2024年10月26日、インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズの発売を記念した「インテル新CPU発売記念イベント」が秋葉原のLIFORK AKIHABARA IIで開催され、多くのユーザーが集まるなど盛り上がりを見せた。会場にはインテル® Core™ Ultra 200Sシリーズの関連製品が多数展示されたほか、PCパーツメーカーによるトークセッションも実施。

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本稿では、インテル IA技術本部部長・太田仁彦氏、ASRock Japan・原口有司氏、ASUS JAPAN・市川彰吾氏、日本ギガバイト・川村直裕氏、エムエスアイコンピュータージャパン・中島悠太氏、マイクロンジャパン・宮本貴通氏が登壇したインテルセッションの模様をレポートする。

インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズの強みとは?

インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズは開発コードネーム「Arrow Lake」と呼ばれるインテルのデスクトップ向け新プロセッサーだ。太田氏によると、開発のポイントはふたつ。まず、昨今のデスクトップPCの性能向上とともに課題視されていた電力消費を大きく抑えること。そして、それでいながらユーザー体験を犠牲にしないことである。

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具体的には前世代と比較して、Eコアは32%、Pコアは9%もIPCが向上しており、かつ電力効率は最大40%のパッケージパワー削減を実現している。「これは我々プロセッサー屋からしてもすごいこと。これからEコアは我々の製品の中でも活躍してくのでは」と太田氏は自信をのぞかせる。

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さらに内蔵グラフィックについても、「多くの製品がディスクリートGPUを搭載すると思うが、それだけに頼ることなく弊社でも培ってきた内蔵グラフィックスのエンジンを順当に進化させていく」と意欲を示した。

太田氏が「Arrow Lakeの大きな転換点のひとつ」と語るのがAI機能の強化だ。インテルはすでにノートPC向けに、AI処理に特化したNPUを搭載する「インテル® Core™ Ultra プロセッサーシリーズ(Meteor Lake)」を発表しているが、デスクトップ向けとして初めて同セグメントをもたらしたのがArrow Lakeとなる。

同製品の大きなポイントとなるのがGPUとCPUの間に組み込まれた「NPU」。応答性の速さはCPU、スループットが必要なところはGPUが担い、AIの処理にNPUを活用するという住み分けは、ノートPC向けのMeteor Lakeと変わっていない。

イベントでは実際にインテル® Core™ Ultra 200Sシリーズの実物のサンプルを提示しながら、その性能について掘り下げた話が行われた。

  • インテル株式会社 IA技術本部 部長 太田仁彦 氏

    インテル株式会社 IA技術本部 部長 太田仁彦 氏

太田氏が「注目してほしい」と語るのが、コア数とトータルのスレッド数である。スレッド数については、実は前作よりも減らしているとのことで、「それでも性能は現状維持、もしくは向上しています。消費電力効率も非常に高く、従来の全製品に比べてほぼ同等のパフォーマンスを約半分の電力で回すことができます」という。

こうした恩恵を最も受けるのがゲームだろう。Arrow Lakeでは前作「Raptor Lake-R」と同じフレームレートを維持しながら、最大165Wもシステム電力を低減できる。また、すべての電力帯において前作と同等のパフォーマンスを半分の電力で実現しており、よりクールでより静かなゲーム環境を整えられるのだ。

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クリエイティブな作業やAIでも力を発揮

次に太田氏が語ったのが「制作とAI」について。クリエイティブな制作に使用されるアプリケーションのワークロードを並べてみると、競合製品と比較してもArrow Lakeの高い性能がうかがえる。これを踏まえて、太田氏は「コンテンツクリエイターの皆さんに対しても、Arrow Lakeは性能向上を果たすプラットフォームになっていく」とアピールした。

そしてAIだ。この日、太田氏が紹介したのが「Cephable」。カメラやマイクを使用してデバイスを操作できるソフトである。

NPUを搭載したArrow Lakeであれば、このCephableを動作させるのにCPUやGPUを使用する必要がない。そのためCPUはゲームそのものの実行、GPUはレンダリングといった用途に活用でき、ゲームプレイに関する負荷を下げて快適に遊べるというわけだ。

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「ゲーミングのワークロードにおけるターニングポイントになると考えています。例えばゲームの配信をしながら、カメラで自分の映像を撮って追加のAI処理を施すなど、いろいろな例が今後出てくるでしょう。それらのワークロードをすべてNPUに任せることで、CPUとGPUのリソースを無駄にすることなく、使用率の効率化が図れるのです」(太田氏)

さらにエンスージアスト向けの最先端プラットフォームとして太田氏が紹介するのが800シリーズチップセット。最大の目玉はThunderbolt 5が外付けながらサポートされたこと。最大120Gbpsの転送が可能で、「劇的にユーザーエクスペリエンスが変わる」と太田氏は話す。また、内蔵でもThunderbolt 4に対応している。

オーバークロックの見直しも進めた。Pコア・Eコアともに最大ターボ周波数を16.6MHz単位で設定可能とし、メモリについては今回からDDR5に変更するなど、インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズはエンスージアスト向けとしても完成されたソリューションになっているのだ。

“めちゃくちゃ遊べる”ASRockのマザーボード

続いてASRock JAPANの原口氏が登壇。インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズに対応したマザーボード「Z890 NOVA WIFI」を紹介した。同製品は高付加ゲームの安定性を支える20+1+2+1の電源回路を有している。ポイントになるのは、コンデンサを品質向上。同じサイズ感にもかかわらず、ひとつあたりのコンデンサの容量を560μFから1000μFに上げたのだという。

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「ぜひ見ていただきたいのですが、うちの製品は明らかにコンデンサ数が少ない。ただ、1個あたりの容量が大きいのでちゃんと満たしているんです。ゲーム用とかオーバークロックでめちゃくちゃ遊べます」(原口氏)

本製本の唯一の弱点としてはコストが高いこと。ただ、サイズをそのままにコンデンサの容量を倍にしているわけだから、コストが跳ね上がるのは当然。その点についても「ASRock JAPANとしてはがんばっている」と原口氏は自信を口にする。

また、マザーボード上にSSDを6枚まで搭載できる拡張性も見逃せない。原口氏によると、「そんなに必要? と言われるが、ゲームの容量はこの5年で10倍に増えている。5年後にSSDを買い足してもどんどん挿せるようにした」という。

  • ASRock Japan 原口有司氏

    ASRock Japan 原口有司氏

その他、異なるUSBコントローラを使用することで超高速かつ低レイテンシーな接続を実現するLightningゲーミングポートや、+12Vレールから5Vの電力を変換し、安定したノイズのない電力を供給するUltra USB Powerなど、強化されたUSB機能などもポイントとして語られた。

「あったらいいな」を搭載したASUS

続いてASUS JAPANの市川氏が登壇した。ASUSは10月24日にマザーボード11製品を発売したばかり。さらに3種類のマザーボードが近日中に発売を予定している。

今回紹介があったのは「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」。インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズ対応はもちろん、Thunderbolt 4にPD3.0 30W対応と、市川氏曰く「あったらいいな」を搭載したモデルとのこと。さらに「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」については、「白い色を希望する声が多かった」とのことで、ユーザーの声を反映して白バージョンを開発したという。

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性能面も妥協はない。パワーレールに過負荷をかけることなく、最大7台のM.2 SSDを同時に使用可能。電力供給が安定しているため、パフォーマンスを向上させるだけでなくM.2 SSDの寿命を延ばす効果も期待できるとのことだ。

また、新たに「BIOS Q-DASHBOARD」を搭載。従来、マザーボードには「何を挿したかわからなくなる」という課題があったが、このダッシュボードによりどこに何があるのかがグラフィカルに確認できるようになった。クリックすると該当の設定項目にジャンプできるなど使い勝手も良好だ。

「性能が良くなるわけではないですが、長く使っていく上でPCのメンテナンスがしやすくなったり、コネクタがどの端子かわかりやすくなったりします」(市川氏)

  • ASUS JAPAN 市川彰吾氏

    ASUS JAPAN 市川彰吾氏

AIを生かしたオーバークロックを実現した日本ギガバイト

続いて日本ギガバイトの川村氏が登壇した。同社の製品は「ATX6型番」、「MicroATX2型番」、「Mini-ITX1型番」の3種類。カラーリングは黒と白があり、スロットやコネクタも含めて色が統一されている。

性能面ではコア・テクノロジーにD5 Bionic Corsaを採用し、DDR5メモリを9500+ MT/sまで向上できる。また、「容易にDIY」というコンセプトでWIFI EZプラグやPCle EZ Latch+、センサーパネルリンクを搭載。その他、Thunderbolt 4やUltra Durable™なども備えている。

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今回注目なのはD5 Bionic Corsa。川村氏曰く、「AIに補助させていろいろ設定を調整する“AIオーバークロッキング”」とのことで、前もって設定をAIに学習させ、パーツに合わせて最適化できるという。例えばマザーボード上の信号を評価し、配線のルーティングなど基盤の配線設計を行うAI設計補助が可能となっている。

AI駆動による高度なBIOS最適化も実現している。BIOSの初期化の段階でメモリモジュールに合わせた設定をAIに学習させ、それに合わせて調整を行う機能だ。

ソフトウェアとしては日本ギガバイトで統一した「AORUS AI SNATCH」を提供する。AIの力によりワンプッシュでオーバークロックを体現できるソフトだ。オーバークロック性能が最大20%向上し、性能と安定性のバランスが向上。取り扱いが容易で、かつ専門家と同等の結果を得られるメリットがあるという。

  • 日本ギガバイト 川村直裕氏

    日本ギガバイト 川村直裕氏

最高水準のWi-Fi7を搭載したMSI

続いてエムエスアイコンピュータージャパンの中島氏が登壇。「INTEL Z890シリーズ マザーボード」シリーズ全般の特徴について紹介した。

まず「ULTRA CONNECT」だ。これはThunderbolt 4などのインターフェース関係をまとめた呼称。製品にULTRA CONNECTのロゴがついていれば、インターフェースについては高機能が保証されているわけだ。

注目したいのが「EZ M.2 CLIP II」や「EZ M.2 SHIELD FROZR II」、「EZ ANTENNA」、「EZ PCIE RELEASE」など。これらは組み立てが便利になる機能だという。

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中島氏からはそれぞれについてより深い説明が行われた。

まずは有線LAN。5G LAN、あるいは10G LANが搭載されており、どのマザーボードを選んでも超高速の通信が可能になっている。「自宅の回線を見直したという方の要望に応えられる」と中島氏は胸を張る。

  • エムエスアイコンピュータージャパン 中島悠太氏

    エムエスアイコンピュータージャパン 中島悠太氏

また、Wi-Fi7については、すべてのMSI Z890マザーボードが最高水準のWi-Fi7規格を採用している。実はWi-Fi7といっても性能差があり、他社製品だとWi-Fi6の160MHz程度であることも少なくない。一方、MSIではしっかりとWi-Fi7 320MHz帯を採用しているのだ。

さらに、EZ M.2 InstallationによりM.2の取り付けが簡単にできるようになったほか、EZ PCIe Releaseを使用することでグラフィックスカードの取り付け・取り外しも容易に行えるようになるなど、よりユーザーフレンドリーな仕様が実現できたという。

マイクロンジャパンのコンシューマ向けDRAMラインナップ

最後にマイクロンジャパンから宮本氏が登壇した。

同社はメモリ・モジュールとSSDを自社で設計から製造、販売まで行う米国唯一の企業だ。現在、メモリモジュールはDDR5 CUDIMMが登場しているが、なぜDDR5が必要なのか。

宮本氏はその理由について「メモリの帯域幅がCPUコアの成長に追いついていない」ことを挙げる。

「データ処理の需要が急激に増加しているにもかかわらず、DDR4がすでに限界値に達してボトルネックになってしまっているのです」(宮本氏)

  • マイクロンジャパン 宮本貴通氏

    マイクロンジャパン 宮本貴通氏

ユーザーはより複雑なアプリケーションと厳しいカスタマーエクスペリエンスを要求してくる。対応するためにはCPUのコア数を増加させるしかない。しかし、DDR4では次世代のCPUに対応するのは難しい。そこでDDR4の限界を打ち破るDDR5が登場したわけだ。

さらにAIが普及したことによる影響も無視できない。AIやMLアプリケーションはユニファイド・メモリ・アーキテクチャと共にPC上のDRAMの高速化およびシステムあたりのDRAMの大容量化を要求する。

そこでマイクロンジャパンが用意しているのが、コンシューマ向けとなるDRAMだ。例えばOCプロファイル対応 低レイテンシーゲーミングメモリCrucial DDR5 Proシリーズや、ヒートシンク搭載のCrucial Proシリーズ、次世代プラットフォーム用メモリとしてCrucial LPCAMM2などがラインナップされている。

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会場となったLIFORK AKIHABARA IIに多くのユーザーが詰めかけるなど盛り上がりを見せた本イベント。熱気に包まれたイベントの様子からは、インテル® Core™ Ultra 200Sシリーズの注目度の高さがうかがえた。

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