三菱電機といえば、幅広い分野で事業を展開する企業だ。グループの事業領域は社会インフラ、電力、防衛・宇宙、FA、自動車機器、さらにはビルシステム、空調・家電、情報システム、電子デバイスと実に9つに及び、まさに“家電から宇宙まで”多様な領域で最先端の技術と製品・サービスを提供している。

同社ではサステナビリティ実現を経営の根幹に位置付け、持続可能な社会づくりに向けて事業活動を行っている。そのうえで社会課題解決のアプローチとして掲げたのが「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」のコンセプトだ。顧客が同社のハードウェアやシステムを利用する中で得られたデータをデジタル空間に集約・分析して潜在的課題やニーズを把握。グループ内共創でその課題やニーズを起点に新たな価値を生み出し、顧客に還元することで、社会課題の解決に貢献しようというものである。

そして同社は、この循環型 デジタル・エンジニアリング企業への変革に取り組む中で生まれた注目の技術・ソリューションを、2024年10月15~18日に千葉・幕張メッセで開催される「CEATEC 2024」に出展する。

“循環型 デジタル・エンジニアリング企業”の強みを語る展示群

CEATECは2024年で25周年を迎える日本最大級のデジタルイノベーション総合展。三菱電機は今回、「誰も想像しなかった“巡り合い”から世界を変える」をテーマに展示を行う。

テーマの“巡り合い”に直結する、同社が5月に発表した「Serendie(セレンディ)」のコンセプトを来場者に体験してもらうプログラムや、デモ機を使った循環型 デジタル・エンジニアリングの具体的事例の展示などを用意している。Serendieは、偶然がもたらす価値を意味する“セレンディピティ”と“デジタル・エンジニアリング”を掛け合わせた名称で、異なる領域で集約されたデータの巡り合いから新たな価値を生み出すデジタル基盤のことである。

(写真)安達佳明氏

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所
システム構築技術部
地理情報通信技術グループ 安達 佳明 氏

注目すべきは、同社が、将来的にSerendieにつながるであろう最新ソリューションとして展示を行う、現実世界の全体をデータとして収集、活用していくデジタル技術「GeoCLOVERTM(ジオクローバー)」だ。同社 先端技術総合研究所の地理情報通信技術グループでGeoCLOVERTMの開発リーダー役を務める安達佳明氏が、まず技術の概要を解説する。 「現実空間内の位置と時間に紐づくデータを集めてバーチャル上に再現するデジタルツインを構築し、そこにAIをはじめとする先端デジタル技術を組み合わせることで、ビルや工場といった現実世界で起きている変化を検知・分析し活用につなげる技術です。空間内の人やモノの位置を蓄積・分析し、お客様や社会の課題解決に寄与する新たなソリューション創出に役立てる、というのが目指しているところです」

(写真)坂入威郎氏

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所
システム構築技術部
地理情報通信技術グループマネージャー
坂入 威郎 氏

安達氏の説明を聞くと、すぐさま循環型 デジタル・エンジニアリングの発想が浮かんでくる。「まさにその通りで」と、地理情報通信技術グループのマネージャーでGeoCLOVERTM開発の全体取りまとめを担う坂入威郎氏が補足する。 「各事業領域で得られる多彩なデータを集約して新たなサービス提供に活用するという、循環型 デジタル・エンジニアリングのコンセプトそのものの取り組みで、開発の狙いもそこにあります。社内のデータをGeoCLOVERTMでつなぎ、全社に展開しようというモチベーションで取り組んでいます」

空間全体のデータをアップデートする画期的デジタル技術

GeoCLOVERTM開発の背景を安達氏が解説する。
「いま、人手不足や地球温暖化・環境問題、災害激甚化など数多くの社会課題が叫ばれ、その解決にAIやIoTといったデジタル技術の活用が期待されています。というより、もはやデジタル技術なしでは解決できない状況です。その前提となるのがデータで、人の動きやモノの位置に注目したデータ収集はすでに始まっているのですが、データを集約して常にアップデートし、空間全体の情報として活用するための基盤はまだ整っていません」

人間ではなかなか気づけないささいな変化、例えばビル設備の日頃と異なる動きを検知し、そのデータを実際のトラブル対応なりサービス創出なりに活かしていけるというものだ。安達氏が続ける。
「いま世の中のデジタルツインは、空間のデータを一度整備するとなかなか更新されないというものが主流です。ただ、私たちが日々生活し、生産活動を行う中で、空間はどんどん変化していくものですから、その変化のデータを基に空間全体を更新していく作業が必要になってきます。それを実現するのがGeoCLOVERTMです」

ちなみに、名前のCLOVERは植物のクローバーのことだそうだ。

「データを集める収集の技術、集まったデータをまとめて現実世界同様の空間をバーチャルに描き出す統合の技術、統合したデータを時系列で更新し蓄え続ける管理の技術、最終的にそれらのデータを三菱電機が得意とする各事業領域に活かしていく活用の技術。GeoCLOVERTMはこの4つの技術がベースになっているため、四つ葉のクローバーになぞらえました。加えて、クローバーはどこにでも咲いている花なので、同じように身近な存在になってほしいとの思いも込めています。そこに、地理情報を扱うという意味でGeoを付けました」(坂入氏)

多彩なソリューションの可能性を秘め、実用化に向け成長中

このGeoCLOVERTMにより、具体的にどういったソリューションを提供でき、どのような価値を実現するのだろうか。これについても安達氏が語る。
「ひとことでは言えないほど多種多様な価値を訴求していきたいと考えています。例えば、快適性。人間にとって、あるいは環境にとって良い空間とは何か、工場の現場で従業員の安全性や生産効率を高めるために設備をどう配置すればいいのか……など、さまざまな気づきを見出し、そこから新しいソリューションを作り出すために活用できます」

開発がスタートしたのは、実は2024年4月と最近のこと。まだまだ成長中の技術だが、ここまでに苦労した点として、安達氏はデータ収集の難しさを挙げる。
「空間データをデジタル化すると、動いている現実とどうしても乖離していきます。そこをすべて人手で解決するのは手間の面でもコストの面でも困難ですので、ロボットや自動運転車、LiDAR機能付きスマートフォンなども活用しながらデータを収集するよう工夫を重ねています」

ちなみに、先端技術総合研究所は三菱電機のハードウェアからシステムまで幅広い技術の研究開発を担当する組織であり、常に最新技術に取り組むだけでなく、さらに先の技術にも素早くアプローチしていくのが使命だ。坂入氏が語る。
「いま技術もデバイスも急速に進化しています。私たちはそこにキャッチアップしなければならないのはもちろん、研究開発もアジャイルにスピードアップしていく必要があるため、新しいスタイルを取り入れながら試行錯誤的に進めるところでも苦労しています」

その目まぐるしい変化の中で、GeoCLOVERTMも進化を遂げていく。本記事時点ではまだ実用化されていないが、その時期をどのあたりに見据え、また現状でのゴールをどこに設定しているのだろうか。安達氏が明かす。
「現在のところは建物を丸ごとデジタルツインで実現し、その空間データを毎日更新していくところがゴールです。その先で実際に製品化すれば、例えばビルの照明や空調設備を遠隔監視したり、制御を自動化したりといった活用がされていくでしょう。時期は未定ですが、社会課題の解決に現場のデータ活用は不可欠ですので、実用化は間違いなくされると確信しています」

アナログとデジタルの融合を体感できるCEATECの展示に注目

安達氏がその未来を力強く予言するGeoCLOVERTM、ところでCEATECではどのような形で出展するのだろうか。

「空間をデジタル化するとこんなに面白い使い方があるということを、来場した方にまずは感じ取ってほしいと思い、展示内容を考えました。カフェのジオラマを用意し、そのジオラマとバーチャルをつないで、アナログとデジタルが融合した状態でカフェ空間をデザインするという画期的体験ができます」(安達氏)

カフェのスペースにミニチュアのテーブルやチェア、鉢植え、エアコンなどを配置し、環境配慮(カーボンニュートラル貢献度)、快適性、おしゃれ度、収益性などを数値で評価するというもの。緑を多く配置すればCO2排出削減に寄与するため環境配慮の数値は上がるが、客数が減るので収益性は下がる。また、おしゃれなチェアも置き方によっては動線が阻害され、やはりビジネスの効率が落ちるだろう。

  • (写真)体験イメージ
(写真)デモ機

AIによる物体認識も取り込んだGeoCLOVERTMにより、ジオラマを動かすとすぐデジタルツインに反映され、評価もフィードバックされる。誰もが気兼ねなく扱えるジオラマを使うことで、専門家でなくとも理想の空間設計を体感できるとともに、GeoCLOVERTMのポテンシャルをイメージできるのがポイントだ。

坂入氏は、この展示で目指すところをもう一つ付け加えた。 「現実とバーチャルが融合する新しい世界の体験で、デジタル空間の使い方としてお客様に何かヒントを与えられるだけでなく、私たちもお客様からヒントをいただきたい、そうした思いも込めています」

また安達氏もこう語る。 「まずは展示を楽しんで、自由な発想をしていただき、それを機にデジタル空間をどう活用していくか、一緒に考えさせていただきたいと思っています。私たちと一緒に、GeoCLOVERTMで未来をつくっていきましょう」

  • (写真)集合写真

来たるCEATECで、このGeoCLOVERTM、そしてSerendieも含め、三菱電機が描き出す未来の可能性をぜひ体験してみよう。

「CEATEC 2024」出展のお知らせ

三菱電機CEATEC2024特設サイトはこちら ※特設サイトは10/11よりオープン

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