顧客ごとに最適な商品やサービスを提案する“レコメンド”の領域において、AI技術の活用は目覚ましい勢いを見せている。コンテンツと商品を繋いで、“エンゲージメント→セールス”の好循環をどう生み出していくのか。そして、その鍵を握る最新のAI技術とはどのようなものなのか。本稿では、AIを用いたマーケティング・サービスを展開し、レコメンドエンジンへのAI搭載に関する豊富な実績を有するシルバーエッグ・テクノロジーのマーケティング部シニアマネージャー、園田 真悟氏によるビジネスカンファレンス・セッション「エンゲージメント最前線 顧客を動かすパーソナライズAI技術」をレポートしていく。
エンゲージメント向上の鍵を握るAIによるレコメンデーション
一般的にマーケティングの世界における「エンゲージメント」とは、ブランドへの信頼度や顧客とのコミュニケーションの親密度であり、エンゲージメント施策は、それらを向上して長期的な収益性を上げていくことを意味する。具体的な施策としてはオウンドメディアマーケティング、SNSマーケティング、プロダクトプロモーションなどが挙げられ、その指標はPV数、アクセス頻度、いいねの数など多様である。
「端的に言えば、顧客の信頼を得てロイヤリティーを上げるという表現が近いです。よりたくさん見てもらう、そして気に入ってもらうことがエンゲージメント施策の中心だと思っています。そこで経営からマーケターに問われるのは、そうしたエンゲージメント施策を行うことで最終的にどう売上につながるのか。ポイントとなるのは、施策を顧客視点で見た時に最終的にセリングポイントにどうつなげていくかでしょう。一貫したカスタマージャーニーの中でエンゲージメント施策を考えていく必要があります」と園田氏は強調した。
シルバーエッグ・テクノロジーは、AIマーケティングソリューションの専業サービス企業であり、その中核となるのがレコメンドエンジンだ。ユーザー行動情報を分析し、「いま」求められる情報を届ける独自のAIエンジンを開発しており、その技術は20年にわたる事業の中で常に試され、精度を向上させてきている。
そもそも“薦める”という行為は、相手の状況を理解・共感して良いものを提案し、その結果相手からの信頼が得られるという相互コミュニケーションである。しかし、ECサイトをはじめとしたデジタルプラットフォームでは、顧客との関係構築が難しい。商品の分類や顧客の属性をもとにした旧来のレコメンドは、時に“大雑把な押し付け”に感じられることもある。
「これに対してAI搭載型のレコメンドエンジンは、観察を通じて顧客一人ひとりのニーズをきちんと分析し、パーソナライズされた商品・情報を提案します。これにより、共感と信頼のサイクルをデジタル世界に再構築できるのです」と園田氏は語る。
“AI技術の蓄積で劇的な進化を遂げたレコメンドエンジン
従来のWeb体験というのは、“ユーザーが情報を探す”というのが通常だった。しかし現在のAIによるWeb体験では、“情報がユーザーを探す”世界が生まれつつある。そこで大きな役割を果たすのがレコメンドエンジンである。
主要なレコメンデーション手法としては大きく二つある。
一つはアイテムベースフィルタリングで、商品やコンテンツの付帯情報(メタデータ)の類似性が高いものをおすすめする。シンプルでわかりやすい一方、条件が合えば誰にでも同じものをおすすめするという側面がある。このため、多様性が進む現在においては、顧客満足度にはつながりにくい。
そこでもう一つのレコメンデーション手法である協調フィルタリングでは、機械学習を取り入れて類似度の高いユーザー群の行動情報を学習し、おすすめアイテムを算出する。一人ひとりのシチュエーション──つまりその人の好みに合わせて顧客ごとに異なるアイテムをおすすめするため、顧客満足度も高い。
園田氏は言う。「この協調フィルタリングをベースに、AI・機械学習技術によってレコメンドエンジンは進化してきました。近年では言語解析など他のAIツールからの技術移転などにより、より正確なレコメンドができるようになっています」
代表的な例としてYouTubeがある。2011年にYouTubeは従来のレコメンド機能に代わり機械学習技術を使った新型エンジンを投入。その結果、エンゲージメントが著しく改善し、現在のYouTubeの視聴文化の礎が築かれることとなった。
また他にも、世界最大のECモールであるAmazonの売上のうち実に35%がレコメンドで提案した商品であり、またNetflixではユーザーが視聴する80%はレコメンドされた作品だという。
レコメンドエンジンの用途はさらに拡大していく
現在シルバーエッグ・テクノロジーでは、同社の提供するレコメンドエンジン「アイジェント・レコメンダー」を個々の顧客におすすめするだけのツールとして完結させるのではなく、レコメンドエンジンの活用シーンのさらなる拡大を推奨しているという。
アイジェント・レコメンダーのユーザー企業によるレコメンドエンジン活用の先進的な試みとして園田氏は、大手アパレルECサイトの事例を紹介した。そこでは、単に商品のおすすめだけではなく、その人が好みそうなコーディネートフォトをレコメンドしている。コーディネートフォトとは、各商品をコーディネートしてスタッフが着用した画像であり、数多くのPVを稼ぎ、顧客のファン化を進めるキラーコンテンツであるという。顧客好みのコーディネートをレコメンドした結果、気付きを得て別の商品の購入にもつながるという効果が現れている。
コンテンツから商品への導線もレコメンド経由で構築できるなど、幅広い購入導線の構築に成功している。AI搭載レコメンドエンジンなら、このような施策も容易に実現できるという。
また別のユーザー企業では、ECサイト用のレコメンドAIと同じ仕組みでメールやLINEによる「パーソナライズド・メッセージ」送信を行っている。
「自社の商品・サービス購入後の顧客に対するフォローアップや再度の訪問、再度のエンゲージメントのための活用が非常に増えています」(園田氏)
セッションの最後に園田氏は、OMO(Online Merges With Offline)施策のためのレコメンドエンジンの活用について触れた。限られた行動データしか取得していない実店舗の顧客に対しても、EC顧客の行動データと併せてAIにより処理することで、有効なレコメンドが可能となるのである。
これは非常に強い施策だと言えるだろう。ブランドの持つコンテンツやエンゲージメント向上のためのさまざまな施策を届けることができるように、実店舗顧客の再訪問率・EC利用率もまた同時に向上できるソリューションになっているからだ。
そして最後に園田氏は、次のように力説してセッションを締めくくった。「レコメンドAIを軸にしたコンテンツ・商品混在のカスタマージャーニーがつくれる今の世界ならば、常に面白いものが見つかるサービスとしてさまざまなサイトをアップグレードできると思います。もちろん、顧客にとって価値あるものを”作る”のは人間の仕事。しかし、顧客一人ひとりに”届ける”仕事は、AIに任せてみても良いのではないでしょうか」
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