ネットワークにおいて企業が抱える課題はさまざまです。接続する端末が多すぎる、フロアや部署ごとにセグメントを分割したい、データを高速に送受信したい……。それには最新の「スイッチ」の導入が解決法として挙げられます。ここではヤマハのL3スイッチを例に、最新のスイッチがいかにネットワークの課題を解決し、管理者の負担を減らすかを見ていきましょう。

企業のネットワークが抱えるさまざまな課題とは?

昨今、コンピュータネットワークを敷設していない企業はないといっていいでしょう。企業の規模や業態、拠点などによってネットワークの構成はそれぞれですが、だからこそネットワークに関する課題もさまざまです。

たとえば、以下のような病院におけるネットワーク構成を例に考えてみましょう。

  • 病院におけるネットワーク構成の例

    病院におけるネットワーク構成の例

このような環境では、下記のような要求がよく挙がってきます。

  • 来客用Wi-Fiがあり、院内へ接続する端末が多いため、キャリーオーバーすることがある
  • 医師専用ネットワークを切り離すため、セグメントを分けたい
  • ローカルサーバーにある電子カルテなど大きなデータへ高速にアクセスしたい
  • 来客用Wi-Fiでは端末の認証を行いたい
  • ネットワークが停止しないよう、経路の二重化・冗長化を行いたい

このように多くの端末からの通信が、分割されたセグメント間でも多く発生するケースでは、スイッチやルータに処理が集中してしまうなどネットワークの負荷が偏ってしまい、ネットワークのトータルパフォーマンスを落とす原因となります。この場合、ルータの配下にL3スイッチを導入することで負荷のバランスをとる方法が有効です。

大容量の通信が安定的に行えるL3スイッチ

そもそもL3スイッチは、OSI参照モデルにおけるネットワーク層(レイヤ3)での転送処理を主な機能とするネットワーク機器です。同じレイヤ3機器であるルータとは機能的に重複する部分が多く、さらに最近のL3スイッチが多機能化してきたことで、ルータとの違いがより曖昧になりつつあります。傾向としてはレイヤ3プロトコルの処理について、主にハードウェアで処理するものをL3スイッチ、主にソフトウェアで処理するものをルータと呼ぶようです。

とはいえ、ヤマハのルータ「RTXシリーズ」を例にすると、ルーティング処理をソフトウェアで行っています。一方、L3スイッチはルーティング処理をハードウェアによって行います。一般的なルータでなかなか処理しにくかった大容量の通信を、L3スイッチだと安定的に行えるのが大きな特徴というわけです。

製品を具体的に見ると、現在ヤマハから発売されているL3スイッチには2種類があります。スタンダードL3スイッチ「SWX3200シリーズ」と、ライトL3スイッチ「SWX3100シリーズ」です。

スタンダードL3スイッチ「SWX3200シリーズ」は、52ポート構成の「SWX3200-52GT」と、28ポート構成の「SWX3200-28GT」をラインナップしています。いずれも大規模から小規模まで対応した、ネットワークの構築に最適なL3スイッチといえるでしょう。ダイナミックルーティングやヤマハスイッチでは初搭載の「スタック機能」による冗長化、10GのSFP+スロットなど、特に大規模ネットワークで求められる機能をしっかり押さえています。

  • 「SWX3200-52GT」はLANポート48、SFP+スロット4の計52ポート構成

    「SWX3200-52GT」はLANポート48、SFP+スロット4の計52ポート構成

  • 「SWX3200-28GT」はLANポート24、SFP+スロット4の計28ポート構成

    「SWX3200-28GT」はLANポート24、SFP+スロット4の計28ポート構成

一方、ライトL3スイッチの「SWX3100-10G」は、中小企業のネットワーク構築に最適な製品です。LAN内のパケット転送に必要なスタティックルーティング機能を搭載した、小規模ネットワーク向けのモデルとなります。

  • 「SWX3100-10G」は中小企業のネットワーク構築に向いたモデル

    「SWX3100-10G」は中小企業のネットワーク構築に向いたモデル

それでは、製品の特徴をもう少し詳しく見ていきましょう。

初搭載「スタック機能」による冗長化

今回のヤマハ製スイッチから「スタック機能」が搭載されています。スタックとは、複数のスイッチを仮想的に1つのスイッチとして扱う機能のことです。大規模ネットワークでの障害対策の手段のひとつに、スイッチ冗長化が挙げられますが、その対策に利用できます。一般的なVRRP(仮想ルータ冗長プロトコル)を用いた冗長化の方法では、待機スイッチをスタンバイさせる必要がありますが、スタックを組んだスイッチはすべてアクティブに使えるため、利便性や効率が上がります。また、設定情報やルーティング情報を共有できるため、管理も容易です。

  • スタックを組んだスイッチはすべてアクティブに使える

    スタックを組んだスイッチはすべてアクティブに使える

セキュリティ機能の強化

セキュリティに対する要求は、今後も減ることはありません。本製品はより強固なネットワークに対応するため、MACアドレス認証およびIEEE 802.1X認証といった従来のハードウェアに基づいた認証のほか、新たにWeb認証に対応し、Webブラウザによる認証が可能となっています。

充実した管理/設定機能

また、「LANマップLight」機能も搭載しています。これはヤマハルータでおなじみの機能「LANマップ」をスイッチ向けに最適化したもので、スイッチ単体でWebGUIによるネットワーク見える化を実現してくれます。ネットワーク構成がグラフィカルに表示されるうえ、L3スイッチ配下にヤマハ製のL2スイッチを接続すれば、各機器の情報をWebGUIから確認できます。ネットワーク製品のメーカーを統一すれば、管理が容易になることはいうまでもないでしょう。

精度の高い端末の死活監視機能

ほかにも、従来はPINGによる監視のみだったため検知できない異常がありましたが、下記の3つを組み合わせることで、精度の高い死活監視ができるようになりました。

  • PINGコマンドによる死活監視
  • LLDP(Link Layer Discovery Protocol)による定期通信の確認
  • 監視対象端末が接続しているポートの受信スループットの確認

異常検出時の動作(メール通知、SNMP/L2MSトラップ通知)も選択可能で、こうした機能がネットワーク管理者の負担を減らしてくれます。

  • 精度の高い死活監視が特徴

    精度の高い死活監視が特徴

パフォーマンス観測

特に大規模ネットワークでは、機器の稼働状況の把握は難しいものです。ヤマハのL3スイッチではスイッチのCPUおよびメモリの使用量や、トラフィック量の観測を定常的に行う機能を搭載し、稼働状況や通信状況を容易に把握できます。

  • スイッチのCPU/メモリの使用量、トラフィック量の定常的な観測が可能

    スイッチのCPU/メモリの使用量、トラフィック量の定常的な観測が可能

今回はヤマハからはじめて投入されたL3スイッチについて、その特徴を解説してきました。

次回はヤマハのネットワーク機器の大きな特徴である「ネットワーク見える化」について紹介します。L3スイッチが搭載する機能や、ネットワーク管理者がそれをどのように使えばよいのか見ていきましょう。

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