25年以上にわたりルーターやスイッチ、無線LANアクセスポイントといったネットワーク機器を市場に投入してきたヤマハ株式会社は、近年社会問題となっているIT人材不足を受け、ネットワークエンジニアの育成・スキルアップに取り組んでいる。

2021年に認定制度「ヤマハネットワーク技術者認定試験(Yamaha Certified Network Engineer:以下YCNE)」を始動させ、同年6月にネットワークの基礎知識を網羅した「YCNE Basic★」、2022年11月からはより実践的な知識・スキルを問う「YCNE Standard★★」をスタートさせた。本稿では、YCNEプロジェクトの推進を手掛けた同社の中村 拓博 氏、奥田 審一 氏、牧野 秀彦 氏にお話を伺い、YCNEが見据えるビジョンを確認していく。

  • [メインビジュアル]ヤマハネットワーク技術者認定試験

法人顧客に付加価値を届けるために生まれた、ヤマハ初のネットワーク技術者向け公式認定制度YCNE

企業のIT戦略においてネットワークインフラの重要性は高まり続けており、ネットワーク構築・運用スキルを持った人材の育成は喫緊の課題だ。これまで多くの企業にネットワーク機器を提供してきたヤマハは、こうした社会問題解決に貢献するために、公式認定制度YCNEを開始した。本プロジェクトの責任者を務める中村 拓博 氏は、プロジェクトの背景を次のように解説する。

「ネットワーク技術の認定試験は多くありますが、YCNEは資格を得るだけの試験ではありません。当社がこれまで培ってきたネットワークの知見を惜しみなく盛り込んだ、ヤマハならではの試験となっています。YCNEを通して、ヤマハのネットワーク機器の販売を手掛ける販売代理店の営業担当やエンジニアの構築・運用技術を向上させ、国内の多くのユーザーに価値を提供していくことで、日本のビジネスを活性化させるというのが本プロジェクトの全体像です」(中村氏)

  • [写真]インタビューに応じる中村 拓博 氏

    ヤマハ 株式会社 音響事業本部 コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 マーケティング&セールスグループ グループリーダー 中村 拓博 氏

YCNEは基礎の「YCNE Basic★」、実践の「YCNE Standard★★」、エキスパートの「YCNE Advanced★★★」といった3つのレベルで構成されている。まずはネットワークエンジニアを目指す人材を多く輩出させることを狙いとしたBasic★を2021年の6月にスタートさせている。Basic★はヤマハ製品の利用者だけでなく、専門学校や高校・大学などでSEを目指している学生も受験対象とし、試験の内容は一般的なネットワーク知識を網羅したものとなっている。中村氏はBasic★の反響について次のように語る。

「ネットワーク初学者、学生などにくわえ、ヤマハ製品の販売代理店のエンジニアや製品ご利用のお客様、大変多くの方々に受験いただけたことで、想定を超える受験者数に驚く結果となりました。昨今では専門学校のカリキュラムとして採用される動きも加速しており、来年度からはさらに多くの方に受験していただけると予想しています」(中村氏)

市場ニーズとヤマハのノウハウが詰め込まれた、中級「YCNE Standard★★」が登場

YCNE Basic★への反響に確かな手応えを感じたヤマハは、次のステップとなるStandard★★を2022年11月にリリースした。YCNE Basic★は基礎的な内容でネットワーク初学者に向けた内容であるのに対し、YCNE Standard★★はより実践的な内容で、実務に直結するような問題で構成されている。ネットワークインフラを構成する機器を操作するところにまで踏み込まれており、ネットワーク機器の利用を想定した内容になっているという。YCNE Basic★・Standard★★の認定試験の監修を手掛けた奥田 審一 氏は、試験の内容について次のように説明する。

「ヤマハのネットワーク機器は国内で高いシェアを持っており、その豊富な実績と経験に基づいて今回の試験を設計するように心がけました。そうすることでより実務に沿った、実践的なスキル評価ができる試験内容を実現しています。まずは基礎となるBasic★に合格された方が次のステップとして挑戦するのには、好適な認定試験に仕上がっていると思います」(奥田氏)

  • [写真]インタビューに応じる奥田 審一 氏

    ヤマハ株式会社 音響事業本部 プロオーディオ事業部 (兼)コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 マーケティング&セールスグループ 主事 奥田 審一 氏

Standard★★は受験を通して、次の3つのフェーズで構成されている。

  1. 顧客の要求を正確に理解し、適切な機材やネットワーク構成を提案できる「提案力
  2. ネットワークインフラの安定的な構築運用を可能とする「運用管理力
  3. 万が一トラブルが発生した際に迅速に対応し、ビジネスへの影響を最小限に抑える「障害対応力(保守)

奥田氏と同じく試験の監修を手掛ける牧野 秀彦 氏は、YCNE Standard★★を通じてIT人材に必要な技術力が身に付けられると話を展開する。

「昨今のIT人材に求められる技術力はレイヤーによってさまざまですが、YCNE Standard★★は提案・運用・保守の3つのフェーズを経て、ユーザー企業にメリットを享受できる能力を身につけられる試験となっています。受験を通して受験者個人、所属する企業のサービス価値を高める効果が期待でき、顧客からの信頼獲得にもつながるものと考えています」(牧野氏)

  • [写真]インタビューに応じる牧野 秀彦 氏

    ヤマハ株式会社 音響事業本部 コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 マーケティング&セールスグループ 主事 牧野 秀彦 氏

試験内容の7割を占めるネットワーク機器の操作・設定と環境構築手順については、ヤマハが培ってきた経験やノウハウが惜しみなく盛り込まれている。奥田氏はYCNE Standard★★を受験することで実務のためのスキルを身につけられる背景ついて次のように言及する。

「当社は25年以上にわたり、ビジネスパートナーやユーザー企業とともに製品を作り、ユーザーの声を反映した製品を市場に投入し続けてきました。リリース後も継続的なサポートを行い、カスタマーサポート部門にはユーザーの困りごとなど、ネットワーク構築におけるさまざまなノウハウが蓄積されています。YCNE Standard★★には、こうした知見も取り入れながら構成されているため、よりネットワーク現場のリアルな内容を反映できると思います」(奥田氏)

実務的な知識や機器の操作をわかりやすく解説するテキストが発売

YCNE Standard★★の試験内容を網羅した書籍「ヤマハルーター&スイッチによるネットワーク構築 標準教科書」が2022年10月にマイナビ出版から発売された。YCNE Standard★★同様に“実践”をテーマとし、ネットワークを安定的に運用することをゴールとした内容となっている。

ヤマハルーター&スイッチによるネットワーク構築 標準教科書

1章 ネットワークを構築・運用する上での必須技術
2章 中規模ネットワークの構築
3章 要件に合わせたネットワークの構築
4章 ネットワーク運用管理
5章 セキュリティ

「基礎編の『ネットワーク入門・構築の教科書』と比べて内容はさらに深くなりますが、初めてヤマハのネットワーク機器に触れる方にもわかりやすいようにイラストや写真を豊富に使われている点や、基礎的なセキュリティ対策が詳細に解説されている点がポイントです。YCNE Standard★★を受験される方はもちろん、教本として実践的なスキルを身に着けたい方にもぜひ手にとってほしい1冊です」(奥田氏)

最上位認定試験のリリースをはじめ、多角的な施策でネットワークエンジニアの底上げを図る

このように、YCNEを通じて、質(スキル)・量(人員)の両面でネットワークエンジニアの底上げを図るヤマハでは、今後も継続して育成+スキルアップの施策を展開していく予定だ。2023年秋を目処に、最上位の認定試験となる「YCNE Advanced★★★」のリリースを目指しているほか、既存の YCNE Basic★と Standard★★についても、年に1度アップデートを行い、最新の技術・トレンドを取り入れた内容にブラッシュアップしていくという。

「日本企業のIT戦略に不可欠なネットワークのスキルセットを身に付けてもらいたいという思いでYCNEを展開しています。今後リリースする予定のYCNE Advanced★★★もぜひ多くの方にチャレンジしてもらい、ネットワーク構築のプロフェッショナルであることを証明していただければと考えています」(中村氏)

さらにヤマハは専門学校や公立学校などを対象に、YCNE Basic★の内容をカリキュラムとして取り入れ、テキストや実習用機材を提供する支援を行っている。実際、愛知県にある山本学園情報文化専門学校の専門課程では、YCNEの資格取得を視野に入れた実習授業を2022年度より開始した。ヤマハのカリキュラム支援を受け、従来の座学中心の授業とは一線を画す実践的な実習授業を展開しているという。

最後に奥田氏は、受験を検討する読者に向けてメッセージを送り、インタビューを締めくくった。

「YCNE Standard★★は、Basic★に合格した方はもちろんですが、すでにネットワークインフラの最前線で活躍中の方も得るものが多い試験内容になっていますので、ぜひ幅広い方に受験をおすすめしたいと思います。また、ネットワークエンジニアを本格的に目指す方にも『ヤマハルーター&スイッチによるネットワーク構築 標準教科書』を活用いただきながら、ぜひ受験にチャレンジしていただきたいですね」(奥田氏)

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