• SCSK株式会社 大貫 氏、渡部 氏

大量生産・大量消費の時代から多品種少量生産、あるいは長く使い続けられる高品質・高性能の製品が求められるようになってきた現代。それを構成する材料や素材にも多様性やこれまで以上の性能が求められており、いかにスピーディーに、いかに目的に合う材料・素材を開発・発見できるかは、企業にとって重大な問題だ。最近では、材料開発にCAE(Computer Aided Engineering)でのシミュレーションを用いる企業も増えてきた。そうしたシミュレーション・ソフトウェアのひとつとして注目を集めているのがGeoDict(ジオディクト)だ。本稿では、その機能や特長、効果といった情報に加え、特徴である画像処理機能の高速化と昨今では大きな企業課題となっているサイバーセキュリティ対策を鑑みた上で最適なワークステーションはどういうものか、SCSK株式会社の3名に話を伺った。

材料開発に適した、サブミクロン・スケールの素材を扱える

SCSK株式会社 プラットフォーム事業グループ 製造エンジニアリング事業本部 CAE営業部 第二課 大貫 智寛 氏

SCSK株式会社
プラットフォーム事業グループ
製造エンジニアリング事業本部
CAE営業部 第二課 大貫 智寛 氏

GeoDict(ジオディクト)は、欧州最大の応用研究機関フラウンホーファー研究機構から独立したMath2Market GmbH社(ドイツ)の開発による、研究開発向け材料開発シミュレーション・ソフトウェアだ。日本では、幅広いITサービスを提供するSCSK株式会社が販売とサポートを手がけている。

そもそもシミュレーション・ソフトウェアを利用することで、どのようなメリットを得られるのか、SCSKの大貫 智寛氏は次のように説明する。

「理想的な材料を開発するためには、素材の形状や密度など、様々な要素を少しずつ変えながら実験を繰り返し、どの組み合わせなら自分たちの求める値に届くのかを探っていく必要があります。特に開発の初期段階では、膨大なパターンで実験をしなければなりません。パターンが増えれば実験の時間がかかりますし、素材が高価ならそれだけ費用もかかります。しかし実験や検証をコンピュータ上でシミュレーションすれば、実際に実験するよりも短時間、低コストでの開発が可能になります」

シミュレーションによる開発という考え方自体は新しいものではないが、GeoDictには、これまでのシミュレーション・ソフトウェアにはなかった特長があると、同社、渡部 和帆氏は言う。

SCSK株式会社 プラットフォーム事業グループ 製造エンジニアリング事業本部 プロダクト推進部 第二課 渡部 和帆 氏

SCSK株式会社
プラットフォーム事業グループ
製造エンジニアリング事業本部
プロダクト推進部 第二課 渡部 和帆 氏

「GeoDictの特徴は、扱えるもののスケールにあります。これまでのシミュレーション技術は、自動車の車体のように大きなものを対象にして風洞実験や流体解析を行ったり、逆に第一原理計算と呼ばれるような原子・分子レベルの実験を行ったりするものでした。GeoDictはその中間、ミクロスケール(およそナノメートルからミリメートルのスケール)でのシミュレーションを可能にしています」

ミクロ・スケールで扱えるものを具体的に列挙すると、繊維複合材(ガラス/カーボン繊維強化プラスチックなど)、不織布やフェルト、リチウムイオン二次電池や燃料電池の構成材(GDL、MPL、CLなど)、DPFやセラミック(焼結材など)から、岩石、人の肺組織など、実に様々だ。

こうした材料をCAEで扱おうとすれば、エンジニアが3DモデルをCADで作成する必要があるが、これは困難を要する作業だ。しかしGeoDictでは材料構造の幾何形状を簡単に生成し、様々な材料特性をシミュレーションすることができる。パラメータの入力と乱数により、様々な仮想材料の構造を生成できるほか、現実の材料をマイクロCTや集束イオンビーム装置(FIB)と操作電子顕微鏡(SEM)で撮影した連続画像から、3D構造を再構築する機能があるため、実物をそのまま再現したモデルを得ることが可能だ。

ワンパッケージで構造生成から分析・評価まで対応可能

構造生成だけではない。GeoDictには熱・電気伝導、圧力損失、機械的特性、細孔径分布、拡散、透過率といった多様な特性予測・構造分析機能もワンパッケージになっており、生成したモデルをそのまま評価に回すことができる。従来のようにCADデータを評価・分析ソフト用に変換したり、機能別にソフトをいくつも起ち上げて作業したりする必要がない。

「SCSKはこれまで、様々なシミュレーション・ソフトウェアを扱ってきました。その中でお客様から寄せられるご要望にできる限り添うものを探した結果、GeoDictに辿りつきました」と渡部氏の言うように、GeoDictは材料研究・開発を手がける多くの人々から受け入れられるものとなりそうだ。

「シミュレーションは、必ずしも実験に置き換わるものではありません。しかし実験の前段階にご利用いただくことで、素材やパラメータの因果関係を把握できるようになりますから、実験のパターン数を絞って、作業の効率化を図ることができます」(渡部氏)

  • GeoDictならモデル生成から分析・評価まで、1画面で行える

    図1)GeoDictならモデル生成から分析・評価まで、1画面で行える

EV普及、環境問題を背景に、活用シーンが拡がるGeoDict

現在、GeoDictを採用している企業は国内で60社以上あるという。この1~2年はEV車の需要が高まるのにあわせ、二次電池や燃料電池の材料開発を目的に、GeoDictを検討する国内企業が増えているという。また脱炭素の切り札として注目を集めているCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素の回収・貯留)や、CCUS(CCS +Utilization:有効利用)に関する技術開発にも、GeoDict活用の場は拡がっている。

「CCS、CCUSでは、CO2をキャッチする多孔質フィルター、キャッチしたCO2を別の化学物質に変える触媒など、ミクロ・スケールの材料が必要となりますし、集めたCO2を地中に埋める場合には、埋蔵場所の候補となった地層の地質を調べるためにGeoDictが利用されるケースもあります」(大貫氏)

  • GeoDictで描画した地質構造

    図2)GeoDictで描画した電池部材構造

生産性向上を支える、HPワークステーションとセキュリティ機能

各種製造業での活用が考えられるGeoDictだが、SCSKが推奨稼働機種としておすすめするワークステーションのひとつが、高速かつ安定して稼動させるのに十分なスペックを備えているHP Z8 G4 Workstationだ。GeoDictの稼働検証機としても使用された。図2のような複雑な構造のモデルを生成する場合でも、短時間に描き出すことができる。

さらに、性能面だけではないHPワークステーションの魅力をSCSKの大野 敏亨氏(プラットフォーム事業グループ ITエンジニアリング事業本部 サーバ&ストレージ部 営業第一課)は次のように説明する。

「CPUやメモリ、グラフィックなどの性能はもちろんですが、注目すべきは安定性だと考えます。安定性が高ければ稼働率が上がり、その結果、生産性も上がるというわけです。さらにHPの場合、その安定性を生み出しているのがセキュリティ機能です」

HPの特徴的なセキュリティ製品・機能として、大野氏は特に二つを挙げた。ひとつめは大企業および公共機関向けのエンドポイントセキュリティとして提供されているHP Sure Click Enterpriseだ。外部からの攻撃に対し、エンドポイントを守る機能が備わっている。具体的には、メール、チャットアプリ、ブラウザ、USBメモリの実行・読込を、メインのOS上ではなくマイクロ仮想マシン内で行い、マルウェアの混入やフィッシング、異常な振るまいが検知されれば、被害をそのマイクロマシン内に留める仕組みだ。

もうひとつは、HP Sure Recoverという、HPのビジネスPCに搭載されたリカバリー機能だ。「万が一、マルウェアやランサムウェアの被害に遭って、社内のPCが一斉にクラッシュした際、それをまるごと復帰させる機能です」(大野氏)

ハードウェアのOSを含むデータがすべて消去されてしまっても、インターネットからOS(Windows 10)を再インストールすることができる。プライベートネットワークやパブリックインターネットに、復旧に使用する独自のカスタムイメージを保存しておけば、単なるOSの再インストールだけではなく、より事前の環境に近い状態に戻すことも可能だ。

「今の時代は多層防御が常識となっていますが、内部からの攻撃、例えばサプライチェーンに属する他社が納品したプログラムに、時限式のマルウェアが隠れていた場合には、なかなか予防が難しいのが実情です。ですからHP Sure Click Enterpriseでリアルタイムにエンドポイントを保護するのにあわせ、既に侵入していたマルウェアによってシステムがダウンした場合にはHP Sure Recoverで復旧するという、二段階でのセキュリティは非常に有効だと考えます。仮に何かトラブルが起こっても稼動時間を大きく減らすことなく、生産性を維持できるからです」(大野氏)

機密事項を多数扱い、厳重なセキュリティ対策が必須な研究・開発部門にとって、HPのセキュリティ製品・機能は安全性を担保してくれるだけでなく、ビジネスに必要なスピード感を落とさないという面でも貢献してくれそうだ。

最後に大貫氏から、研究・開発部門で材料開発に取り組む読者諸氏へのメッセージをもらった。「日本の製造業では、まだまだ材料開発にシミュレーション技術を採り入れられているところが多いとは言えません。少しでも興味をお持ちの方、どうITを使えばいいか悩まれている方がいらっしゃれば、我々の知見を活用していただきたいと思っています。ぜひ一度、お声がけください」

  • SCSK株式会社 大貫 氏、渡部 氏

関連リンク

GeoDict
HP Z8 G4 Workstation
HP Sure Click Enterprise
HP WOLF SECURITY

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