毎月IoTに関連する注目ワードを紹介する『3分でわかるIoT関連用語集』。2019年の第1回目となる今回は、「デジタルツイン」と「AI医療」のふたつの用語を解説する。
いずれも米国が先行しており、まだ日本の市場ではあまり馴染みのないトピックであるため、引用先は英文のものが多くなっているが、このあと紹介する事例など、これから"くる"トレンドとして予習的にお読みいただきたい。
デジタルツイン
「デジタルツイン」という概念が初めて世に出たのは2002年、マイケル・グリーヴス博士が製品ライフサイクルマネジメント(PLM)の考え方を説明する際に用いられた「現実世界のものを仮想空間にミラーリングさせる」という考え方だった。その後これが「デジタルツイン」と名付けられ、製造業のより広い範囲に汎用性をもって適用されるようになった。この考えが再び脚光を浴びるようになったのは、アメリカの技術系リサーチ会社のガートナー社が発表した、2018年に企業戦略上で重要性を持つテクノロジートレンドのトップ10のひとつに選ばれたのがきっかけだ。
参考:アヴネットシリカ IoTビジネスマガジンより(英文)
「デジタルツイン」とはどんな考え方か。一言でいえば、「物理世界に存在する現状を、アクセス可能なデジタル上にリアルタイムに表現する」という考え方だ。これがデータの入り口部分で、IoT機器と紐づけられる。
たとえば製造業では、開発製品や部品のテストには膨大な時間がかかるのが一般で、従来はCAE(Computer Aided Engineering)というバーチャル環境でテストが行なわれてきたが、これを一層進化させたものが「デジタルツイン」であるといえる。固定されたバーチャル環境でのテストではなく、開発の対象となる製品にセンサーを取り付け、実際の環境下での生データを習得してAIで解析し、それを利用することで、より現実に近い環境下でのシミュレーションが可能になる。さらにはこれを複数組み合わせることで、より広範な分析・利用も可能だ。例えば製油所でコンプレッサ、コンプレッサのモニター、プラント全体にそれを展開し、センサーのデータを比較すれば、たやすくプラントごとの成績を比較することができる。
ガートナーによれば「企業はまずはシンプルにデジタルツインを導入し、時間をかけて自社にとっての適正なデータを収集し、可視化して、正しい分析とルール化でビジネスへとつなげてゆくことになるだろう」ということだ。これはまさにIoT導入時のビッグデータに関する議論とオーバーラップする。
AI医療
AI技術の医療における利活用。
最近は
1) 医者が過去あるいは現存する医療データを治療に利用するだけではなく、
2) 患者の病理データをAIで分析し、直接実際の治療に利用する
という試みが行われ、話題になっている。
1)の例:ツメセンサーとAIで健康と病気の進行チェック
Fingernail Sensors and AI Can Help Clinicians to Monitor Health and Disease Progression(英文)
2)の例:ツメセンサーとAIで健康と病気の進行チェック
How a watch helped Emma write again(英文)
※パーキンソン病の患者の手の震えのパターンをAIで学習させ、それを相殺する振動を与える時計型のデバイスをマイクロソフト社が開発したという記事
ちなみに最後のMSの記事にあるような試みを実施している団体はほかにもある。アメリカの団体、Not Impossible Labは、パーキンソン病の手の震えを打ち消すデバイスはもちろん、耳の聞こえない人に光と振動で音楽を「感じる」ことができるベストを作り、健常者とともにコンサートに招待するなどの試みを行っている。
参考:Not Impossible Labの関連記事(英文)
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提供:【アヴネット株式会社】
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