2023年3月30日、「九州発!創業70年の老舗企業の挑戦 ~組織改革とクラウドの徹底活用術~」セミナー(G-gen主催)が、東京・渋谷のGoogle日本法人オフィスおよびオンラインにて開催された。同セミナーには、福岡でよく知られる銘菓「雪うさぎ」や洋菓子・パンの製造販売、空港・商業施設のレストラン事業、高速道路サービスエリア運営などを手掛ける風月フーズ株式会社 代表取締役社長の福山剛一郎氏と、組織改革のコンサルティングに加えてITでも同社の変革をサポートする株式会社ライクブルー代表取締役の池田治彦氏、及びクラウドサービス導入を伴走支援した株式会社G-gen ビジネス推進部の遠目塚美優希氏が参加。Googleのクラウドサービスをフル活用し、必要な部分は内製していった風月フーズの歩みが細かく紹介された。本稿ではその模様をお届けしよう。

  • 九州発!創業70年の老舗企業の挑戦 ~組織改革とクラウドの徹底活用術~

Googleが描くクラウドの世界観とは

風月フーズ×ライクブルーの取り組みに話を進める前に、Google Cloudのプレミアパートナーで専業システムインテグレーターであるG-genの遠目塚氏から、Googleが描く世界観について解説があった。

  • Googleの世界観

「コミュニケーション・コラボレーションツールのGoogle Workspace、最近話題を集めているノーコードのアプリ開発ツール・AppSheet、Google Cloudに蓄積されたデータの分析基盤・BigQuery、そしてAIやML(機械学習)の技術を使い、最終的にはLooker StudioというBIツールでデータの可視化や需給予測などを行えます。できることを各ツールに当てはめていくと一見バラバラですが、実は、すべてがつながる世界を実現するための技術をこの世に提供しているのが、Googleの世界観です」

  • 株式会社G-gen ビジネス推進部 遠目塚 美優希氏

    株式会社G-gen
    ビジネス推進部 遠目塚 美優希氏

続いて遠目塚氏は、この世界観を、理解しすべて使いこなそうしているのが風月フーズとそのパートナーのライクブルーであるとして、両者の紹介に話をつないだ。

まずはライクブルーの池田氏から「3年前にコロナ禍が始まり、それ以降、風月フーズも大変な思いをしてきましたが、今ようやく希望の明かりが見えてきたところ。どうやって今の状態に至ったかをお話ししたい」との前置きがあり、続けて風月フーズの会社紹介が行われた。

変革に向け、組織文化への挑戦がスタート地点に

風月フーズは1949年、福岡・天神の喫茶店として創業し、2019年に70周年を迎えた。「70年かけて空港や高速道路サービスエリアへと拡大していき、コロナ前で売上60億円、従業員は現在約500人と、ジャパニーズドリームを体現した企業です」と池田氏。「ただ、その70年のなかで業務も属人化していたため、2020年に就任した福山社長もいろいろと苦労しました」と付け加えた。

街中の喫茶店から始まった会社が、現在は高速道路サービスエリア4拠点に展開。それが売上全体の約8割を占めている。内訳はお土産、食品などの小売が48%、飲食業が30%となっているが、稼ぎ頭はやはり小売で、利益もそこから多く出ている。「ところが社員の話を聞くと、意識的には飲食業だと考える人が多く、変革に向けてここがポイントだと思い進めていきました」と池田氏は語り、話題を組織文化に展開した。

「組織文化は“ゲームのルール”。組織文化をうまく掴むと、従業員がどう行動していくか予測できるようになり、その予測に基づき打ち手を考えていけるので、ここがスタート地点になります」(池田氏)。これを受けて福山氏は、社長就任以前の2019年に池田氏とともに組織改革を進めていくなかで挙げたキーワード群を披露した。そこには社内の人間関係や業務に臨む心構え、あるいは「前例主義」「属人的な仕事」といったネガティブな表現も盛り込まれており、「これらを払拭し、組織をまとめていくうえで掲げた言葉が『チーム』でした」と語った。

  • 株式会社ライクブルー 代表取締役 池田 治彦 氏

    株式会社ライクブルー
    代表取締役 池田 治彦 氏

池田氏は、風月フーズの場合、まず2020年にトップ(社長)が代わり、そのうえでコロナ禍により売上が落ちて危機を迎え、トップが率先して組織変革を進めようという強い思いがあったことで“ゲームチェンジ”の好機を迎えていたと指摘。「とはいえ、初めの1年ほどはなかなか変わりませんでした」と回顧した。

そこで池田氏は、福山氏が目指す「チーム」という考え方を重視。なるべく多くの従業員を巻き込んで意思決定に参画してもらい、重要なことは共有しながら決めていくスタイルを貫いて、2020年6月頃から「次世代システムプロジェクト」を始動する。同社では基幹システムと社内サーバーをオンプレミスで持っていたが、それらをすべてクラウド化していくことを前提に新たなシステムを検討。現状のシステム俯瞰図を作成して確認しながら、新システムの具体的なあり方について、部署横断で若手メンバーも含めて意見を出し合い、時間をかけて考えていったという。

「このシステム俯瞰図を見て、Googleの世界観とはまったく異なり、バラバラであったことがよくわかりました。おかげで、すべてがつながるというシステムの全体像を頭の中で整理でき、ようやくスタートラインに立てたと思います」と福山氏。システム面でつながるだけでなく、これを機にチームとしての団結も生まれ、このあと取り組みが進展していくポイントになったと振り返った。

スモールスタートでトライし、積み重ねていく

新システム構築にあたっては、スタッフ全員に影響があることは「スモールスタート」の考え方で進めていった。「新しいことに取り組むのは本当に苦手な会社」(福山氏)で、失敗が怖いという組織文化も根強かったという。そのなかで、福山氏は「失敗してもいいからまずはやってみよう」という姿勢を前面に出す。基幹業務の移行先としてGoogle Workspaceをはじめいくつものクラウドサービスを選定。それぞれの強みを活かして少しずつトライアルを行い、うまくいったものは広げていくという取り組みを積み重ねた。

  • 風月フーズ株式会社 代表取締役社長 福山 剛一郎 氏

    風月フーズ株式会社
    代表取締役社長 福山 剛一郎 氏

もちろんその過程で反発も起きた、「できない理由をみんな探してきた」(福山氏)が、そのプロセスもチーム全員で共有。福山氏のトップダウンを池田氏が支える形で、リーダーシップを発揮しながら進めていった。

Google Workspaceや各種クラウドサービスの導入により、さまざまな部分で業務効率化に成功したほか、リアルタイムでのデータ確認が可能になった。たとえば、それまで社員は1カ月単位でないと累計労働時間を確認できなかったが、クラウドの勤怠システムを入れることで、直近で何時間働いたかが可視化できるようになり、そのデータを活用して売上データなどと照らし合わせ、部署ごとの労働生産性を評価できるようになったという。また紙の使用量も大きく減り、「地球に優しい会社になりつつあります」と池田氏は話す。

そうした取り組みを通して、長年動かし続けてきた社内サーバーとも決別。組織やシステムが大きく変わっていくなかである社員がふと口にした「もう後には戻れない」という言葉が、取り組みにおいてスローガンになったとのことだ。ちなみに福山氏自身はそれまで社内サーバーにどれだけのコストがかかっていたか把握できておらず、システム担当課長とそのチームメンバーの後押しでレガシーシステムとの決別、フルクラウド化を決断できたと振り返った。

“つなげていく”世界観の実現に踏み出す

こうしてフルクラウド化に向けたインフラ整備を進めていった同社。Google Workspaceに加えて、Google CloudとBigQuery、Looker Studio、そしてAppSheetの活用に乗り出す。「風月フーズが“ありたい姿”を常に示してくれたおかげで、それを実現するツールとしてはGoogleのプロダクトが親しいと、導入を進めていきました」と池田氏。

ITインフラの重要性については、当初はやはりそれほど意識されていなかったというが、レガシーからの脱却とフルクラウド化を進めるなかでその重要性に対する意識が醸成されていった。Googleのクラウドサービスを導入したことでデータが1カ所に集まるようになり、そのデータに誰もがアクセスでき、それをもとに次のアクションのアイデアが生まれるようになった。デバイス面でもクラウド活用にはモバイルデバイスが必要という意識が生まれ、スマートフォンやタブレット端末を導入する動きも始まっている。

またデータが1カ所に集まるようになったことで、これまでできていなかった多様なデータの可視化が実現している。たとえば様々な制約から「全社で昨日何が何個売れたのか」がわからなかったところ、全拠点の販売データをGoogle WorkspaceからGoogle ドライブ、そしてGoogle CloudのBigQuery、Looker Studioへとつないでいくことで、どの端末からでも見られるようになった。「福山社長が夢に見た景色がようやく見えたと思います。そのほか、AIを使った需要予測結果も確認できるため、現場スタッフの方が感覚ではなく数字をベースに考え、商品発注を自律的に行える環境づくりができています」と池田氏は語る。

AppSheetは、最初は棚卸作業で商品のバーコードを読み込むとその個数がアプリに表示されるという簡単なところからスタート。それだけでも従来はExcelで作った表を紙に打ち出し、「正」の字を書いて個数を数え、それをまたExcelに入力し直していた状態から比べれば、作業が楽になっただけでなく、データがクラウド上に直接保存され共有できる点でも大きな変革だ。

  • 商品販売データ分析ページ

    商品販売データ分析ページ

加えてAppSheetはリスキリングにも活用している。50代社員を中心に、バックオフィス業務改善に役立つツール開発を推進。開発未経験でコードもまったく知らなかった社員が、それまで紙で管理していた各拠点の経費を統合するアプリを開発し、実際に業務で使われているという。

組織変革はまだ途上ながらテクノロジー活用で力強く進む

これまでの取り組みでは、もちろん上手く行かなかったこともある。「ただ、そこで諦めずに、社長が組織ビジョンとして掲げたチームとしての活動を続けていくことを最重要視して進めてきました」と池田氏は話す。

福山氏は、成功要因の一つとして、多くの従業員がほかのスタッフの成功事例を積極的に模倣し、自分自身の取り組みにつなげていったことを挙げた。

「これは今までの当社になかった活動ですが、私としてはそこを狙っていた部分もあります。それが実現したのは組織改革がうまくいっている証拠ですし、私にとっても大きな自信になりました。そしてこうした取り組みの背後にはテクノロジーがありました。私自身はテクノロジーに詳しくないのですが、そんな私でも会社を良くしていきたいという思いを持ち、テクノロジーを通じて改善につなげることができました。まだまだ途上ですが、少しずつでも形になってきたことをお伝えできたなら幸いです」(福山氏)

最後に池田氏は「2025年の崖」の話を出し、「DXという言葉を使わなくても、理想とするあり方に向けてどう進んでいくかを考え、そこにITが使えるなら使っていくという、ただそれだけの話だと思います」と語り、セミナーを締めた。

  • 本取り組みを推進した風月フーズ、ライクブルー、G-genのみなさま

    本取り組みを推進した風月フーズ、ライクブルー、G-genのみなさま

関連リンク

風月フーズ株式会社
https://www.fugetsu.co.jp/


株式会社ライクブルー
https://like-blue.co.jp/


株式会社G-gen
https://g-gen.co.jp/

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