2万人を超える技術者・研究者を擁するテクノプロ・グループ。このうちIT領域を担うのが、テクノプロ・IT社だ。全国31拠点で5000名以上のITエンジニアが活躍しており、あらゆる業界・技術領域に対応している。近年、IT業界では人材不足が叫ばれており、技術者派遣をコア事業とする同社としても大きな課題の1つとなっている。そのため、テクノプロ・IT社では、ソリューションビジネスなど新たな事業展開にも力を入れはじめているという。テクノプロ・IT社はこの先どのような未来を展望しているのか。エンジニアは、そこでどのようにキャリアを築いていけるのか。当誌編集長をモデレーターとして開催したテクノプロ・IT社各事業部長3名による座談会から探っていきたい。

参加者:
株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社 ERP事業部長 大日方 智彦氏
同 システムソリューション事業部長 中村 厚士氏
同 セキュリティ事業部長 波多江 学氏

モデレーター:
株式会社マイナビ TECH+編集長 星原 康一

ビジネス環境の変化に伴い、ソリューションビジネスへのシフトを進める

――まずはテクノプロ・IT社のコア事業について伺えますか。(モデレーター:星原)

  • 株式会社マイナビ TECH+編集長 星原 康一

    株式会社マイナビ
    TECH+編集長
    星原 康一

大日方氏:当社ではコア事業として、技術者派遣サービスを展開しています。特徴はその規模と会社の安定性です。100~300名規模の営業拠点を全国数十箇所に構えているほか、受託開発部門も複数あります。

コア事業の業績は堅調に推移してきていますが、技術革新の加速や働き方改革、人口減といった大きな変化のなかでは、現行の派遣型ビジネスに加え、新たな成長領域を確保しておくことが求められます。そこで、当社としては近年、プロダクト提供や業務改善提案なども含めたソリューションビジネスへのシフトを進めており、2026年にはソリューション事業の売上比率が全体の2割となる状態を目指しています。

――みなさんが担当されている事業部の特徴について教えてください。(星原)

大日方氏:ERP事業部のメインはSAP関連のサービスであり、SAP S/4HANAの導入支援、運用・保守などを手掛けています。約150名が在籍していますが、そのうち6割強はSAPエンジニアです。そのほか、SCMやCRM、BIツールなど周辺領域のソリューションも提供しています。

  • 株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社 ERP事業部長 大日方 智彦氏

    株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社
    ERP事業部長
    大日方 智彦氏

中村氏:システムソリューション事業部では、一般的なSIerと同様、導入コンサルティングから開発支援までを担い、DX推進ソリューションや生産管理システムの導入、海外拠点への導入支援などを行っています。特に製造業のお客様が多いですね。

波多江氏:セキュリティ事業部は4年ほど前に立ち上がった部署です。ISMSやPマークの取得支援、CSIRTやSOCの構築支援といったセキュリティコンサルティング、SIEM構築やログ管理、エンドポイントセキュリティ、脆弱性診断などのセキュリティソリューションを提供しています。このほか、プラットフォーム事業として、ネットワーク関連製品の販売代理、Salesforceの導入支援なども当事業部で行っています。

体系化されたエンジニアの教育体制に強み

――エンジニアが安心して働くためには、組織にどのようなメンバーがいるのかということも重要になります。各事業部のエンジニアはどのような方が多いのでしょうか。(星原)

大日方氏:SAPエンジニアは、M&Aで統合した企業のメンバーが中心となっています。母体がさまざまで、そのぶんメンバーのキャリアも多様です。特に昨今ではシニアクラスの人材が増えてきて、全体のスキルレベルがさらに上がってきています。彼らの知見を業務だけでなく、教育にも活かすかたちで、今後はSAP未経験人材の育成に力を入れていこうと考えています。

中村氏:システムソリューション事業部には、大手SIer出身のベテランも多く在籍しています。彼らの経験を活かし、さまざまなお客様に対して現場改善につながるソリューションを提供しています。最近では、自社ソリューションもメニューに加えています。たとえば、製造業向けに、品質管理や生産管理ソリューションを提供するなかで、製造現場では手が汚れてキーボードを使えないケースもあるという課題がわかり、音声入力ソフト「ワーキングボイス for Excel」を開発しました。当事業部では、こうしたソリューションの開発者も抱えています。

波多江氏:セキュリティ事業部は他社の部門譲渡という形で立ち上がった組織で、エンジニアを含む30名強のメンバーでスタートしました。ネットワークやサーバーの運用・保守、構築といったインフラ周りの経験を持つメンバーが多いです。現在は、120名規模まで成長し、新卒採用も積極的に実施しております。

――エンジニアの教育体制はどのような形になっていますか。(星原)

大日方氏:テクノプロ・グループには人材教育を専門に手掛ける事業会社があるため、同社を通じて全グループ企業共通でいつでも勉強できるe-ラーニングの仕組みを利用できます。また、リーダー研修をはじめとするヒューマンスキル研修も行われています。これに加え、テクノプロ・IT社所属のエンジニアとしてのスキルを得るために事業部ごとにテーマや軸を持った教育研修が用意されています。このように体系化された教育体制は、当社の強みの1つです。

ERP事業部ではSAPの認定資格所得を目指した座学研修とOJTを用意しています。基本的には新卒向けですが、中途採用者も所持しているスキルやタイミングによって参加できます。資格試験に向けては社内で培ってきた傾向と対策のナレッジを活用できるので、SAP認定資格試験の合格率は9割に近いです。また、ハイレイヤーのエンジニアに対しても、M&Aで統合した会社のシラバスを用いてサプライチェーンやロジ領域の知識をはじめとするコンサルティングの知見を強化する仕組みを提供しています。

中村氏:システムソリューション事業部は、人材育成に関するある程度のロードマップを用意していますが、基本はOJTです。デザイン思考のワークショップなど、想像力や発想力を鍛える場もあります。「ワーキングボイス for Excel」はまさにそこから生まれたソリューションです。

  • 株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社 システムソリューション事業部長 中村 厚士氏

    株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社
    システムソリューション事業部長
    中村 厚士氏

波多江氏:セキュリティ事業部にはさまざまな領域の人材が所属しているので、担当領域を考慮したうえでメンバー1人1人に対し、研修や資格取得の年間計画を立てています。特に資格の取得に関しては力を入れており、社内のe-ラーニングやスクールでの基礎的な研修に加え、外部の研修も活用し、各種セキュリティ関連資格、クラウド・ネットワーク・Salesforceの資格取得関連費用は全額事業部が負担をしています。

テクノプロ・IT社の未来を展望する

――ITアウトソーシング業界を取り巻く変化と貴社のこれからについて、みなさんのお考えをお聞かせください。(星原)

中村氏:IT人材不足は、お客様だけでなく当社においても大きな課題となっています。また、近年、ユーザー企業が開発を内製化していく流れがあるので、受託開発やエンジニア派遣だけでなく、ソリューションを軸としたサービスを展開していくことの重要性がより増していくと考えています。

波多江氏:結果として、コンサルティングや課題解決まで担えるエンジニア、専門に特化したエンジニアの必要性が高まっていくものと見ています。

  • 株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社 セキュリティ事業部長 波多江 学氏

    株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社
    セキュリティ事業部長
    波多江 学氏

大日方氏:当社としては、市場ニーズをキャッチしつつ、注力すべきテーマを模索しているところですね。単なる技術開発だけではなく、企業の業務改革や課題解決にまでつながるソリューションを提供していければと考えています。

――そうしたなか、各事業部ではこれからどのような領域を強化していきたいと考えられていますか。(星原)

大日方氏:SAP関連のニーズは依然として多く、人手不足のなかでいかにプロジェクトをこなしていくかが課題です。そのため、トレーナーも含めた社内人材の育成が必要だと考えています。ユーザー企業での開発内製化は今後も続くと考えられるため、当社内における人材育成の知見を外販ビジネスとして展開していく方針もありえるでしょう。

中村氏:当事業部では今年、主に工場内での搬送などを想定していますが、時代の流れもふまえて、AIをはじめその他の先端技術の活用も進めていきたいと思っています。

波多江氏:当事業部では、CISSPやホワイトハッカーのような今後ニーズが更に高まるセキュリティ分野に対応していくため、外部教育機関と連携し希少価値の高い人材の育成に注力していきます。

テクノプロ・IT社で目指せるエンジニア像

――テクノプロ・IT社では、どのようなエンジニアを目指すことができますか。最後にエンジニアの方へのメッセージをお願いします。(星原)

大日方氏:当社では、導入から実装、保守・運用まですべてが対応範囲となっているため、キャリアの選択肢が幅広く、長期的な視点でキャリアを構築していける環境があるといえます。システム導入時のコンサルティング手法を身につけたいのであれば大手コンサルティング企業のほうがよいかもしれませんが、その場合、ユーザー目線の業務改革までを担うことはなかなか難しいです。より現場に近い立場で経験やスキルを積んでいきたいという志向が強い方にとっては、当社のほうが適しているのではないでしょうか。特にERP事業部は立ち上げて5年未満の若い組織なので、マネジメントに参画して企画立案に携われる可能性もあります。興味のある方にはぜひチャレンジしていただきたいですね。

中村氏:当社の強みは、やはりお客様に近いところで仕事ができる点にあります。特に若い方にとっては、まず自分で手を動かすところから始められるぶん、具体的なキャリアのビジョンが見えやすい環境にあると思います。ユーザー企業に所属して情報システム部門で働き続けるとなると、業務内容が長年変わらないというケースも多いです。当社のようにプロジェクトが終わったらまた新しいプロジェクトに携われるという形で仕事をしていけば、さまざまな経験・スキルを身につけていくことができます。

波多江氏:セキュリティの仕事は都市部に集中しているイメージを持つ方も多いかもしれませんが、当事業部としては今後全国各地に拠点を展開していく予定であるため、地方在住の方でも仕事がやりやすくなっていくと考えています。ネットワークやサーバーエンジニアの経験さえあればセキュリティの知識を身につけていける研修制度も用意していますので、ぜひチャレンジ精神のある方に来ていただければと思っています。

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