サイロ化したデータと業務の流れを統合してビジネスプロセスの改善を実現するには、部門を横断する業務全体を対象にプロセスやデータを管理し、課題を見極め最適化していく継続的な活動が必要となる。このような活動を支えるために求められるのが、ビジネスプロセス改善(BPM)プラットフォームである。 2月21日-22日に開催されたオンラインセミナー「ビジネス・フォーラム事務局 × TECH+ EXPO 2023 for Leaders DX FRONTLINE ~変革の道標~」にて、日鉄ソリューションズ DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 山﨑裕平氏は、BPMプラットフォームの実践例として、BPMのためのローコードプラットフォーム「PegaPlatform」とクラウドストレージ「Box」を連携したソリューションおよび事例を紹介した。

  • 日鉄ソリューションズ DX&イノベーションセンター  ビジネスイノベーション&コンサルティング部  山﨑 裕平氏

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    ビジネスイノベーション&コンサルティング部
    山﨑 裕平氏

Box導入の効果とネクストステップ

コロナ禍によってリモートワークが急速に普及し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方が実現されてきている。企業にとっては事業継続性の確保、オフィス賃料・交通費などのコスト削減といったプラスの効果もあった。

これらを支えているのがITであり、その1つがクラウドストレージサービスだ。世界最大規模のクラウドストレージサービスであるBoxは、容量無制限でファイルの作成・保管が可能で、検索機能やアクセス管理機能なども備えている。山﨑氏は「Boxの導入により、社内のファイル管理は部門別のファイルサーバーから全社共通の仕組みへ移行できます。結果として、部門を超えたファイル共有が容易になると同時に、運用面でも効率向上を実現したお客様は多いです」と説明する。これに加え、ファイル高速転送機能、コラボレーション機能、ワークフロー機能なども搭載されているため、ファイル共有や編集に関する課題を解消できる。 Boxを単独で導入するだけでもこうしたさまざまな効果が期待できるが、その次のステップとして何に取り組んでいくべきだろうか。解決しなければならない課題はいくつかある。

1つめの課題は、業務経緯とファイルがリンクしていないこと。内容をやり取りするツールが統一されておらずファイルの変更経緯が追えない、適切なバージョン管理ができていないといった問題は契約業務をはじめさまざまな業務でよく見られる。これは組織別にファイルが存在し、業務の流れのなかで一貫して管理されていないために起こる。業務プロセスに関連付けて部門横断でファイルを管理することが解決策となる。 次に、同じ情報を複数ファイルで管理している点だ。たとえば、製造業における部品表、設計書、調達仕様書、保守管理表などは、各書類で同じ内容が引き継がれており、一部に修正が生じた場合はそれぞれのファイルに反映させる手間が掛かってしまう。データを起点として必要なファイルを出力する仕組みに転換することが必要だ。

そして、ファイル中心の業務では業務の改善ポイントが見えづらいことも課題にあげられる。業務課題を把握するには、業務の流れ全体を管理し、情報を蓄積していくことが必要となる。 いずれにしても、ファイル作成という単体の作業から周辺の業務プロセスへとスコープを広げていくことが肝要だ。単なるファイル管理から業務プロセス管理へとステップを進めていかなければならない。

BPMのためのローコードプラットフォーム「PegaPlatform」

ここで導入を検討したいのが、BPMツールだ。部門ごとにサイロ化したシステムや、エクセル台帳やアナログな情報共有で属人的に回している業務に対し全社横断的にツールを導入することで、プロセスやデータの流れを部門横断で整流化し、全体最適を目指す。 「BPMとは、企業組織の継続的な業務改善を推進するためのマネジメント手法です。BPMツールは、単に一過性のシステム導入ではなく、システムを実装してモニタリングし業務を再設計するPDCAサイクルを回すことで、業務プロセスの継続的な効率化、品質向上を実現するものです」(山﨑氏)

  • BPMの概要

    BPMの概要

PegaPlatformは、グローバルで企業の変革実現を長年支援してきたエンタープライズ向けBPM製品だ。業務プロセス管理に求められるプロセス管理機能、システム連携、自動化に強みを持つ。さまざまな機能をローコードで実装できることから、柔軟かつ迅速にシステムを構築することができ、一過性のシステム開発ではなく継続的な業務改善に寄与できる。特定業務に特化しない汎用的なプラットフォームであり、パッケージ製品では対応できないような周辺の業務プロセスをシステム化するなど企業独自の業務に対応できるため、全社共通の基盤プラットフォームとして活用しやすいものになっていることも特長だ。

  • PegaPlatformの概要

    PegaPlatformの概要

PegaPlatformはAPIを介したBox連携も可能となっている。プロセス管理やデータ管理はPegaPlatform、プロセスの進行中に発生するファイルデータはBoxで一元管理するという形にすれば、部門横断で流れる業務プロセスやデータを入り口から出口まで一気通貫で管理できるようになり、業務プロセスとドキュメントのライフサイクルをつなぐことができる。

  • Box+PegaPlatformの概要

    Box+PegaPlatformの概要

国内企業でも導入が進むPegaPlatform

2022年6月に日鉄ソリューションズは、Pega社と戦略的パートナーシップを締結。日本語による一次保守や、既存ソリューションとの連携を進め、今後大きくPegaPlatform事業を拡大していくことを表明している。山﨑氏は、日鉄ソリューションズがサポートしたPegaPlatformの導入事例を紹介した。

とある大手建設企業では、プロジェクト管理において何百種類ものWord/Excel帳票を作成していた。帳票にしか残らない情報は利活用が困難であるだけでなく、同じ内容を別の帳票に転記する非効率な業務も残っていた。また、部署を超えた情報共有はメールや電話といった人手によって行われていた。こうした課題に対して同社は、全社横断でPegaPlatformを導入し、業務およびデータを整流化していくプロジェクトを実施。業務の課題を解決しただけでなく、業務プロセスのボトルネックを可視化して改善サイクルを回していけるようにもなった。現在は複数部署でタスクフォースを編成し、スモールスタートで重要な箇所から標準化・自動化を進めているところだ。

個別システムやアナログ処理が多数存在し、データ収集・加工もExcelなどで時間を掛けて行っていたというエンタメ企業は、PegaPlatformの導入および構築ベンダーとして日鉄ソリューションズの採用を決定した。ローコードツールのなかでもPegaPlatformは標準機能で実現できる範囲が広かった点、日鉄ソリューションズの進め方がデザイン思考など利用者の体験を重視した設計手法であった点などが評価された形だ。プロジェクトは現在進行中だが、UIが統一された営業支援システムで案件情報を一元的に管理できるようにし、業務効率化と経営判断のスピードアップを目指しているという。

BoxのほかAI OCRなどさまざまな連携ソリューションも提供

PegaPlatformには、AI OCRとの連携ソリューションもある。業務プロセスに紙のやり取りが残っている場合、紙の内容をデジタル化しデータを構造化する必要があるが、同ソリューションを用いることで、非定型文書や手書き文書からも高い精度でデータ抽出が可能となり、目視のアナログチェックなどを自動化できる。 一歩進んだ業務改革としてBPMに取り組むべき時期がきている。PegaPlatformの導入経験に加え、BoxやAI OCRを含めたさまざまなソリューションを提供している日鉄ソリューションズは、その良きパートナーとなるだろう。

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