近年、アバターを介して仮想空間でコミュニケーションを行うメタバースの世界観が注目されてきている。そんな中、ITアウトソーシングを事業の柱とするトランスコスモス株式会社は、コロナ禍で半ば強制的にスタートせざるを得なかったリモートワーク環境におけるコミュニケーション課題を解決するため、バーチャルオフィスツール「oVice(オヴィス)」を導入した。導入前に抱えていた課題、効果を浸透させるための試行錯誤、そして活用開始後に感じているメリットについて、同社でサービスの導入・展開を牽引する立場にある3名のコメントをまじえながら紹介していく。

オンライン業務で「隙間のコミュニケーション」がなくなってしまった

1966年創業のトランスコスモスは、日本国内67拠点に加え、中国、韓国、東南アジア、欧米各国にも100を超える拠点を展開している。

同社のデジタルインタラクティブサービス本部も他の企業と同じく、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、2020年2月から4月にかけ、それまでの完全出社からリモートワークの在宅勤務に切り替えていった。その過程で、業務連絡などについてはすでにシステムが整備されており、大きな問題が起きることはなかったが、働く環境が急速かつ半ば強制的にリモートへ移行していく中で、社員間のコミュニケーションに課題を感じるようになったという。同本部でHRマネジメントに携わる木幡正彦氏は、当時の状況を次のように振り返る。

トランスコスモス株式会社
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括
デジタルトランスフォーメーション総括デジタルインタラクティブサービス本部
サービス管理統括部 サービス管理部
HRマネジメント課 課長 木幡正彦氏
(所属は2022年3月時点)

「Web会議上ではどうしても仕事の話に集中するため、雑談やパーソナリティの理解につながるような仕事以外の会話、いわゆる隙間のコミュニケーションがなくなってしまい、社員の相互理解に課題が出てきていました。とくに新しく加わった新卒・中途採用の社員にとって、同期や先輩社員と関係性を構築することが難しくなっていました」

オンラインでのコミュニケーションにハードルを感じる、他の社員と良い関係性をなかなかつくれない、もっと多くの社員と関わり合いたい……そんな切なる悩みの声が、実際に現場から、とりわけ新卒・中途採用の新人メンバーから多くあがっていたという。

そのため、感染者数が一時的に減り出社できるようになった時期には、リアルのオフィス改善を行うなどコミュニケーション促進の工夫を続けた。ところが、緊急事態宣言やそれに準じた措置がたびたび出される中、リモートワークを余儀なくされる状況が続き、やはりオンラインで隙間のコミュニケーションをいかに生み出せるかという観点から施策を検討するようになったと木幡氏は語る。

その検討を進める過程で知ったのが、ビジネス向けのメタバースによるバーチャルオフィスツール『oVice』だ。oViceはWeb上のバーチャル空間で自分のアバターを動かし、近くにいる社員のアバターに声をかけて実際に会話ができるため、リアル空間のオフィスと近い感覚で利用できる。まさに廊下や食堂でばったり会ったときのような、偶発的なコミュニケーションづくりに活用できるのが大きなポイント。誰もが集まり交流できるオープンスペースのほか、限定したメンバーのみで会話できる会議室などのスペースが用意されている点も、リアルオフィスを彷彿とさせる使い勝手だ。

社員発案でバーチャルオフィスツール「oVice」の導入へ

実はこのツールの採用を発案したのは現場のメンバーであったと、デジタルインタラクティブサービス本部でサービス管理統括部長を務める宮園康太氏は言う。

トランスコスモス株式会社
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括
デジタルトランスフォーメーション総括デジタルインタラクティブサービス本部
サービス管理統括部 統括部長 宮園康太氏
(所属は2022年3月時点)

「ある社員が社内のビジネスチャットで『これ使ってみたいな』とつぶやいたので、それなら試してみようという話になり、トライアルを始めました。実はそれ以前にも、コロナ禍が始まった頃に他のバーチャルオフィスツールを試しに使ったことはあるのですが、インターフェースが英語ベースであったり、フローが複雑だったりで決め手に欠けていたのです」

バーチャルオフィスツールを選びあぐねていたちょうどそのタイミングで、現場の社員から声が上がった。同本部はもともと「良し悪しを判断するには使ってみなければわからない」というスタンスで、社員の要望をすくい上げてはすぐに試す風土があるため、oViceのトライアルについてもほぼ即決だったという。

「実際に試してみたところ、バーチャルオフィス内でアバターを動かすと、それに合わせて自分の声が届く範囲が明確にわかるというUIが非常に直感的だったので、これは良いなと実感しました」と宮園氏。トライアルを使った社員からも好評であったのに加え、利用料金が1アカウントごとの設定ではなくスペースに対する課金であるため、コスト管理もしやすいと評価。2021年 4月に本格導入を決定した。

当初は10フロア程度を借り、部門ごとに大まかなエリアを割り当てる程度で、格段のルールを設けずに利用をスタート。社員にはあくまで強制はせず、推奨という形で始めたが、前向きに使ってみようという一部社員がoViceにログインしてフロアを自由に利用し、雑談しながら仕事をしている光景が頻繁に見られたという。そのうち、利用者自らフロアの改善を行うなど、工夫しながら利用する社員も登場してきた。

同時期、2021年度の新入社員に対してはWeb会議ツールを使ったオンライン研修を実施していたが、oVice上でも新入社員向けに1フロアを借り、交流を深める場として用意した。「研修の合間や終了後の時間に、新人たちが自主的にoViceに入っては、自由に話し始めていました。これまでのリアルな研修では当たり前の風景ですが、そういった場をオンラインでも提供できたことで、コミュニケーションの幅が広がり、新人同士のつながりの醸成に効果がありました」と木幡氏が語る 。

  • 新卒用フロアとして使っていた研修時のoViceの様子

参考記事:2期目のオンライン新卒研修で、メンバー同士の関係構築のために取り組んだこと

さきほど利用開始時はルールを設けずと書いたが、oViceを初期から積極的に利用していた社員たちは、独自のルールを自分たちで考え出したそうだ。

トランスコスモス株式会社
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括
デジタルトランスフォーメーション総括デジタルインタラクティブサービス本部
サービス管理統括部 サービス管理部
HRマネジメント課 江上雅子氏
(所属は2022年3月時点)

木幡氏と同じ部署に所属し、採用した社員のオンボーディングやコミュニケーション施策に携わる江上雅子氏が説明する。

「使っていく中で、近くにいる社員が話しかけていい状況かどうかわからないという意見が出てきました。すると日常的にログインしていた社員たちが、信号機のような形で自分のステータスを“話しかけてOK”や“質問はOK”、あるいは“忙しいから会話できない”といったように表示するルールを作り上げていったのです」

このルールはのちに全体のルールとしても採用され、円滑なコミュニケーションにつながっているという。また、oViceのオフィスに入ったはいいものの、自分の居場所をどこにすればいいのかわからないという声もあったようで、各部署の位置を明確に決めたうえ、コミュニケーションしやすいエリアを用意するなど、リアルオフィス同様の環境づくりを進めていった。

イベント開催など社員を引きつける多彩な工夫を盛り込む

本格導入を始めて以降、oViceを日常的に活用する社員も少しずつ増え始めた。木幡氏は「oViceにいたら“木幡さーん”といって駆け込んできたり、仕事の相談にきたり、そういった経験を私自身も何度もしています。また、こういうコミュニケーションの場があることで、苦しんでいたメンバーを救えたという話も聞いています」と導入効果を語る。江上氏も「話しかけるハードルが低いのがいいですね。oViceにいればいつでも話せるということで、質問やちょっとした会話に来てくれる社員が増えました」と実体験を教えてくれた。

とはいえ、同社ではoViceへのログインを強制していたわけではないため、利用者数は一定程度まで達するとそれ以上にはなかなか増えなかったという。そこで新たな策が編み出された。「せっかくコミュニケーションの場をオンラインに設けても、人が集まらなければ新しい人間関係は生まれないので、2022年1月から社員は原則としてoVice上のオフィスに出社するという決まりを設け、新たなスタイルをスタートしました」(木幡氏)

これ以外に、単に隙間時間でコミュニケーションするだけでなく、新卒や中途採用者同士の交流会もoViceで開催。エンゲージメント向上につながる施策として、部門横断で100人以上を集めたランチ会や、2021年末にはバーチャル宴会を実行できる「oVice宴会」サービスを利用して300人以上が参加する忘年会も開いた。忘年会ではoVice宴会の格付けチェックゲームやクイズを実施し、参加者に回答を選ぶ際にフロア間を大移動させるなど、大掛かりな遊びの要素も盛り込んだ宴会に仕立てたという 。

  • 格付けチェックゲームの様子

  • クイズの回答時には正解だと思うところに移動するなど、リアルさながらの演出も可能

今後について、木幡氏は「全員がoViceに入る前提となったことで隙間のコミュニケーション拡大には成功しましたが、まだまだあまり使っていない、あるいはうまく使えていない社員もいるので、oViceのオフィス環境をより使いやすくするような工夫を加えていきたいですね。たとえば、oViceに誰がいるかすぐ把握できるように、入室情報をチャットと連携して知らせるアイデアを新たに実施しています。交流会などのイベントを仕掛けるときは基本的にoVice上で開くようにしていますし、今後は新入社員と配属先の先輩の交流を深める会や、エンターテインメント性の高いイベントなどもどんどん開いていきたいと考えています」と意気込む。また宮園氏は採用面でのさらなる活用も視野に入れており、「当社に関心を持った人がoVice上のオフィスを気軽に訪れ、人事のメンバーとカジュアル面談ができるようなスペースの設置を計画しています」と話す。

最後に宮園氏は、oViceに興味を持つ、あるいは導入を検討している企業に向けて次のように語った。「oViceはコスト面でスモールスタートできますし、セキュリティ面も充実しています。コンプライアンスの配慮もされているので、オンラインのコミュニケーションに悩んでいるなら、試してみない理由はないといってもいいくらいですね。どんな会社でもきっと有効的に使えるツールだと思っています」

関連リソース

デジタルマーケティングで幸せな社会を作る。
>>トランスコスモス デジタルインタラクティブサービス本部 情報サイト

となりで話しているような、バーチャル空間を。
>>oVice 公式HP

[PR]提供:oVice