2022年2月24日、25日の2日間にわたって開催された、国内最大級のデータ活用イベント「NetApp INSIGHT Japan 2022 Digital」。昨年と同様にオンラインで配信され、データ活用の最前線で活躍するスペシャリストにより150以上のセッションが展開された。本稿では25日に配信されたセッション「ハイブリッド環境におけるデータ基盤活用を支える富士通のサブスクリプションモデルご提案」の内容をレポートする。

変化が激しいニューノーマル時代のデータ基盤に求められるもの

富士通株式会社は、「重要資産であるデータを永遠守る」というコンセプトのもと、先端のハードウェア技術を備えたストレージ「ETERNUSシリーズ」を展開し、企業のデータ管理の課題を解決してきた。一方で、DXの加速や新しい働き方の浸透、エッジデータの拡大など、急速に増え続けるデータを運用するために、データ基盤、いわゆるストレージなどのインフラ領域に新たな役割が求められている。本セッションでは、同社の戦略企画・プロモーション室 インフラプロモーションセンター ストレージ商品企画部 部長 大山敏弘氏が登壇し、ニューノーマル時代に対応したデータ基盤の在り方について紐解いていく。

大山氏によると、人・データ・サービスをつなげ新しい価値を創出するために、「柔軟性」と「性能」の両方を兼ね備えたデータ基盤が不可欠だという。それを実現するための手段として「ハイブリッドクラウド」と「サブスクリプション」の2つのキーワードを挙げている。

「国内エンタープライズインフラストラクチャ市場配備モデル/配備場所別市場予測、2022 年~2025 年:(IDC#JPJ48399721)」レポートによると、企業に蓄積されるデータ量が爆発的に増加したことで、パブリッククラウドを利用する企業は増加傾向にあり、今後もこの傾向は続くと予測されている。しかしそれに伴い、コストの増加やオンプレミス・クラウド間のデータ連携の煩雑さ、セキュリティの問題といった新たな課題が顕在化していると大山氏は警鐘を鳴らす。こうした課題を解決するために採用されるようになったのが、オンプレミスとクラウドの“良いとこ取り”をするハイブリッドクラウドだ。同調査では80%を超えるアンケート回答者のハイブリッドクラウドを利用中、もしくは利用検討中と回答している。

「実際に利用しているユーザーは20%程度で、ニーズは高まっているものの、導入はこれからといった状況がこの調査結果から読み取れます」と大山氏は説明する。

NetAppとの連携を強化し、FabricPoolやCVOを活用したハイブリッドクラウド環境構築を推進

富士通では、オンプレミス環境のストレージソリューションを中心にビジネスを展開するNetAppと1998年からパートナシップを結び、長きに渡り協業体制を築いてきた。2020年には協業関係をさらに拡大し、製品ラインナップの見直しとリブランドを実施。現在は富士通における主力ストレージ製品として、ETERNUS AX/HX シリーズ、ETERNUS AB/HB シリーズを展開している。加えて、クラウドと組み合わせたハイブリッドクラウド型のソリューションとして、オブジェクトストレージとの階層化を実現する「FabricPool」、クラウドのIaaS基盤上でONTAP(NetAppのストレージOS)を動かす「Cloud Volumes ONTAP(CVO)」といった機能・サービスも提供し、さらに新しくリリースされたフルマネージドサービス「Amazon FSx for NetApp ONTAP」も、昨年12月より富士通から提供を開始されている。

大山氏は、富士通ならではのハイブリッドクラウド型の提案例として、富士通のパブリッククラウド「FJcloud-O」と「FabricPool」を併用した特別プロモーションについて次のように解説する。

「階層化を行うクラウド上のオブジェクトストレージに富士通が提供するFJcloud-Oを選択した場合、一般的なクラウドとの連携時には必要となる”FabricPool”のライセンスが不要となります。さらにFJcloud-Oは純国産のクラウドサービスなため、海外リージョンに企業の重要データを保管する際のセキュリティ上の懸念も払拭できます」(大山氏)

大手流通企業では100TBを超える統合ファイルサーバーとしてオールフラッシュストレージのETERNUS AXを導入。FabricPoolでパブリッククラウド(FJcloud-O)との階層構成にすることで、単純増設と比べて約20%のコスト削減に成功したという。オンプレミス環境の無尽蔵な増設を抑制し、フラッシュベースの高速アクセスを利用しながら、アクセス頻度の少ないデータをクラウド退避するといった構成を、ユーザーの操作性を損なわずに実現できた点がこの事例のポイントだ。

また、とある製造業ではCVOを活用してハイブリッドクラウドを実現している。オンプレミスの仮想化基盤としてETERNUS AX、そのバックアップ先としてCVOを採用した。サーバーなどのリソースを必要に応じて即時に用意できるクラウドの特性を最大限に活かし、コストを抑えた災害対策環境の構築に成功したという。

オンプレミス環境を月額課金で利用できるサブスクリプションモデル

このようにハイブリッドクラウドの活用が進んだことで、オンプレミス環境へのニーズも変化していると大山氏は話す。

「ハイブリッドクラウドを導入された企業の多くが、クラウドの柔軟性に触れたことで新たな運用要件が生まれました。オンプレミス環境においてもクラウドのように自由度を高めたいといったニーズが高まっているのです。こうした要望に対する富士通が提供する解の1つが『サブスクリプションモデル』です。パブリッククラウドは資産の保有が不要、初期コストも抑制が可能で、インフラの老朽化に対応する必要もありません。一方でオンプレミスはリソース占有型なのでセキュリティの向上、サービスレベルの確保を実現しながら、カスタマイズ性も高いといった特長があります。この両者のメリットを併せ持つのがサブスクリプションモデルなのです」(大山氏)

富士通のサブスクリプションモデルは月額課金の利用が可能で、固定型と変動型を選択できる。前者は機器構成に基づいた一定金額を毎月支払う方式で、支払金額を平準化できるといったメリットがある。容量増加の見込みがあまりないなかで計画的な予算執行を実現したいといったケースにうってつけのプランとなる。後者の変動型は、毎月の使用容量に対して課金が発生する。容量の増加幅を予測しづらく、過剰なIT投資に悩んでいる企業にとって有効な方式で、使った分だけ支払うことでハードウェアコストの適正化を図ることが可能だ。

運用面では設置から運用時のインフラ監視・保守、撤去までの一連の作業を富士通がトータルでサポートし、オンプレミス環境の安定稼働を実現する。さらにWeb上のサービスポータルで利用状況がタイムリーに可視化され、適切な増設計画をたてられる。また、ハードウェアが老朽化した場合に、最新のハードウェアに入れ替えられる「テクノロジーリフレッシュ」の提供も計画しており、入れ替えにおける並行運用の重複請求をなくすことで支払いを平準化させるという。これにより安定した長期運用が可能になると大山氏は力説する。

セッションの後半では、富士通が提供するサブスクリプションモデルのメリットを、実際の導入事例を取りあげながら解説されている。

月額固定方式のサブスクリプションモデルを導入したことで、初期投資を約5分の1に削減、さらにキャッシュフローの改善にも成功した製造業の事例や、明瞭な将来のデータ量に対する過剰投資を避けたいといった課題を抱えるなか、変動型従量課金のサブスクリプションモデルを採用し、ハードウェアの投資コストを20%削減したという公企業の事例が紹介された。

  • 初期投資を約5分の1に削減、キャッシュフローの改善に成功した製造業

  • ハードウェアの投資コストを20%の削減に成功した公企業

「富士通のサブスクリプションモデルでは、オンプレミスが持つセキュリティ・カスタマイズ性の高さはそのままに、容量に応じた課金による適正投資を実現します。また、オンプレミス環境でもクラウド同様に資産を持たず、オンデマンドで即時拡張が可能です。ETERNUS AX/HX/AB/HB シリーズの全モデルがサブスクリプションに対応しています」(大山氏)

クラウドとオンプレミスのメリットを併せ持つハイブリッドクラウドと、クラウドライクなオンプレミス環境の運用を可能とするサブスクリプションを展開する富士通が見据えるビジョンには、今後も注視していく必要がありそうだ。

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