毎月IoTにまつわる関連用語を紹介する『3分でわかるIoT用語集』。今月は、いまやシングルボードコンピュータの代名詞として定着し、その手軽さと汎用性の高さからIoT時代の一翼を担うとされる「Raspberry Pi (ラズベリーパイ、ラズパイ)」を取りあげる。

  • ラズパイイメージ

ラズパイの沿革

販売当初、「手のひらサイズ」「安い」といわれて瞬く間に爆発的な売り上げを記録したRaspberry Pi(ラズベリーパイ、ラズパイ)、通称ラズパイは、2018年、今年10周年を迎えた。ラズパイの立ち上がった2008年の少し前の2006年には「一人の子供に一人のパソコンを」を掲げてスタートした非営利団体 One Laptop per Child (OLPC) が開発したサブノート型コンピュータのXO-1が188ドルで販売された年でもある。ちなみにXO-1は開発団体の名前の通り、小学校の児童ひとりひとりにパソコンを与えることを意図されたもので、通称「100ドルラップトップ」と呼ばれた。これは2年後の2008年には、100ドルまで低減されることを目標としていたところからこう呼ばれていた。ちょうどこの頃は、パソコンのコモディティ化がいよいよ次のステージに入ろうとしていることが実感できる様々なムーブメントの時代でもあった。

ラズパイの最新モデルは現在、2018年3月発売の「Raspberry Pi 3 Model B+」。クアッドコア「Arm Cortex-A53」を搭載し、前モデルの「Raspberry Pi 3 Model B」に比べて性能が10%向上しているとのことだ。日本ではすっかり、シングルボードコンピュータの代名詞として愛されている。その特徴は、なんといってもその手軽さ。大きさはわずか、名刺サイズで、数千円で入手可能だ。この小さな基板にはArmベースのCPUや、パソコン向けのハードウェアの大半がすでにセットされていて、HDMIやUSB、LANなども利用できる。となればあとは、もう一歩。メモリや電源、デスクトップ向けのOS、ディスプレイ、キーボードなどを用意して組み立てれば、MacやWindowsのように「パソコン」として利用できる。

もちろんパソコンだけではない。対応ソフトウェアやハードウェアも市場に出回っているので、スピーカーにつないで音を出す、動画を再生する、プログラミングソフトで遊ぶ……、など柔軟な発想でさまざまなことができる。しかも最近は、そういったホビーユーズを飛び越えて、産業用としてもそのシェアを着実に伸ばしているという。

ラズパイとSDカード

ところで、ネットワークブートができる最新モデルの「Raspberry Pi 3 Model B+」以外は、全てマイクロSDカードにOSを入れるので、マイクロSDカードは必須となる。特に産業用であれば値段以上に重要になるのはその容量と機能だ。

ホビーユーズで売れ筋の64GB以上のスペックを満たす最新製品を、実際のラズパイ上で「動かしてみた」。評価実験にご協力いただいたのはTechShare社のオープンソースハードウェア事業部 技術マネージャー、大坪基秀氏。以下、氏の実施した報告書(2018年7月5日)からの抜粋となる。

評価対象:

最新製品のMicron社製128GBと256GBのマイクロSDカード(比較対象として一般的なマイクロSDカード)

使用したボード:

1. Raspberry Pi 3 Model B
2. Raspberry Pi 3 Model B+
3. ASUS Tinker Board (128GB, 256GBのみ評価)

評価結果1)共通(非依存)

  • ボード非依存

(※)Ref.16GBは一般的な民生品のmicroSDカード。

評価結果2)Raspberry Pi 3 Model B

  • Raspberry Pi 3 Model B

以下、OS起動時間はuSDカードにOSイメージを初期状態で書き込み、全領域にファイルシステムを構築することにかかった時間:uSDカードのサイズが大きいほど、ファイルシステムを構築する時間が掛かる。

評価結果3) Raspberry Pi 3 Model B+

  • Raspberry Pi 3 Model B+

(※)Micron 128GBとMicron 256GBいずれも、ラズパイのモデルの違いにほとんど影響されていない。

評価結果4) TinkerBoard

  • TinkerBoard

(※)書き込み速度においては、Ref.のカードがUHS3で書き込みできるモードを持っている為、速い速度が出たと考えられる。

このように、例え同じボードを使用していたとしても、マイクロSDの容量と機能により、ボード上で発揮されるパフォーマンスには大きな違いがあることがわかる。IoTにおいては産業用マイクロSDの選択が「Raspberry Pi」や「TinkerBoard」の価値を高めるといってよいだろう。

【参考】TechShare社ウェブサイト

https://www.physical-computing.jp/

https://www.physical-computing.jp/product/1514

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提供:【アヴネット株式会社】
アリゾナ州フェニックスに本社を構えるAvnetの日本法人で、半導体・組込み分野に強みを持つ技術商社。日本の本社は東京・恵比寿にあり、八王子のテクニカルセンターや大阪、名古屋、京都、松本、上田、福岡と国内8拠点で広くビジネスを展開している。グローバルのビジネス拠点は125拠点。

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