ある仕掛品のQA値を測定し、その仕掛品をどの製品に引当てるとより歩留が向上するかを予測。予測結果と需要を突き合わせ、最終製品の歩留が最大になるように最適化——SASの分析環境を導入し、こうした施策を実現している企業がある。

12月9日-10日に開催されたTECH+ EXPO 2021 Winter for データ活用「データが裏づける変革の礎」で、SAS Institute Japan(SAS) ソリューション統括本部 製造インダストリーソリューショングループ シニアビジネスソリューションマネージャー 地主修一氏が、生産現場におけるDXの事例について紹介した。

  • SAS Institute Japan ソリューション統括本部 製造インダストリーソリューショングループ シニアビジネスソリューションマネージャー 地主修一氏

DXの目的と生産情報収集の関係

生産管理や品質管理においては従来、それぞれの工程でデータを打ち込む形で計数管理がなされており、QA値については過去の値を分析することが一般的であった。当月のデータは翌月に収集・分析され、それをもとに改善策を地道に検討する、といった具合だ。

しかし、DXが進んでいくとリアルタイムのデータが取れるようになり、計数管理がIT化される。SASでは、これを「DX1.0」と定義している。ただし、DX1.0においては、工程制御は従来どおりに進んでいくため、たとえQA値に悪い値が出たとしても、迅速に改善策を立案したり問題回避したりすることができない。地主氏は「『センサーでデータが取得できるようになったのはよいのですが、次に何をすればいいんですか?』という問いにつながってしまう」と説明する。

これに対しSASは、データに基づく意思決定を行い、モノづくりをリアルタイムで制御する「DX2.0」への進化を提唱している。

「DX2.0では、前工程で何らかの不具合が予測されたら、後工程で改善されるよう制御を掛けられるようになる。また、予測したQA値に基づいて引当の指示を出すことも可能になる。ここまで実現できて初めてDXは価値を持つ。SASが推奨する分析ライフサイクルは、意思決定の際、リアルタイムのプロセス制御や予測結果をもとに実際に工程に指示を出すというところまでを含んでいる」(地主氏)

引当制御問題のより実用的な解法とは

地主氏は、工場全体の歩留を最大化する最適化問題を解いて生産効率化の実現に至った実際の事例について紹介した。

事例では、前工程のQA値から後工程の歩留まり予測モデルをすでに構築しており、仕掛品の引当を制御するロジックにSAS/ORを利用している。これは、「それぞれの仕掛品ロットをどの製品にすると、全体の歩留を最大化するか?」という数理最適化の問題になる。制約条件は、製品のそれぞれの需要個数を引当てることと、各ロットはどれか1つの製品にだけ引当たることの2つだ。

この問題に対し、教科書どおりの発想で、各ロットを各製品に引当てるパターンを総当りでシミュレーションする混合整数計画法(MILP)を用いてしまうと、無駄な計算が発生してしまい、実用上、ロット数・製品が多い場合には使い物にならないことがある。ここで、地主氏は線形計画問題という、より簡単に解ける問題に転換することを提案する。

「ロットごとに上位歩留の製品を記憶し、歩留をランク分けして、各品種・クラスでそれぞれ何枚引当てると歩留が最大化するかという線形計画問題をSAS/ORを使って解けば、引当計画のリストが出力される。

MILPで考えてしまうと、総当たり戦での計算が必要となり、膨大なメモリリソースが必要になってしまう。プログラムは少し複雑化し、歩留もMILPで算出した値には及ばないものの、線形計画法であれば、速さは格段に向上する」(地主氏)

線形計画法による最適化の実装方法

続いて地主氏は、線形計画法でのコーディングの要点について、MILPを実装する場合と比較しつつ、デモンストレーションを交えて解説した。

1:1の引当問題を解くのに標準的なMILPを採用する場合、主要部分は次のようなコードとなる。

一方で、線形計画法を用いる場合、まずは前処理が必要となる。

次に枚数を最適化する。

そして、後処理として、ロットのチャンピオンリストから与えられた枚数だけ引当ロット番号を探していく。

このようなコーディングの工夫が必要にはなるものの、MILPを回避して非常に速く計算することが可能となる。具体的には、2GB程度のメモリのPCであっても、5000ロット1000製品の条件で快適に動くという。この場合、MILPを採用すると、メモリオーバーフローになってしまうことがありえる。

SAS/ORでは、目的に応じてMILPと線形計画を使い分けることができる。思ったようにパフォーマンスが出ないなど、MILPで行き詰まった場合には、今回紹介した手法を検討してみてほしい。

SAS/ORを導入している場合、ソースコードのサンプル提供やコンサルティングの実施にも対応している。講演の内容を踏まえて地主氏は、「難しいと考えられるお客さまも多いが、我々は現場に行って具体的に問題を定義し、数理解法を使いやすくして実用していける経験を豊富に持っている。ぜひ、これをきっかけとしてご相談いただければ」と聴講者に対してメッセージを送った。

[PR]提供:SAS Institute Japan