企業理念に則した方針でグループウェアを選定

回転すしの「スシロー」をはじめ、持ち帰り鮨の「京樽」や「回転寿司みさき」、大衆寿司居酒屋「杉玉」など、グループで複数の飲食ブランドを国内外に展開するFOOD & LIFE COMPANIES(以下、F&LC)。2025年2月にマレーシアへの初出店となる「スシロースリアKLCC店」をオープン。グループとしては、日本を含む世界10カ国・地域目となる進出を果たし、海外の店舗数は200を突破した。そんなF&LCでは、2012年から国内外の社員が日々利用するグループウェアとしてGoogle Workspaceを活用しており、13年近い月日を経て、グループ内に広く浸透している。そのGoogle Workspaceの活用状況について、F&LCの情報システム部長である坂口氏に話をうかがった。

  • 写真:株式会社FOOD & LIFE COMPANIES 情報システム部長 坂口 豊氏の顔写真

    株式会社FOOD & LIFE COMPANIES 情報システム部長 坂口 豊氏

社内のコミュニケーション環境を高度化するため、Google Workspaceの導入を決定したのは2012年7月のこと。そして、わずか3カ月後の10月には全社で展開した。なお、坂口氏は当時、現在のグループになる以前の「株式会社あきんどスシロー」単体の情報システム部門で一担当者として導入に携わっていたという。

「2012年当時は、内部統制強化に向けた動きが活発化している状況でした。稟議書などが紙で扱われていたので、『ガバナンスの観点から電子化していこう』とトップダウンで要請され、それに応えるために必要な機能を検討しました。ワークフローをスムーズに運用するには、承認申請を漏れなく伝える通知機能が重要となります。しかし、当時は社内向けにイントラネット、社外向けにEメールという2つの仕組みがあり、本社の人間は両方をチェックしなければなりませんでした。そのため、利便性向上が求められ、社内外のコミュニケーションを統合的に運用できるグループウェアの導入を検討することになりました」(坂口氏)

世の中にはさまざまなグループウェア製品が存在する。国内外のいくつかの製品を比較検討したところ、目に留まったのが当時のGoogle Apps、現在のGoogle Workspaceだったと語り、選定のポイントはコストパフォーマンスの高さだったと振り返る。

このコストパフォーマンスは、単に安さを追い求めたものではなく、企業理念に則ったものだという。当時も現在も、「スシローの使命」は「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」。この使命に照らし、顧客の満足と利益に寄与するため、システムも可能な限り少ない投資で最大限のパフォーマンスを得るという視点で選定するのが、現在のF&LCグループにおいても、ICT活用方針の柱にあると解説する。なお、F&LCとなった現在は、新たなVISION「変えよう、毎日の美味しさを。広めよう、世界に喜びを。」も加わり、より幅広い視野で取り組んでいる。

扱いやすさ、高セキュリティ、運用しやすさが選定要素に

コスト重視といっても、その観点だけでGoogle Workspace導入を決断したわけではない。それ以外で大きな要素となったのは、Googleのアプリケーション自体がそもそも多くの社員に浸透していたこと。当時すでにGmailやGoogle カレンダーをプライベートで使っている社員が多く、「Google Workspaceなら扱いやすいだろう」と判断したことも理由のひとつだったという。ほかにも以下の点が選定要件としてあげられた。

「店舗では1台の共有PCを店長と副店長、一般社員が共用しているため、通常のメーラーでは他の人のメールを見ることができてしまいますし、別店舗への異動時もローカルに残したデータを見られてしまう可能性があります。その点では、やはりGoogleのクラウドツールのほうが当社の環境に合っていました」(坂口氏)

また、当時は社外にいる社員がイントラネットにアクセスする際、わざわざノートPCからVPNに接続しなければならなかったが、Google Workspaceのクラウドならではの利点として、デバイスを選ばずアクセスでき、業務負荷を軽減できることもメリットだったようだ。

運用の観点でも、クラウド型サービスにアドバンテージがあった。いわゆる“IT人材不足”は、同社でも直面していた課題であり、オンプレミスのシステムでは保守運用に限界を感じていた。とはいえ、外部に委託すれば必要以上のコストがかかってしまうため、前述の企業理念に基づくICT活用方針から外れてしまう。Google Workspaceであれば、言うまでもなくそうした心配もなく、Webアプリケーションの開発やホスティングするためのサーバーレスプラットフォームであるGoogle App Engineを利用すれば、大きな追加コストを必要とせず、さまざまなことが可能になる点も魅力に感じたという。

サテライトオフィスのアドオン導入・運用は「ほぼ苦労なし」

導入を決定した2012年7月に、まず情シス部門で先行的に使い始めて、その後は9月に本社、10月には全店舗への導入を果たしている。この時点で全社でのアカウント数はおよそ1200。その展開において苦労したことを尋ねると、「実は、苦労はほぼしていません」と坂口氏は回顧する。

「導入前に2カ月ほど、既存のメールシステムだけでなくGmailにも同じメールを転送していたため、いざ切り替えたときも過去のメールが見られなくなってしまうということはありませんでした。多くの社員がGoogleのアプリには慣れていましたし、使ったことがない社員向けにはマニュアルを配布しましたが、ヘルプデスクへの問い合わせはかなり少なかったですね」(坂口氏)

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社外からのアクセスについては、Google Workspaceに合わせて外出の多い社員の携帯電話をAndroidスマートフォンに切り替えた。これにより手軽にアクセスできるようになり、業務は大幅に効率化。PCからのアクセスについてもスマホのテザリングに切り替え、コストが下がったという。

ただし、スマホはやはり紛失のリスクがある。そこでサテライトオフィスが提供するアドオン「サテライトオフィス・シングルサインオン for Google Workspace」を導入し、アカウントごとに端末やネットワークを細かく制御することでセキュリティを担保するようにした。また、会社からの要請であったワークフロー機能についても「サテライトオフィス・ワークフロー for Google Workspace」を採用して業務がよりスムーズになった。Gmailで確認できるため、外出先でもスマホから承認に関する処理を行えて利用者からも評価が高いようだ。

サテライトオフィス提供のアドオンはこれ以外に、組織情報をツリー形式で表示できる「サテライトオフィス・組織アドレス帳 for Google Workspace」や、スケジュールや会議室の使用状況を一覧表示する「サテライトオフィス・組織カレンダー for Google Workspace」、高度なドキュメント管理が可能でワークフローを内蔵する「サテライトオフィス・ドキュメント管理 for Google Workspace」、社内ポータルサイト機能である「サテライトオフィス・ポータルサイト for Google Workspace」も順次導入し、現在に至っている。このうちドキュメント管理については、ユーザー部門から契約書等管理の要望を受けて導入したというが、今は顧客からの声の共有にも活用中。ワークフローにより、共有漏れを防ぐのに役立っている。

アカウントが大幅に増えた現在の成果、今後への期待

初年度に1200だったアカウントは、この13年近くで6000超にまで拡大。長い時間を経て、Google WorkspaceはF&LCのコミュニケーションツールとして欠かせない存在になっている。

「Google カレンダーでは上司の予定が見られるようになり、『スケジュール調整が容易になった』『Gmailの翻訳機能が海外担当者とのやり取りで便利』というような声がありますね」と坂口氏。Google フォームで社内向けアンケートの作成と回答収集・分析が手軽に行えるため、店舗ごとの在庫食材確認や社員意識調査などで利便性が増したとの評価もある。

先のコロナ禍でもっとも力を発揮したのは、Google Meetである。「Google Meetがあったおかげで、コロナ禍においても何ひとつ困ることなくオンライン会議ができましたし、その後も国内外問わずコミュニケーションで積極的に活用されています」と語る。

Google ドライブは、社内向けに食材へのこだわりや生産者の思いなどを伝える教育動画を蓄積・共有するのに用いられ、Google スプレッドシートは売上報告や共同編集など使われている。また、Google サイトは店舗ポータルやスタッフ向けの説明サイトで広く使われているとのこと。そのほか、情報漏洩対策として文書ファイルのやり取りをメールからGoogle ドライブに置き換えたケースもある。

「基本的に、使い方については情シスからは何も発していません。社員の裁量に任せています」と坂口氏。個人としては、2025年にGoogle Workspaceユーザーは無償利用できるようになったAI機能であるGeminiをさまざまな業務で活用するようになったようで、「調べものの多くをGeminiに尋ねていますし、簡単なコード作成も試行しています」と笑顔で話す。

最後に坂口氏は「今後は生成AIをビジネスで使うケースがより増えていくでしょう。Google WorkspaceでGeminiをどのように活用できるようになるのか、ワクワクしながら期待しています」と語り、これからGoogle Workspaceの導入を検討する組織に対しても、「AIの本格活用に向けた手始めとして、Google WorkspaceとGeminiでできることをいろいろ試してみるのもいいのではないでしょうか」とアドバイスを送った。

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