していきたいと語ります。

「実は村井様には、学生向けのワークショッププログラムよりも前に、私たち教員と生協職員へ向けた勉強会を開催いただきました。そこで感じたのは、教員側もまだまだ最新のICTを学ばねばならないということです。ワークショッププログラムは、活用のヒントを与えるという意味で非常に有効です。しかし、それはあくまで点の存在でしかありません。その後のフォローアップによって線、そして面にしていくためには、教員や生協職員のサポートが不可欠でしょう。日本マイクロソフトには今後も、学生だけでなく、私たちへも教育支援をしていただきたいと考えています」(阿濱氏)。

大学生協中国・四国事業連合 高祖 健太氏

こうした日本マイクロソフトによる支援を有効活用する教育機関は、近年増加の傾向にあるといいます。今回の取り組みを支援し、また中四国の学校ICTの調達も担当する、大学生協中国・四国事業連合 高祖 健太氏は、他校の状況も交えて次のように説明します。

「山口大学様の学生数は、教育学部生だけでも700名に及びます。このすべてに対して日本マイクロソフトがワークショッププログラムを実施することは現実的ではなく、また点から面にしていくまでの作業もたいへんな時間と労力がかかるでしょう。中四国内の大学生協では、新入生への教材の提案やパソコン講座の運営を、それぞれの大学の先輩を生協側で採用して行っています。日本マイクロソフトには、先輩の学生たちに『ワークショップ』を実施していただき、その先輩たちが、自ら学内で自分の大学や所属する学部で適した『ワークショップ』を実施して面としてICTの活用を広げていく予定です。こうした他校での実績、成功例などの知見を参考にしながら、日本マイクロソフトとのパートナーシップによって、今後も山口大学様のICTを支援していきたいと考えています」(高祖氏)。

ちゃぶ台方式の教育によって、主体性と判断力、ICTスキルと活用力を十分に持つ人材養成を目指す山口大学 教育学部。Surface Pro 4の導入でそこにICTへの柔軟性と主体性が加わったことにより、同学部の教育はいっそうの発展をしていくことでしょう。山口大学 教育学部を卒業した学生が今後、多くの児童生徒の「人生を主体的に切り拓く能力」を開花させていくことが期待されます。

「ワークショッププログラム後には、日本マイクロソフトにレクチャーいただいた用途に加えて、まったく想像しなかった形でSurface Pro 4を活用する学生も見かけるようになりました。たとえば休憩時間に広場でダンスの練習を行うサークルは、Surface Pro 4で撮影した練習風景の映像に手書きで訂正点を記入し、改善すべき内容を仲間内で共有するといった形で活用しています。これはまさに、『こんなことができたら・・・』と主体的に考えている学生に新しいICTの機能が提供されたことで柔軟に使いこなすという、『学生自身の成長のため、変革のためのICT活用』の一端を示しているのではないでしょうか」

国立大学法人 山口大学
教育学部
教授
鷹岡 亮氏

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