7月25日に開催された「未来を走る:自動車業界におけるデジタルマーケティングの革新」のセッションに、Tealium, Inc グローバル自動車産業&モビリティ業界プリンシパル アンディ シェファー氏が登壇。「顧客解像度を上げるだけでなく、タイムリーなおもてなしにつなげる顧客データ基盤の活用法」と題して、データ基盤を活用してリアルタイムに価値を提供するための方法を解説した。

  • (写真)Tealium, Inc グローバル自動車産業&モビリティ業界プリンシパル アンディ シェファー氏

    Tealium, Inc グローバル自動車産業&モビリティ業界プリンシパル アンディ シェファー氏

最重要なのは、ゼロパーティデータとファーストパーティデータ

顧客のニーズや嗜好が多様化するなか、デジタルマーケティングの重要性が増している。自動車業界においてもさまざまな取り組みが進んでいるが、そこでカギとなるのが顧客データの活用だ。シェファー氏は「顧客から得られるデータを活用したリアルタイムマーケティングによって、顧客が求めるものを瞬時に見極め、適切な情報を提供することが可能になります。そのことが売上向上やブランドロイヤリティの強化につながるのです」と強調した。

現在Tealiumで自動車とモビリティ担当プリンシパルを務めるシェファー氏は、Tealium入社以前から、メルセデスベンツやフェラーリ、マセラッティ、フォードなどの自動車メーカー向けにセールスやマーケティング、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)向上の取り組みを支援してきた経験を持つ。

「現在、顧客体験は激戦区です。その差別化要因になっているのがデータです。20年前はよいクルマとよくないクルマがあり、いいクルマであれば売れる時代でした。しかし現在はほとんどすべてのクルマは性能が高く、よくないクルマを見つけることは難しい状況です。製品の差別化だけでなくデータを活用した顧客体験の提供方法が重要であり、そこにこそチャンスがあります。お客様と生涯にわたっておつきあいしていくことが求められるのです」(シェファー氏)

データを活用するためにはさまざまな課題がある。1日250京にも及ぶデータが生成されるという膨大なデータ量の問題や、収集したデータの約25%しか活用できていないというデータ分析の問題、データの保護やプライバシー、パーソナライズの問題などもある。

「データには4つのタイプがあります。顧客から意図的に提供されるゼロパーティデータ、自社チャネルで収集した顧客データであるファーストパーティデータ、信頼できるパートナーシップで取得された他社のデータであるセカンドパーティデータ、データアグリゲータから入社したデータであるサードパーティデータです」(シェファー氏)

シェファー氏によると、データ活用で最も有効なのはゼロパーティデータとファーストパーティデータだ。顧客自身が提供しているため、もっとも顧客にニーズに沿ったデータであるといえるためだ。

  • (図版)さまざまな種類のデータ

CDPを活用してパーソナライズを行いコンバージョン率を高める

データを活用した顧客体験のためには、データを管理するプラットフォームが重要になる。データ分析ではDMP(デジタルマネジメントプラットフォーム)を活用することが多いが、サードパーティデータを含めたデータ分析には不足もある。というのも、DMPは特定の条件をもとに個人を識別するため、性別、年齢、出身地、居住地、属性が同じでもまったく異なる2人の個人を抽出してしまうこともあるからだ。

「英国のチャールズ国王とミュージシャンのオジー・オズボーンを同じ個人として抽出することもありました。DMPは拡張性をもたらしましたが、真のID解決には至りませんでした。そこで登場したのがCDP(カスタマーデータプラットフォーム)です。CDPは、DMPでは難しい、自社のキャンペーンにどう反応したか、どのサイトや店舗を訪れているのかといった情報も取得できます。これにより、データとして取得するリソースをアセットとして経営に活用できるようになります」(シェファー氏)

では実際にCDPを活用するとどのような課題が解消されるのか。シェファー氏は、自動車業界をとりまく課題として、コロナ禍もありこの数年は車両販売が低調だったこと、金利上昇やインセンティブ低下でディーラーや販売会社が厳しい状況に置かれていること、マーケティング部門の予算の制約はより厳しいものになっていることなどを挙げ、こう述べた。

「調査によると、自動車メーカーやブランドが適切な体験を提供する準備ができていないという考えている顧客は39%に及びます。また46%の顧客はより良い顧客体験を提供する別メーカーやブランドに乗り換えると回答しています。データをうまく使いながら、新規のお客様を獲得することはもちろん、既存のお客様を保持していくことが求められます」(シェファー氏)

データを活用した顧客体験の向上で1つのカギとなるのがパーソナライズだ。

「70%の顧客は、ディーラーを訪れる前にオンラインで下調べをしています。そこでパーソナライゼーションによりコンバージョン率を高めることができます。さらにプロアクティブなパーソナライゼーションを実施することで、顧客維持率をも向上させることができるのです」(シェファー氏)

  • (図版)CDPとDMPの違い

カスタマーデータをデータサプライチェーン全体で管理する

CDPを活用したデータ分析の事例としては、類似モデリング(Look-Alike Modeling)がある。機械学習やAIを用いてモデルとなる属性を持つ顧客を探し出し、ターゲティングしていく手法だ。

「ある自動車メーカーは、Webコンバージョンを向上させるために、3つの類似オーディエンスのモデルを作成しました。1つめはタグを用いたモデル、2つめは既存のオーナーの属性のモデル、3つめはCRMの見込み顧客のモデルです。これらモデルを活用することで、CPA(Cost Per Action)の35%の減少、CPM(Cost Per Mille)の17%減少、CTR(Click Through Rate)の平均0.65%から0.85%の向上、コンバージョンの大幅な増加といった成果を得ました。マーケティングを効率化するとともに、削減したコストを別の新しい施策にあてられるようになりました」(シェファー氏)

また、別の自動車メーカーは、CDPを活用してパーソナライズされたデジタル体験の提供に取り組んでいるという。

「まず適切な見込み顧客と顧客を特定し、ターゲットを絞り込みます。また、より適切でパーソナライズされたデジタル体験を演出します。そのうえで、あらゆるデバイスからパーソナライズされたオムニチャネルジャーニーを提供しました。この自動車会社は、これにより平均直帰率の30%削減、メディアへの初期投資額の90%削減、ディーラーへの申し込み書類の20%増加(成約率向上)といった成果を得ました」(シェファー氏)

ここでシェファー氏は、マーケターが利用する具体的な画面構成を示し、どのようにオーディエンスを設計し、CRMデータと連携させ、見込み顧客をシームレスに次のファネルに導いていくかを解説した。

  • (写真)講演中のシェファー氏

こうしたデータ活用の基盤となるのがTealiumだ。

「データのサプライチェーン全体を管理し、カスタマーデータのオーケストレーションを担うのがTealiumです。ファーストパーティデータをはじめとするさまざまなデータを収集し、標準化、変換&エンリッチ化、連携し、さまざまなマーケティング施策をアクティベーションします」(シェファー氏)

  • (図版)カスタマーデータのオーケストレーション

顧客の解像度を上げ、タイムリーなおもてなしにつなげる

Tealiumの最大の特徴は、データをリアルタイムに活用する仕組みにある。

「夜間バッチで集計し対応するのではなく、今このタイミングでアクションを取っていけるのが、Tealiumの特長です。お客様がサイトを訪れても、10分後にはほかのサイトにいるかもしれません。お客様の興味があるタイミングにフォーカスし、その場で手を打っていくことが重要です。Tealiumではリアルタイムという言葉を、”25〜300ミリ秒以内に行うこと”と定義づけています」(シェファー氏)

こうした「真のリアルタイム」がもたらすメリットは大きく6つある。パーソナライズの強化、エンゲージメントの増大、顧客体験の向上、コンバージョン率の向上、カート放棄の削減、収益の増大だ。

「例えば、リアルタイム分析によりコンバージョン率が20-30%向上するという調査があります。また、リアルタイムデータに基づくパーソナライゼーションにより、収益が15%増加する可能性があります。さらにリアルタイムのパーソナライゼーションを利用しているWebサイトでは売上が19%増加したとの報告があります」(シェファー氏)

そのうえでシェファー氏は、Tealiumが提供する差別化要因を5つ紹介した。

1つめは、ベンダー中立で連携性が高いことだ。Tealiumは、どこからでもデータを取得し、任意のエンドポイントに送信できるように設計されている。CDP分野ではもっとも多くの統合実績があり、なんと1300以上の統合機能を標準で提供している。

2つめは、先ほども強調された、リアルタイム性だ。データの取り込みからアクティベーションまで、データは500ミリ秒未満でエンドトゥーエンドで処理されるという。

3つめは、プライバシー&セキュリティだ。プラットフォームに組み込まれたデータセキュリティとガバナンスの管理機能により、顧客情報を保護し、さまざまなデータ規制を遵守できる。個人情報保護法などのプライバシー規制に悩まされる多くの企業の、強い味方となりうる存在なのである。

4つめは、タイムトゥバリューだ。実証済みの実装アプローチやユースケースで素早い価値創造につなげることができる。平均して90日以内に3つの価値創造を推進できるという。

そして5つめは、実績である。これまでに600件以上のCDPプロジェクトで活用されたTealiumのCDPは、その実績に裏打ちされた信頼があるのはもちろんのこと、多くのプロジェクトを通して、機能をいまも継続的に改善している。

シェファー氏は「わたしたちは世界中のさまざまな自動車メーカーやブランドと取引があります。Tealiumを活用して、顧客の解像度を上げ、タイムリーなおもてなしにつなげてください」と訴え、セミナーを締めくくった。

  • (写真)セミナー会場の様子

    セミナーは自動車業界関係者から大きな注目を集めた

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[PR]提供:Tealium Japan