実店舗やATMを持たず、インターネットを通じた取引を中心に、eダイレクト預金や投資用不動産ローンなどの金融サービスを提供しているオリックス銀行株式会社は、2023年で設立30周年を迎えた。無店舗型のビジネスを展開し、“新形態銀行”と呼ばれる同社では、更なるCX(顧客体験)と EX(従業員体験)の向上を図るため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、ローコード・ノーコード開発基盤を軸に、システム開発の内製化に着手した。本プロジェクトに携わるのはデジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム。外部委託から内製開発への変換に至った経緯について、チーム長を務める中村 哲也 氏は次のように語る。

「デジタル戦略推進部 業務ソリューションチームは、社内業務及びお客様向けサービスにおけるDX推進と、その実現に必要なシステムの内製開発をミッションに掲げています。内製化に関しては本組織が立ち上がる前の2021年から取り組んでおり、これまでの外部委託型の開発から脱却することで、事業部門のビジネススピード向上を目指しています」(中村氏)

(写真)オリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム チーム長 中村 哲也 氏

オリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム チーム長 中村 哲也 氏

外部のシステムベンダーに発注してシステムを開発するというアプローチは、開発期間が業務ニーズに追いつかないことや外注によるコスト高といった課題が顕在化しており、事業部門の要望に応えられていなかったと中村氏。目まぐるしく変化を続ける市場のニーズに対応できる柔軟性とスピードを担保するため、内製開発に舵を切ったと説明する。

「外部委託ではシステム開発やビジネスロジック構築のノウハウが社内に残りません。このため、柔軟な要件定義と開発スピードの向上に加え、社内にノウハウを蓄積することも内製化の目的といえます」(中村氏)

内製開発におけるリリース作業の課題を解決するため、リリース管理ツール「Flosum」の導入を決定

オリックス銀行では、アプリチームとSalesforce内製化チームの2チーム体制で内製化が進められた。ローコード・ノーコード開発のプラットフォームとして早くからSalesforceを活用していた同社では5つのSalesforce組織を持っていた。しかしSalesforceの開発経験があるメンバーが少なかったこともあり、立ち上げは苦労を伴ったとSalesforce内製化チームのリーダーとしてプロジェクトを牽引した業務ソリューションチーム 主任の飯尾 芙美 氏は語る。

「Salesforceは非常に広範囲なシステムで、ドラッグ&ドロップで構築できるゾーンに関してはタッチが早いのですが、少し踏み込むとコーディングが必要なゾーンに入るため、さまざまな開発ツールを組み合わせてアジャイル開発を実現させていきました。メンバーの負荷が大きかったのは、リリース作業です。標準の「変更セット」では手動の作業が多く、事前検証から本番リリースまでにかかる手間と時間が大きな課題となっていました。深夜からの作業になるケースもあり、メンバーにかかる身体的、心理的な負荷は相当のものでした」(飯尾氏)

(写真)オリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム 主任 飯尾 芙美 氏

オリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム 主任 飯尾 芙美 氏

こうしたリリース作業の課題を解決するために同社が着目したのが、Salesforceプラットフォーム上で稼働するリリース管理ツール「Flosum」だ。リリース作業における一連の流れを統合的に管理できるFlosumは、システム開発の内製化に取り組む多くの企業が開発業務を軽減し、開発者(エンジニア)のストレスを軽減する最適解ツールとして採用、評価されている。飯尾氏自身も「さまざまな製品を比較検討しましたが、導入実績が豊富なことと、当社の情報セキュリティ統括部によるクラウドチェックを通過できるセキュリティの高さを評価して、Flosumの導入を決定しました」と評価する。Salesforceをプラットフォームとして開発されたシステムのため、すでにSalesforceを運用して金融業界の厳格なシステム運用基準をクリアしていた同社にとって、導入ハードルは低かったと振り返る。

「導入にあたっては、テラスカイの担当者に手厚いサポートをいただきました。購入を決定する前にも関わらず、複数回来社いただき、デモを見せてもらったり、懸念点について解説してもらったことで、関係各部署への説明もスムーズに行えました。Flosumに関する知見を持つメンバーが少ない状況のなか、大きな問題が生じることなく導入できたのはテラスカイの支援によるものと感謝しています」(飯尾氏)

深夜のリリース作業から解放され、40%~最大70%ものリリース時間短縮を実現

こうしてFlosumの導入はスムーズに進み、Salesforceのリリース作業にかかる負荷は解消された。飯尾氏は、リリースにかかる時間を約40~70%削減できたとFlosum導入の効果を語る。「項目レベル別セキュリティの設定といった、本番環境での手動設定が必要だった資材についても、一括対応できるように自動化されて作業時間が短縮されました」と手応えを口にする。

こうした時短効果に伴い、深夜からのスタートも多かったリリース作業は当日朝からのスタートで間に合うようになったため、内製開発メンバーの身体的負担も大幅に軽減。「明け方まで作業して、帰宅後もトラブルに備えて待機する必要があったものが、朝からの作業で対応できるようになったことをメンバー全員が喜んでいます」と中村氏は語り、Flosumの導入効果を高く評価する。

「身体的な負荷だけでなく、心理的な負荷が軽減されたことも見逃せないメリットです。何かトラブルがあったときにロールバック機能でもとに戻せるというのは、ミッションクリティカルなシステムをリリースするうえでの不安解消につながります。」 さらに、内製化の目的であるスピード開発にも効果を出し始めている。「リリースにかかる時間が短くなったことで、より早くリリースのサイクルを回せるようになりました。さらにFlosumを使うことで資材の管理が効率化され、複数のプロジェクトを併行して走らせられるようになったことも大きな成果といえます」(中村氏)

事業部門と開発部門の一体化でSalesforceの内製化は一気に加速

リリース作業のストレスが軽減されたことで、Salesforceの内製化は一気に加速した。事業部門と開発部門が密接なコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めていくという、外部委託型では実現できなかったプロセスを実現。開発部門のメンバーはもちろん、事業部門のユーザーのモチベーションも向上したと飯尾氏は話す。

「外部委託のときは、発注したシステムを期日、納期を守って納品することが目的でしたが、内製開発では、ユーザーの要望をダイレクトに聞いて、システムに落とし込んでいくというクリエイティブな作業に変わりました。これまでユーザーは納品されるまでシステムを確認できず、要件と違うケースも少なくありませんでした。内製化に舵を切ったことで、動くモックで合意を取りながら開発を進められるようになり、リリースまでの時間短縮だけでなく、リリース後に認識の齟齬が生じることもなくなりました。またリリース後もユーザーとコミュニケーションを取り、問題点や改善点に対して迅速に対応できるようになったこともポイントです。なにより、ユーザーから直接、“ありがとう”の声をもらえることが、モチベーションの向上につながっていると思います」(飯尾氏)

中村氏も、「事業部門と開発部門が一体となってシステムを作り上げられるようになったことで、お互いに納得感を得られるようになりました。まだ問題は多々ありますが、現場のメンバーからはこの方向を継続したいという意見が多く、仕事に対するやりがいが増えていることを実感しています」と語り、内製化によりユーザーとエンジニア(開発者)の距離感が縮まったことを喜ぶ。すでにエンジニアがユーザーの意を汲み取り、改善点や新機能を先んじて提案するなど、相互理解が深まったことによる効果が現れているという。

Flosumの活用範囲を拡大し、フレキシブルかつスピーディな内製システム開発を進めていく

オリックス銀行では、内製化を進めるにあたり体制構築に注力したという。「現在もチームビルディングに力を入れており、当社のメンバーと協力会社のメンバーがワンチームで開発できる環境の構築を進めています」と飯尾氏。これまで内製開発に携わってこなかったメンバーに経験を積ませるという意味でも、リリース作業の効率化が図れるFlosumの導入は有効な一手だったと語る。

「限られた人的リソースで内製開発を行うには、教育の制度を整えることも重要です。このため行内に限ったエリア、お客様への影響がない組織を使って、トライアンドエラーを繰り返しながら月に1度のリリースを実践し、アジャイル開発の経験を積み重ねていきました。リリース作業の負荷を軽減できるFlosumを導入していなければ、このような取り組みは実現できなかったと思います」(飯尾氏)

こうした経験が実を結び、2022年度のシステムリリース完了案件数31件に対し、2023年度は同39件に増加。その内容も以前は保守が中心だったものが、ユーザーと協働して業務改善を図るクリエイティブな作業へと変わってきているという。こうした成果を踏まえ、同社ではFlosumのさらなる活用を検討している。現在は、2つのSalesforce組織にFlosumを導入している状況だが、今後は組織統合などを進めて活用範囲の拡大を図っていきたいと飯尾氏は語る。

中村氏は、「Flosum導入に伴う費用対効果を最大化するためには、テラスカイのさらなるサポートが必要と考えています」と語り、単なるツール導入だけでなく、内製開発体制の整備や業務フローの最適化、人材育成など、幅広い領域での支援を期待している。

「CXとEXの向上を目指す当社の事業戦略を実践するうえでは、変化に強いシステム開発体制の構築が重要になります。私たちが推進している内製化もその一環であり、今後もユーザーと連携してフレキシブルにシステムを開発できる環境を整備していきたいと考えています」(中村氏)

  • (写真)中村氏と飯尾氏

    (左)オリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム 主任 飯尾 芙美 氏
    (右)オリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部 業務ソリューションチーム チーム長 中村 哲也 氏

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