もはや“仕事道具”という意識すら薄れるほど、仕事とは切り離して考えられなくなったPC。だからこそ、ビジネスパフォーマンスの保持・向上には欠かせないわけだが、これを意識しているビジネスパーソンはどれだけいるのだろうか?
ここでは、ThinkPadを愛用するビジネスリーダーをむかえ、ThinkPadがどのようにビジネスを支えているのか探っていくとともに、ThinkPadがビジネスPCの代名詞的存在になっているワケを紐解いていきたいと思う。
第1回となる今回は、データ分析の世界で第一線を走りつづける、データビークルの最高製品責任者 西内 啓 氏。ベストセラーとなった「統計学が最強の学問である」の著者としても知られる同氏が、“手足みたいなもの”と語るThinkPadは、データ分析の最前線でどんな働きをみせているのか、同氏の熱い“ThinkPad愛”とともに思う存分語り尽くしていただいた。
人間への興味からデータ分析の世界へ
──データ分析の世界に入られたきっかけはどんなものだったのでしょうか?
高校生のころから人間に興味があったんです。でも得意な教科は数学や物理だったので、そのときは将来のイメージができないまま東京大学理科二類に進学しました。入学後はまず遺伝子や脳のことを学んでいたんですが、これでは人間を理解できるとは残念ながら思えませんでした。そこで文系の心理学や社会科学を履修してみたところ、これらの学問の根底にあるものが統計学なのでは……?と気づきを得ました。
ですが、私が在学していた2000年当時は、データサイエンスという概念がほとんどない時代です。統計学を研究している先生方は、たとえば経済学や工学など、さまざまな分野に散らばっていました。それでいろいろな学部を見ていくなか、医学部で統計学を教えてくれる場所があることを知りました。
その頃はちょうど医学の世界も過渡期をむかえていて、根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine:EBM)が求められるようになっていたんです。つまり医学界でもデータドリブンな考え方が広まっていたんですね。なので恩師のところには医学界、また製薬会社から多数の依頼が舞い込むようになり、私もアルバイトからデータ分析の世界に入ることになりました。
時代を先読みした分析ツール「dataDiver」を開発
──データビークルを設立した背景は
「大学の仕事より、企業のデータ活用をお手伝いする方が楽しいじゃないか」と2010年に教員の仕事を辞めて、しばらくにフリーランスで仕事をするようになりました。そこからデータビークルを創業したのは2014年。そこで「dataDiver」という拡張アナリティクスツールの開発に着手しました。でも……、投資家の評判はお世辞にも良いものではありませんでした。なぜなら、 “データサイエンティストの仕事の多くが要らなくなるツール”だったからです。
あと、dataDiverはBIツールとも統計解析ツールとも異なる、当時は存在しないジャンルの製品だったことも理由だと思います。いまでこそ「市民データサイエンス」、つまり“専門家でない人が自分の決定をより良いものにしていくためのツール”として、ガートナーも定義してくれていますけど。
──現在、データビークルの製品はdataDiverをはじめ、多くの製品が企業から求められるようになりました。この理由はどうお考えですか?
たとえば、BIツールを導入したけど、「あまり成果が見えてこない」という話をよく耳にします。また、外部のデータサイエンティストに分析を依頼したものの、業界を知らない人がデータを分析して読み取った結果が、業界では当たり前の常識だった……、なんてコミュニケーションギャップが起こっている例も見受けられます。
私の場合、創業前からいろんな企業のデータ活用に関する失敗について相談を受けてきた経験からdataDiverなどのツールの着想を得てきたわけですが、当時においては先進的な取り組みに関する失敗が、いま世の中のあちこちでされ始めていると感じています。それこそガートナーの方には、dataDiver が2014年からあることに驚かれたくらいです。
──なるほど。多くのビジネスパーソンがデータに触れる機会が増えたからこそ、dataDiverの必要性を感じ始めたということですね。
仕事のスタイルと求めるPCの在り方
──ここからは普段のお仕事について教えてください。現在はどのようなスタイルで働いていますか?
水曜日の午後には意図的に余白を作るようにしています。可能な限りアポイントを入れず、開発に集中できる時間です。これには参考としている事例があって、「病院に必ずひとつ、予定を入れない手術室を作り、運用を効率化させた」という話にヒントを得ています。病院には予定された手術もあれば緊急手術もありますが、常に予定を入れない空きをひとつ設けることでバッファとなり、スケジュールがうまく回るようになるのだそうです。
──数あるノートPCのなかでThinkPadを使い続けている理由はなんでしょうか?
私はデータサイエンティストであると同時に経営者でもありますから、マーケディングや進捗管理、営業活動などでもExcelを使う機会が多いんです。Windowsの何よりのメリットは、ネイティブなExcelが動くことだと思うんですよ。そこも含めて突き詰めていった結果、ThinkPadに落ち着いた感じです。
──データ分析の専門家である西内さんが、仕事道具としてのPCに求めているものとは?
大前提として、まず軽いこと。私はすべての仕事をこのThinkPad経由で行いますので、持ち歩けるモデルでなくてはいけません。複数のディスプレイを使うこともなく、常に頭のなかで複数の画面イメージを保持しながら、“ALT”+“Tab”でアプリを切り替える──これもひとつの自分のスタイルですね。
キーボードの打鍵感も大事です。私はPCを操作するときにマウスをまったく利用しません。思考のスピードにキーボードがついてこないとダメで、喋るよりも入力の方が速いんですよ。マウスを動かす時間が無駄に感じるんです。ですから、ThinkPadの“赤ポチ”、つまりトラックポイントから離れられなくなりました。PCを変えるとレスポンスが落ちてしまうんです。
ThinkPadさえあればどこでも仕事ができるので、自宅のオフィスにもとくにこれといった機器は置いていません。テレビの収録の合間に仕事をすることもありますし、外出先で雨が降ってきたときはタクシーを呼んで近所をぐるぐる回ってもらい、屋根代わりにして仕事をしたこともありました。
──非常に個性的な仕事の仕方、PCの使い方ですね! 周りから驚かれるのでは?
はい。以前、あまりITが得意ではない行政の方々向けにExcelだけでデータ解析・加工の研修を行う機会があったのですが、マウスをまったく使わずにほぼショートカットだけで操作することにビックリされました。「いま何が起こったんですか、速すぎて分かりません!」と……。データ解析について教えに来たはずなのに、その研修ではExcelのショートカットをいろいろ教えることになりましたね。
実は私は、使用しない“変換”キーのキーマップを変えて、“アプリケーション”キーに割り当て、マウスの右クリックの代わりとして使っています。そして、ショートカットキーでは操作できないExcelのボタンの上に"置きポインタ”をして、可能な限りトラックポイントにも触れずに仕事をしています。
ThinkPadのフラグシップモデルを使い続ける理由
──ThinkPadにもいろいろなモデルがありますが、どのような観点で製品を選んでいますか?
自分の仕事はデータ分析ですので、詰める限りの最高性能を詰めたいと思っています。スペックの低いPCが微妙にモタっている間に、我々の生産性が食われているわけじゃないですか。こういう時間を凝縮すれば、人生において1年くらいはPCを前にしてうつろな目で待っていることになるんじゃないかと思ってます。
でも移動することもあるので、やはり大きくて重いモデルは持ち歩きたくない──となると、答えとしてはThinkPad X1 Carbonのような最高スペックのモデルを買いつづけることになるわけです。
──これまでThinkPadを使いつづけてきたなかで、もっとも変化を感じた瞬間とは?
キーボードが7列から6列になったときですかね。それまで7列キーボードで最適化されていたので、慣れるまでしばらく時間がかかりました。いまはさすがに6列キーボードに順応しましたけれど、最後の7列モデルは結構長い間メンテナンスをしながら使っていましたね。一番長く使っていたThinkPadだと思いますし、「統計学が最強の学問である」も多分そのThinkPadで執筆しました。
──ThinkPadの良さとしてそのほかに感じている点は?
カスタマイズ性・メンテナンス性も結構良いなと思っています。ThinkPadでも薄型に特化していないモデルは、Web上に公開されてるメンテナンスマニュアルを見ながらメモリ追加なども自分でできたりしますよね。自作PCをやっていたので、簡単なカスタマイズ・アップグレードのためにお金を払ったり買い換えたりするのが無駄に感じてしまって。現在はやらなくなりましたが、昔は簡単な修理も自分でやってたんですよ。ThinkPad X240を使っていたころは、液晶ディスプレイが破損してもAlibabaで液晶パネルだけ注文して自分で換装したりしてましたね。
──最後に、ThinkPadとはどういう存在なのか教えていただけますか?
AIは「人工知能(Artificial Intelligence)」と表現されますが、一方で「拡張知能(Augmented Intelligence)」と呼ぶべきだと考える人もいるんですよ。つまり、人間が介在しないかたちで機械に全ての仕事を任せるのが前者、逆に人間を機械で拡張して、いままで以上にすごい仕事をするのが後者の考え方です。私自身も後者の考えに近くて、さらに言うと人がITやデータサイエンス、AIを通して拡張される一番の接点がPCだと思うんです。
私にとってThinkPadは、データの世界に触れたり、クリエイティビティを発揮したりするための手足みたいなものですね。目の先にはディスプレイが、指の先にはキーボードがある。データを分析するにも原稿を書くにも、私にはThinkPadが必要なわけで、これがあって自分が完成する──体の一部みたいなイメージですね。
──ありがとうございました。
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