プリント基板の総合メーカーであるキョウデンは、同社の強みである「短納期 × 高品質」をさらに追求するため2020年ごろからDX推進の取り組みを開始した。

しかし、M&Aで成長してきた背景からグループ内における文書管理などの仕組みが複雑化しており、その運用管理の負担はDXの推進を妨げる恐れがあった。そこで老朽化したワークフローシステムのリプレイスをきっかけに、新しい文書管理システムの導入、プロセスの標準化、システムの一元管理を目指したのである。

同社がこの取り組みをはじめてから運用開始まではわずか3ヵ月だったという。短期導入を実現し、DX推進に向けた情報共有やデータ活用のための基盤を築いた同社の取り組みとは、具体的にどのようなものだったのだろうか。

    ■キョウデン

    DX事業本部本部長 松原玄氏
    情報システム部 システム開発課 係長 林 旺晃氏
    情報システム部 システム開発課 西 徹氏
    情報システム部 システム開発課 大内 茉央氏

    ■CTCシステムマネジメント

    ソリューション営業課 鳥山瑠音氏

    AgileWorks担当
    ソリューション推進部 第1課 主任 中山 巳芳氏
    アプリケーション開発部 第3課 根来 航己氏

    invoiceAgent担当
    ソリューション推進部 第4課 清水 雄介氏
    ソリューション推進部 第4課 西山 和秀氏

DX推進に向けて、業務プロセスの標準化や情報の一元管理を目指す

 プリント基板を主軸に、電子機器の企画開発から設計・調達・製造・実装・組立までを一貫して自社工場で行う完全内製型EMSメーカーのキョウデン。社名の由来である「今日から電器屋」を出発点に、国内5工場・11営業拠点、タイ・中国の海外拠点でビジネスを展開する。事業の強みは、完全内製型ソリューションを、最先端の技術開発力のもと、業界最速レベルの短納期で提供することにある。

 そんなキョウデンが2020年頃から継続的に取り組んでいるのが、デジタルを活用して業務と企業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。DX事業本部 本部長の松原玄氏は、DX推進の背景と課題について、こう話す。

  • 松原氏お写真

    松原 玄 氏

「弊社の強みである『短納期 × 高品質』をさらに追求していくためには、業務の改革や各種法令への対応、新しい取り組みに向けたデータ活用が重要でした。当時、社内には、さまざまな文書やデータ、システムが混在し、複雑化していました。DXに向けて、ペーパーレス化の実現や情報の一元管理、業務プロセスの標準化が求められていました」(松原氏)

 キョウデンでは生産システムなどの基幹系システムを自社でフルスクラッチ開発している。バックオフィス系システムはパッケージソフトを利用しつつ、自社の業務にあわせてカスタマイズして活用するカルチャーがあった。情報システム部の林 旺晃氏は次のように語る。

  • 林氏お写真

    林 旺晃 氏

「こうした内製開発文化は、運用管理の負担が大きくなりやすいという弊害もあります。実際、申請や承認、それに伴う文書管理の仕組みが複雑化していたことは大きな課題でした。そこで老朽化したワークフローシステムのリプレイスをきっかけに、新しいパッケージの導入と複雑化したプロセスの標準化、システムの一元管理を目指したのです」(林氏)  そんななか採用したのがCTCシステムマネジメント(以下、CTCS)が提供するソリューション「AgileWorks(アジャイルワークス)/invoiceAgent(インボイスエージェント)連携支援サービス」だった。

アドオン開発への対応に加え、他システムとの連携性の高さも採用のポイント

 ソリューション採用のポイントについて、キョウデン情報システム部の西 徹氏はこう話す。

  • 西氏お写真

    西 徹 氏

「2021年夏頃に情報収集をはじめ、さまざまな選択肢のなかから、ワークフローシステムとしてエイトレッド社のAgileWorksを選定しました。柔軟なアドオン開発が可能で、ウイングアーク1st社が提供する文書管理システムのinvoiceAgentと密接に連携させることが選定のポイントとなりました。これにより、既存の業務プロセスに対応しつつ、ワークフローと情報共有を1つのプラットフォームで効率良く管理することができます。CTCSさんが提案してくれたこの連携ソリューションは、まさに私たちのニーズにぴたりと合うソリューションでした」(西氏)

 営業担当としてソリューション提案を行なったCTCSの鳥山瑠音氏はこう振り返る。

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    鳥山 瑠音 氏

「DXを加速させていきたいというビジネスニーズと、業務やシステム管理を効率化したいというシステムニーズの両方を満たすことが求められました。弊社が取り扱うさまざまなソリューションのなかから最適な組み合わせをご提案し、どのような課題をどう解決していくかを担当者同士で議論し、キョウデン様に適したシステムを一緒に作り上げていくことを目指しました」(鳥山氏)

 ワークフローシステムに対するニーズとしては、複雑化した申請や承認の仕組みの見直し、新しいプロセスとワークフローの構築、開発・テスト環境の整備、年度初めのシステム対応負荷の軽減、役職別アクセス権の設定などがあった。また、文書管理システムに対するニーズとしては、2024年1月から電帳法対応、ペーパーレス化、PDF帳票などの一元管理、データ活用のための情報共有基盤の構築などがあった。

 松原氏は、これらを一体的に取り組むことが重要だったと指摘する。 「申請や承認に時間がかかり業務が滞ってしまうことが課題でした。組織変更にともなうシステム対応も大きな負担で、年度初めなどは、業務時間外での設定変更対応やシステムを数時間停止していました。ワークフローと文書管理を一体的に取り組むことで、業務を効率化、標準化しながら、情報共有を促進させ、データに基づく意思決定を実現していく狙いがありました」(松原氏)

ふたつのソリューションを段階的に導入し適切なタイミングで連携

 ソリューションの導入にあたっては、AgileWorksとinvoiceAgentをそれぞれ段階的に導入し、適切なタイミングで両製品を連携させていくというアプローチを採用した。CTCS側でAgileWorksを担当したのは、ソリューション推進部の中山巳芳氏、根来航己氏だ。

  • 中山氏、根来氏お写真

    (左)中山 巳芳 氏、(右)根来 航己 氏

「AgileWorksは、組織改編や業務変更に強いワークフローシステムです。フロー設計やフォーム設計、ステージングによる検証機能など豊富な機能を標準で提供します。また、優れた拡張性を持ち、Web APIやアドオンプログラムで自動起票やデータ処理なども可能です。アドオン開発での拡張も選択肢にあるなか、今回は、できるだけ標準機能で対応するというアプローチを採用したことが取り組みのポイントです。これにより開発コストを抑えながら、スピーディーな導入を実現しました」(中山氏)

「AgileWorksは国産ソフトウェアで日本の商習慣に対応しやすいことが魅力です。CTCグループでもファーストユーザーとして活用しているため、構築や運用のノウハウがあります。また、運用を見据えて業務プロセスを見直すことで、今後、省力化や自動化の効果がさらに高まっていきます」(根来氏)

 また、invoiceAgentについては、CTCS ソリューション推進部の清水雄介氏と西山和秀氏が担当した。

  • 清水氏、西山氏お写真

    (左)西山 和秀 氏、(右)清水 雄介 氏

「invoiceAgentは、さまざまな帳票の仕分けから、保管、検索、他システムとの連携などに対応した文書管理ソリューションです。PDFやオフィス文書を自動仕分け、保管し、invoiceAgent上にて閲覧が可能です。電帳法への対応期限もあったため、優先して取り組みました」(清水氏)

「はじめに帳票の作成から管理までの流れを詳細にヒアリングし、課題を共有した後、最初に取り組むべき文書や帳票を選定し、設定、テストを行いました。ひな形となる帳票データやテンプレートを提供しながら、内製開発ができるよう支援し、取り組みスタートから、システム稼働まで約3ヵ月で取り組みました」(西山氏)

更なるDXに向けて情報共有やデータ活用のための基盤として活用していく

 invoiceAgentによる文書管理は2024年1月から稼働。紙やPDF、オフィス文書などが作成されると、一定のルールのもと自動仕訳され、必要に応じて検索・閲覧できる状態で保存されるようになった。

 キョウデン 情報システム部 大内 茉央氏は、CTCSからの手厚いサポートが役立ったと振り返る。

  • 大内氏お写真

    大内 茉央 氏

「全社的に取り扱っている紙文書は月に5000枚から1万枚で、注文書は月2万枚を超えます。何をどこから電子化していくべきかわからないなかで適切なアドバイスをいただき、優先順位をつけて取り組むことができました。また、データ化されたファイルはファイル名が管理番号になっているため、そのまま移行すると、検索しにくくなる懸念もありました。CTCSさんには、わかりやすいファイル名を自動生成するinvoiceAgentの機能の活用など、豊富な製品知識とノウハウのもと的確なアドバイスをいただきました」(大内氏)

 AgileWorksの稼働は、営業部でスタートしたところだ。複雑化した業務プロセスが見直され、申請から承認までのスピードが大幅に改善した。文書管理システムとも連携しているため、AgileWorks内で文書を添付した場合には、文書がinvoiceAgentに保存される。キョウデンの林氏は次のように効果とメリットを話す。

「さまざまな業務改善のアイデアをワークフローシステムに投稿するといった新しいカルチャーも生まれています。対応する帳票の数や種類もこれから増えていきますし、新しいワークフローを内製で作ることもできるので、業務のニーズにあわせて、素早いシステム対応も可能です。これも、導入だけでなく導入後のシステムの安定化まで伴走型でサポートいただけるCTCSさんのおかげだと思っています」(林氏)

 今後はシステムの対象業務と文書を増やし、情報共有やデータ活用のための基盤として活用していく方針だ。最後に松原氏は、次のように展望を語った。 「内製化が基本ですが私たちはシステムのプロではありませんし適切なアドバイスを得られるパートナーは貴重です。その力を借りながらビジネスを成長させ、アドバイスをいただけるようなサイクルを回していきたい。CTCSさんとともに、DXを加速させていきます」(松原氏)

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