昨今、企業におけるDX推進の流れを受けてテレワークが普及し、現在は出社も交えたハイブリッドワークへの移行が進んでいる。そうしたなか、各社、時間や場所を問わない新たな働き方を模索する一方で、従業員エンゲージメントの低下、コラボレーションの難しさといったこれまでにないコミュニケーションの課題も浮き彫りになってきている。そこで注目されているのが、仮想空間にオフィス環境を構築したバーチャルオフィスだ。
日立ソリューションズが提供するバーチャルオフィスサービス「仮想オフィスサービス」は、テレワーク・ハイブリッドワーク時のコミュニケーションに不足しがちな要素を補完できることが最大の特長だ。今回は、自社でも積極的に活用しているという同社のスマートライフソリューション事業部 ワークスタイルイノベーション本部 安部寛之氏に、仮想オフィスサービスの強みや活用方法について伺った。
コミュニケーションのあり方を見直す時期にきている
——現在では、多くの企業でテレワーク・ハイブリッドワークが進んでいます。そういった流れのなかで、企業はどういった課題に直面しているとお考えですか?
テレワークの必要性が叫ばれた初期の頃は、テレワークをしたくても在宅用のデバイスが足りなかったり、社内ネットワークへ接続する回線が混雑していたりと、ITインフラに関する多くの課題が発生していました。現在では、多くの企業がテレワーク対策を実施し経験を積み、こうした課題は解消されてきています。一方で、オフィス出社へ戻していく動きもあり、ハイブリッドワークを選択する企業も増えています。ハイブリッドワークでは、テレワーカーとオフィスに出社する人が混在するなど、これまでにないコミュニケーションの形が求められるようになります。テレワーク・ハイブリットワークを実践する企業は、ITインフラのその次の課題として、コミュニケーションのあり方を見直す時期に来ているところだと思います。
多くの企業では多様な働き方を認める観点から、今後もハイブリッドワークの普及は進んでいくと思いますが、ソフト面・ハード面、両面から自社のカルチャーにあった働き方改革が求められています。特にコミュニケーションは、ITインフラと違って目に見えづらい課題であり、その実態を捉えきれていない企業も多いのではないでしょうか。
——日立ソリューションズでもテレワークを実践されていますが、どのような課題を感じられていましたか?
やはりコミュニケーションの難しさですね。⾮対⾯のやりとりでは相⼿の気持ちが察しにくく、不安が生じます。出社していれば相手の姿が見えるので気軽に話しかけることができますが、テレワークでは、打ち合わせ中なのかどうか、体調は問題ないかなど、相手の状態がすぐにはわかりません。その人のスケジュールを見たり関係者に聞いたりする作業が発生し、コミュニケーションコストが高まりますし、時間のロスにもつながります。そういった状況では、出社時には自然と生まれていた雑談も発生することなく、淡々と一人で業務を進めているような孤独感にもつながっていたと思います。
——そうした課題があるなか、テレワークを定着させるために会社としてどのような工夫をされていますか?
当社では2016年から全社運動として働き方改革を推進しており、テレワーク促進やサテライトオフィスの設置など柔軟な働き方の実現に向けた取り組みを実施してきました。現在では、オフィス勤務を前提とした働き方には戻さず、テレワークと出社を柔軟に組み合わせた「最適なワークスタイル」の確立をめざしています。また、働く環境や働きやすさの整備だけでなく、従業員の働きがいやEX(従業員体験)向上も推進している状況です。そのためのコミュニケーションの工夫として、1on1や雑談をしやすい仕組み・雰囲気づくり、インセンティブ制度の設計など、テレワークを含め働く環境すべてで心理的安全性を高めるための取り組みを行っています。また、仮想オフィスサービスをはじめとするコミュニケーションツールを導入するなど、ソフト面とハード面の両方から円滑なコミュニケーションを実現するための活動を実践しています。
——テレワークを定着させるための実践的な工夫をしている企業としていない企業では、どのように差が出てくるのでしょうか?
テレワークによって、コミュニケーションの頻度や質が低下してしまっているだけでなく、雑談が減っているという声もあがっています。オフィスでは、エレベーターホールや喫煙所、すれ違いざまなどに偶発的な雑談が生まれていましたが、テレワークの場合は、機会を意図的につくらない限りは雑談の機会が減ってしまいます。
雑談がなければ業務ができないというわけではありませんが、雑談は、新しいアイデア創出のきっかけやチームメンバーとの関係性構築の機会としても有効ですし、オンとオフのメリハリの確保やストレス低減などさまざまな影響があると考えています。雑談できるような関係性が構築できていれば、認識の齟齬が起きづらくなりますし、言いたいことが言えないという不満も少なくなります。必然的にチームのパフォーマンスも高くなり、生産性向上が見込めるはずです。離職につながる孤独感も払拭できるかもしれません。コミュニケーションに関する工夫をしているかどうかで、組織全体の生産性や人財定着率などに大きな差が出てくると考えています。
業務ツールでは拾いきれないコミュニケーションを補完し、リアルなオフィスとの
マップ連携も可能
——日立ソリューションズが提供している「仮想オフィスサービス」の特長を教えてください。
一番の特長はMicrosoft 365と連携していることです。Teams、Outlookからステータスやスケジュール情報などを連携することで相手の状態が把握しやすく、会話の際にはTeamsが起動できるなど、普段の業務で使用しているツールと親和性が高いものとなっています。これらMicrosoft 365内のツールではカバーしきれなかったコミュニケーションを生み出し、より円滑にすることが可能です。
またチームを定義してチーム内のコミュニケーションを行う機能もあります。チームの枠を取り払うオープンなコミュニケーションも実現しながら、チーム内のクローズドなコミュニケーションも取ることが可能です。
さらに、PC負荷が少なく、操作性がシンプルであることも使いやすさ、浸透のしやすさにつながっています。バーチャルオフィスというと、3Dアバターなどのメタバース関連技術を用いたものもありますが、本サービスは基本的に平面マップのフロアがメインとなっており、動作が軽く簡単に操作することができます。
比較的大人数の企業様にご利用いただくことを想定していますが、従業員人数が多いと、ユーザーの年代もITリテラシーもさまざまです。こうしたコミュニケーションツールは、一部のITリテラシーの高い方々だけでなく、より多くの人に使っていただけるほど効果を感じられると考えていますので、誰もが使いやすいシンプルなツールであることはとても重要です。
——Teamsをはじめ他のコミュニケーションツールとはどのように使い分ければよいでしょうか?
本サービスの特長の1つは、気軽なコミュニケーションが可能であることです。音声やビデオ通話を用いた会議やリアルタイム性が求められるような業務に直結するコミュニケーションはTeams、Teamsだけではカバーできない情報、たとえば日常の雰囲気づくりや挨拶、体調の確認や雑談などを行ったりする際には本サービスといった形で使い分けていただくとよいと思います。本サービスは、自由に、好きなタイミングで利用できるため、離れて働くことで高まってしまったコミュニケーションのハードルを下げ、気軽に声をかけやすい環境づくりを実現できると考えています。また、導入においては、「監視されている」と感じてしまう人への配慮も必要です。隙間時間は仮想オフィスサービスを使いながら、定期的に個別のコミュニケーション時間をつくる等、特に管理職の方はリアルの時とは違ったきめ細かなコミュニケーションでフォローすることも大事なのではないでしょうか。
——仮想オフィスサービスで特に需要が高い機能・好評な機能は何ですか?
導入をご検討いただいている企業様には、Microsoft 365との連携を評価していただいています。普段使っているツールと連携したい、ツールが乱立すると大変といった現状があります。
また、好評いただいている機能はコメント機能です。導入いただいたお客様から「コメント機能がコミュニケーションの活性化になっている」とのお声も多くいただいています。コメント機能では、一言メッセージのようなものを各個人で設定することができます。他の人のコメントを見ることができたり、コメントに対してリアクションや返信を送ったりすることも可能です。コメントは、最近のマイブームや休日の過ごし方など、各自が自由に書き込むことができ、社内SNSのような感覚で利用することができます。こうした仕組みから偶発的なコミュニケーションが生まれていきます。
私の所属している事業部では、コメントの内容に悩む場合、「執じぃ」というキャラクターが「オススメの漫画はなんですか?」などと日替わりで提供してくれる話題を利用して、毎日負担なく継続できています。また、こうした共通の話題があることで、コミュニケーションの活性化も期待できます。リアルのオフィスに出社しているだけでは話しかけてこないような人と会話が生まれるケースも多いようですね。テレワークだと業務に集中してしまい、上や横とのつながりが希薄になりがちですし、隣の部署の上司が話しかけてくるというケースはほとんどないと思いますが、本サービスでは縦横斜めの気軽なコミュニケーションが実現できます。
これらのやりとりは可視化され、後から追うこともできるので、心理的安全性も確保されているといえます。たとえば、オフィスでの雑談に交じるような感覚が得られるだけでなく、コミュニケーションが苦手な人でも見ているだけで楽しい気持ちになるといった効果があります。私個人としても、ログインしていないと寂しさを感じるようになってきています。
——在宅の人も、出社している人との情報格差もなくなりそうです。
そうですね。会議内容のフォローやちょっとしたアイデアの共有にもお使いいただけます。また、出社している人にとって嬉しい機能もあります。フリーアドレス制の企業が増えるなか、他の社員がどこに着席しているのかわかりづらいという課題を抱えているケースも増えています。本サービスでは、オプション機能としてリアルの座席と連動させたマップをつくることができます。リアルで着席する際、2次元バーコードを読み込めば仮想オフィス上のマップに反映されるので、誰がどこに座っているか把握することが可能となります。出社率の把握にも役立つだけではなく、出社している人達のすれ違いをなくし、コミュニケーションを促進します。
また、テレワーク中の人にとっては、周りの顔が見えるという安心感にもつながります。特に新入社員や転職者、部署異動をした社員などがいきなりテレワークをすることになると、チームで働いている実感が得られにくい面もあるように思います。本サービスでは、アイコンでその人の状態を把握でき、同じ空間にいる感覚が得られるので、孤独感の解消も期待できます。
定着にはトップダウンでの呼びかけが重要。トライアル時のサポートも充実
——貴社でも仮想オフィスサービスを活用されているとお聞きしました。導入時に気をつけるポイントがあれば教えてください。
まずは、本サービスをどういうことに使ってほしいか、導入の目的をユーザーに対して明確に説明することが重要です。また、コミュニケーションツールは皆がログインしなければ効果が得られないので、ログインへの呼びかけは必要です。端末起動時に自動で立ち上がるようにする方法もありますが、管理職の方々にトップダウンで呼びかけていただくことをおすすめします。これにより、横だけでなく縦や斜めのコミュニケーションが生まれるようになります。当事業部でも本部長自らが積極的に利用しており、全体のコミュニケーションも活性化しています。管理職向けには、「毎朝、チームメンバーの出勤状況の通知」や「退勤時に勤務を続けているチームメンバーへの声かけ」の機能もありますので、コミュニケーションの活性化だけでなく、チームメンバーの体調不良などの早期発見・早期対処にもつなげることができます。
——利用に抵抗を感じる方々へはどのように対応していくべきでしょうか?
コミュニケーション自体に苦手意識を感じられる方もいらっしゃいますので、強制すべきものではないと考えています。本サービスは、コミュニケーションに関する機能だけでなく、周りのメンバーの存在が可視化されることによる一体感も大切にしています。コミュニケーションが苦手な方は、見るだけでも良いのでログインだけはするというルールを設けておくとよいでしょう。
——実際に仮想オフィスサービスを導入する企業にはどのようなサポートがあるのでしょうか?
導入を検討されている企業様には、まず2ヶ月のトライアルからご利用いただいています。当社としては環境構築や通常の問い合わせサポートのほかに、カスタマーサクセスとして活用支援も行っています。まずは使ってみようと漠然と利用をスタートしようとされるケースもありますが、課題が整理できていなければ効果が見込めませんので、当社では導入前の課題整理からサポートさせていただいています。
また、2~3週間に一度お送りする利用状況のレポートをみながら、運用面の提案なども行っています。たとえば、とある機能が使われていなければ具体的な利用方法をご提示させていただいたり、ログイン率が悪ければフロア内でのイベントの開催を提案させていただいたりなど、自社内外の知見をもとに効果的な使い方をお伝えしています。
2ヶ月というトライアル期間は他の製品と比べて長いという声をいただくこともありますが、当社としては、トライアル期間で使い勝手を判断していただくことに加え、社内で定着するところまでサポートできればと考えています。
働きやすい環境づくりは人財確保の観点からも避けては通れないテーマ
——今後、働く環境には何が求められ、どう変化してくのでしょうか?
企業側からの「出社に戻したい」という声も多くなってきていますが、従業員側では、テレワーク・ハイブリッドワークによる柔軟な働き方を求める声が多くあります。企業としてはこうした現場の声を汲み取る必要があるでしょう。昨今、テレワーク・ハイブリッドワークができるかどうかは、就活生や転職希望者が企業選びで重要視するポイントにもなっています。もちろん職種や業種によって難しいケースもありますが、働きやすい環境づくりが人財確保につながるという流れは今後ますます加速していくと考えています。
——さいごに、働き方改革を推進されている企業へ、メッセージをお願いいたします。
テレワーク・ハイブリッドワークが普及するなか、職場での新たなコミュニケーションの課題が出てきています。離れていても従業員同士のつながりを確保し、コミュニケーションが生まれる場をうまく設計していくところまで含めて働き方改革を考えていくことが重要になってきています。人財流出防止やEX向上をめざすためのツールとしても、ぜひ仮想オフィスサービスをご検討していただけばと思っています。
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