2024年8月22〜23日、東京・歌舞伎座タワーで開催された「TECH+ EXPO 2024 Summer for データ活用」で特化型AIに関する基調講演に登壇した株式会社スタディスト。「業務のコツを誰でも活用! 現場特化AIで現場の知見を共有し、生産性改革へ」と題した本講演は満席となり、参加者の満足度が9割と、盛況なセッションとなった。本記事ではその模様をお届けする。

  • (写真)講演の様子

    講演の様子。会場は満席となり、多くの聴衆からの関心が寄せられた

マニュアルとAI、実は世界的にも相性が良い領域

スタディストでは、無駄なく均整のとれた「リーンオペレーション」の実現を支援し、国内シェアトップを獲得(デロイトトーマツミック経済研究所「デスクレスSaaS市場の実態と展望 2024年度版」)したマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を提供している。そして2024年6月、「Teachme AI(ティーチミー・エーアイ)」という新機能をリリースした。この機能開発の責任者を務め、“AI Business Connector”という肩書どおりAIとビジネスの接続に取り組んでいるのが木本 俊光 氏だ。木本氏は、ビジネス現場におけるマニュアル運用の現状に照らし、いわゆる汎用型のAIではなく、マニュアル作成/管理を専門とする「特化型AI」に注目する意義から講演をスタートした。

まず提示したのは、少子高齢化による人手不足という社会背景だ。総務省のグラフを引き合いに出し、「日本の労働人口が4割減ることが確実視されています。言い換えれば、今まで10人でやっていた仕事を6人で行わなければならない、さらには10人以上の生産性を求められる時代が今後確実にやってきます」と語った。そのような中で、各社はDXやリスキリング、採用強化、制度見直しなどさまざまな形で生産性向上に取り組んでいると言う。同社は「Teachme Biz」の提供に加えて、2023年、複雑な操作を必要とせずAIのメリットを得られやすいマニュアル特化型AI「AIアシストプラス」のβ版をリリース。約1年の試行期間を経て、2024年6月27日に「Teachme AI」として正式版提供を開始した。同社の検証によると、AI活用によりマニュアル作成にかかる工数を9割以上削減するという。

木本氏は「生成AIは生産性向上に強く結び付く技術です。ある調査では、生成AIツールの使用で58%が少なくとも週に約5時間もの業務時間の削減ができていると回答しており、汎用型AIでも大きな効果が出ています。総務省の報告書を見ると、生成AIがマニュアルも含めた社内ヘルプデスク運用で高い効果が出るという数字が示されており、マニュアルは実は生成AIと非常に相性が良い領域だといえます」と強調した。

「AIを使うことで、まずはマニュアルの作成負担が軽減され、作業が楽になります。また、誰が作ってもわかりやすいマニュアルができるため、品質の担保・底上げにもつながります。そのほか、マニュアル作成時に不可欠である内容チェックの負担を減らせるなど、短期間で簡単に作成できることでマニュアルを作成・活用する範囲が拡大するという効果も期待できます」(木本氏)

一方で、チャット型のような汎用的な生成AIだけでは、マニュアル運用を効果的に進めるのは難しいと考え、これまでのTeachme Biz運営を通じて数千社を支援してきた知見を踏まえ、マニュアルに特化したAI機能の開発を始めたと明かした。

  • (写真)講演中の木本氏

    株式会社スタディスト Teachme Biz 事業本部 プロダクトマーケティングマネジメント室 室長 AI Business Connector 木本 俊光 氏──登壇の様子

動画マニュアルの作成時間を93%削減!

そのうえで木本氏は、同社がリリースしたマニュアル特化型AI「Teachme AI」の紹介に入った。大きく分けると動画マニュアルを作成するAIと、テキストのマニュアルを作成するAIが搭載されており、動画ではマニュアルの半自動生成、自動字幕、ステップ概要生成、テキストではドラフト生成、校正・要約といった機能が備えられている。木本氏は、製造業における部材の高速切断機の使い方を説明する動画マニュアルを表示し、解説した。

  • (図)マニュアル作成をサポートする5つの機能

「たとえば1分程度の作業を動画でマニュアル化する際、通常の作り方では多くの手間がかかります。まず元になる動画を撮影し、内容を理解するためにその動画を何度か見たうえでマニュアルに利用するシーンを選び、編集し、字幕や見出し・説明文などを入れ、さらに内容をチェックした後に調整するとなると、かなりの時間を要してしまいます。これをTeachme AIで行うと、元の動画ファイルを登録し、実行ボタンを押すだけでAIがすぐに働き出します。あとは再生時間よりやや短い間待つだけで、AIが動画から適切なシーンを選び、字幕や説明文なども入った半完成状態に作り上げてくれるので、確認と必要な編集・調整を行うだけで完成です。完成した動画は言語の切り替えも可能なため、外国籍の労働者でも母国語で手順を確認することができます。」(木本氏)

木本氏の実演を見ると、動画ファイル登録から2分もかからないうちにマニュアルが8割方完成していた。短い動画でも大きな工数削減効果があるわけで、これがより長尺の動画マニュアルになるとその効果は計り知れない。 とある小売店舗の作業事例ではシーン分割に42分、字幕編集に40分、テキスト入力に20分と計1時間42分かかっていたところ、「Teachme AI」ではわずか7分で終わり、作成時間はなんと93%削減されたという。

  • (図)作成時間93%削減

「これまでの動画マニュアルは、数分の作業動画でも数時間かけて作成・編集するのが当たり前でした。その作業が動画登録と実行ボタンクリックだけで7、8割出来上がり、あとはポイントや字幕・説明文だけ調整すれば完成するのです。これは、作成の速さはもちろん、AIが必要な下処理をしてくれるため、マニュアルのクオリティが安定する面でもお喜びいただいています」と木本氏は言う。例えば、現場のベテランが本来の業務で忙しくマニュアルを作る時間がない場合でも、ベテランが新人に現場で教えるシーンを動画に撮りさえすれば、マニュアル作成自体は新人に任せ、最後にベテランにチェックしてもらうといった効率的なフローも作り上げられる。

  • (図)従来の動画マニュアル作成との工程比較

マニュアルは「0から作る」から「調整する」時代へ

続いて、テキストマニュアルの作成についても解説が行われた。

「Teachme AI」でテキストマニュアル作成を始めると、まず「何のマニュアルを作りますか?」と入力項目が表示される。ここでマニュアルの概要(出張申請の方法、など)を入力し、続く「内容や表現の希望はありますか?」の項目で想定閲覧者(新入社員、など)、表現スタイル(簡潔に、など)、ステップ数などを入力すると、AIによる提案が表示される。木本氏によると、これらの入力項目はリリース当初は何も書かれていない真っ白な欄だったが、それでは適切な入力方法で迷う方がいると判明した。そこで、正式版では記入のヒントとなる内容がある程度入力されており、誰でも適切な入力をしやすい仕組みに改善したとのことだ。 ガイドに合わせて入力するだけで、AIが1分程度でマニュアル構成を提案するので、あとは適宜調整すればテキストのマニュアルが出来上がる。作成だけでなく、校正機能やわかりやすい日本語への書き換え機能も搭載されており、作る側にも見る側にもやさしく、品質的にも安定したマニュアルが簡単に完成するわけだ。

「人がやろうとするとゼロから構成を書き起こして作るのに対して、AIでは作業名と条件さえ入力すればわずか1分で整理されたマニュアルのたたき台が出てきます」と木本氏。「Teachme AI」を活用することで、人間はマニュアルをゼロから作るのではなく、AIが作ったものを調整するというスタイルに変わっていく。当然ながら作成にかかる工数は圧倒的に削減され、その分を他の業務に充てることも可能になるだろう。さらにマニュアルの作成速度が高くなることで、マニュアルを活用した教育や育成も効率的におこなうことができる。本講演で、人手不足時代に求められるAI活用術を垣間見ることができた。 もちろん、クオリティを担保しながらここまでの省力化を実現するマニュアル特化型AIの開発には、AI自体の知見と、業務に関する知見、そしてユーザーに関する知見が必須だ。木本氏は最後に、スタディストではこうした知見を組み合わせ自社で試行し、さらに250社以上の利用と検証も経ながらAI開発を続けてきたことを明らかにし、「生成AIは扱いが難しく、作業現場での導入が容易ではないと感じるかもしれませんが、特化型AIでお役に立てる余地は大いにあるはずです」と講演を締めくくった。

***

講演後、同社の展示ブースには多くの来場者が集まり、「Teachme Biz」と「Teachme AI」で実現するマニュアルDXの世界観について盛んに質問する様子が見られた。木本氏は講演と展示についてこう振り返った。

「AIの社内活用がなかなか広まらない、業務への適用が難しいとお悩みの方々に、実はAIは簡単に役立てられるということをお伝えしたいと思いました。実際にブースでは、マニュアル作成業務にAIが使えるイメージを持っていなかったという声が多く寄せられたため、新たなAIの業務活用方法をご紹介する良い機会となりました。AIを業務で上手く活かしていきたいと考えている企業様に向けて、ぜひ詳細をご説明できればと思いますので、お気軽にお問い合わせください」(木本氏)

  • (写真)ブースの様子1
  • (写真)ブースの様子2
  • (写真)ブースの様子3
  • ブースの様子。多くの来場者が立ち寄り、サービス説明や質疑応答が盛んに行われた。

関連リンク

[PR]提供:スタディスト