新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、ニューノーマル(新しい生活様式)なビジネスの在り方が求められるようになり、あらゆる領域でデジタル変革が一気に加速した。

これまでDXを牽引してきた通信業界にも変革の波が押し寄せており、これまでの通信サービスだけでなく、多様化する顧客のニーズに対応した新たなビジネスモデルを構築するための取り組みが進められている。

こうした状況のなか、2021年3月2日に通信業界を対象としたWEBセミナー「5G/IoT時代、「通信」の提供だけでは生き残れない『今求められる通信業界の新たなサービス提供のあり方とは?』」が開催された。

本稿では、このセミナーで行われた講演「カスタマーサクセスを実現するコミュニケーションデザインとは」についてレポートしていく。

エンドユーザーのニーズが変化し、サポートチャネルの多様化が求められるように

ニューノーマル(新しい生活様式)が生活やビジネスに浸透していくなかで、カスタマーサポートに求められるコミュニケーション手段も多様化し、非対面サポートの重要性が高まっている。本セミナーの講演「カスタマーサクセスを実現するコミュニケーションデザインとは」に登壇した株式会社KDDIエボルバ 企画本部コンサルティング部 部長の田村 敏紀氏は、コンタクトセンターの目線から、デジタル技術を活用してカスタマーサクセスを実現していくポイントを解説した。田村氏は講演の冒頭で、激動した2020年のコンタクトセンター業務についてこう振り返る。

  • 株式会社KDDIエボルバ
    企画本部コンサルティング部 部長
    田村 敏紀氏

  • 「2020年のコンタクトセンターを振り返ってみると、やはり“コロナ禍”一色の1年だったと感じます。労働集約型の業務となるため、消毒やクリアパーテーションの設置、電話オペレーターの出社比率を減らしてソーシャルディスタンスを確保するなど、3密の回避、感染予防に取り組んできました。その結果、電話応対者が不足して応答率が低下するケースも増え、コンタクトセンターの在り方についてあらためて見直す必要が出てきました」

    コンタクトセンター業務で以前から進められてきた在宅勤務やデジタルシフトの取り組みは、コロナ禍の影響で一気に加速。コンタクトセンターを中心としたアウトソーシング事業を展開しているKDDIエボルバにも多くの相談が寄せられたという。「コールセンター白書2020」(2020年7月に調査)によると、各企業が今後強化したい対策として「コンタクトセンターの在宅化」が61%「チャット・メールといったノンボイスチャネルの拡充」が60%と上位を占めている。同白書の調査によると、この1年でノンボイスチャネルに対応した企業は増加傾向にあるが、それでも電話での対応に依存しているケースが多いことがわかる。

    「弊社でエンドユーザー側の実態を調査したところ『アフターコロナで利用チャネルは変わりますか?』という質問に対し47%が『電話以外の手段を利用』、27%が『自己解決が増えそう』と回答。今後企業に期待したい窓口として『チャット』を挙げるエンドユーザーが多く、今後のカスタマーサポートを考えるうえで、チャットは重要な要素になってくると捉えています」

    • 「自己解決」を試みるエンドユーザーが増加する一方で、40%のユーザーがWEBやアプリで情報を見つけられなかったと回答しており、企業のセルフサポート(自己解決チャネル)がうまく機能していない現状があると田村氏。さらに同調査では、エンドユーザーが求める問題解決方法の傾向として「購入前/検討中」の段階では「自己解決」、「購入時/初回利用」の段階では、電話や有人チャットなど「人の対応」を求める傾向が見えてきたと話す。

      「検討段階ではじっくりと調べたいので、自分で調べて解決したいというニーズ、購入直後には初期設定など緊急性の高い問題が増えるため人に対応してほしいというニーズが高い傾向にあります。このように、カスタマーサポートに対するエンドユーザーのニーズは多様化しており、企業もサポートチャネルを増やしていく必要があります」

      ところが実態としては、チャットを中心としたエンドユーザーの求めるチャネルが用意できていなかったり、FAQやチャットボットといったセルフサポートのメンテナンスが行えていなかったりする企業も多く、コロナ禍で人員削減を余儀なくされると電話対応の応答率低下も懸念されているという。とはいえ、やみくもにチャネルを増やすだけでは高い効果は期待できず、コストのムダ遣いとなるケースも少なくないという。重要となるのは顧客に苦労や不便をかけない“エフォートレス”なサポートであると語った。

      エフォートレスなサポートは「自動(セルフ)」「非リアルタイム」「ノンボイス」

      続けて田村氏は、エフォートレスなサポートを実現するコミュニケーションデザインについて語った。

      「コロナ禍の影響で世の中のオンライン化は加速し、たとえば通信キャリアでいうとスマートフォンの購入契約をすべてオンラインで行うといったプランも登場してきています。非対面・非接触という流れは今後も継続していくことが予測され、非対面サポートの代表となるコンタクトセンターの重要性も増しています。これからのコンタクトセンターは、“いつでも、どこでも、気軽に聞ける、調べられる”、エフォートレスなサービスを提供することが重要となります」

      • 田村氏は、代表的な非対面のサポートチャネルをエンドユーザーの手間が少ない順に挙げ、上位2つが自動(セルフ)サービスと解説。エフォートレスなサポートは「自動(セルフ)」「非リアルタイム」「ノンボイス」なものと定義する。

        「カスタマージャーニーを軸に見てみると『購入前/検討中』段階ではWEB FAQやチャットボットなどのセルフサービス拡充により機会を創出。『購入時/初回利用』の段階では、WEBフォームやメールなど非リアルタイム、ノンボイスで手軽な手続きを実現。さらに『利用/契約中』段階ではトラブルなどにリアルタイムで対応することが必要なため、チャットや電話などが好適です。このようにエフォートレスなサポートを踏まえてコミュニケーションチャネルをデザインしていくことが大切になります」

        さらに、コンタクトリーズン(コンタクトセンターに問い合わせする理由の分析)を把握したうえでチャネルと導線をデザインすることが重要と田村氏は続けます。

        「たとえば自己解決が可能な問い合わせならばWEB FAQ、曖昧な質問にはチャットボットなど、コンタクトリーズンから目的に合わせて適正なチャネルを用意して顧客接点を設計することが、エンドユーザーの利便性を高める秘訣です」

        講演では、マルチチャネル化によりノンボイス比率の向上を実現した事例が紹介された。問い合わせチャネルが電話だけでつながりづらく応答率が低下していた課題をノンボイスチャネルの拡充で改善。複雑な問い合わせや申請対応によるAHT(平均処理時間)の長時間化はコンタクトリーズンを分析してWEBフォームを導入し、事前に情報を入力してもらうことで改善。1件あたりの対応時間が15分から2分に大幅短縮されたという。

        より能動的でパーソナライズなサポートを実現するために必要なもの

        さらにセッションの終盤では、カスタマーサクセス実現に向けた対応について解説。サポートチャネルやデジタルソリューションを導入したあとに必要な取り組みについて語られた。

        「デジタルソリューションを導入してチャネルを増やしただけで終わったのでは、形骸化して役に立たなくなってしまうことになります。エンドユーザーのニーズは常に変化を続けており、各チャネルのコンタクトリーズンから現状を把握して、継続的に各チャネルをブラッシュアップしていくことが重要です」

        田村氏は、継続的な現状把握と改善アクションの成功事例として「コンタクトリーズンに合わせたビジュアルIVRの活用による入電削減」「チャットボットの継続的なチューニングによる精度向上」「LINE連携のチャットボットで残高照会」という3つの企業の取り組みを挙げ、これからのカスタマーサポートが目指す方向性についてこう語った。

        「これまでのカスタマーサポートは、コンタクトセンターを中心とした受動的で画一的な対応、すなわち迅速・丁寧な問い合わせ対応を進めてきました。テクノロジーが進化しエンドユーザーのニーズが多様化した現在では、セルフサポートの拡充や自動応答などエフォートレスなサポートによりCS向上を実現しています。今後は、ユーザー1人1人のニーズに合わせた対応、すなわち、より能動的でパーソナライズな対応が求められるようになり、顧客データベースとのシステム的な連携も必要になってくると考えています」

        より能動的でパーソナライズにサポートするためには、フロントからバック(バックオフィスや基幹システム)までをシームレスに連携していくことが重要と話します。「エンドユーザーのニーズを把握して導線をデザインし、コストを最適化。そのうえで基幹システムとの連携やオペレーションの自動化などに投資していくことでカスタマーサクセスを実現できるのではないでしょうか」と語り、講演を終える。

        本講演で成功事例を交えて語られた、カスタマーサクセスを実現するコミュニケーションデザインのポイントは、通信業界だけでなく、あらゆる業種におけるDXの取り組みに大きなヒントを与えてくれるものといえた。

        ●同セミナーでの「経済産業省」の講演レポート
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        ●講演内で紹介、KDDIエボルバ「実態調査レポート」「事例」
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        ●コンタクトセンターのデジタル変革に役立つアセスメント・コンサルティングサービス
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