GAFAを代表とする巨大IT企業があらゆる産業に参入し、続々と新サービスを打ち出している。ディスラプターの存在感が増す中、通信事業者として通信サービスのみを提供するだけでは、ビジネス成長は見込めない時代がやってきている。岐路と呼ぶべきこの状況下で、通信事業者はどんな一手を打つべきか。

数多くの通信事業者を顧客に持つServiceNowに、事業者が今立たされている状況と打つべき一手を聞いた。

ServiceNow

ServiceNowは、デジタルワークフローソリューションを提供するSaaSプロバイダ。IT/人事/カスタマーサービスなど企業全体の多岐にわたる領域の業務統合を支援している。同社製品を導入する企業の数は「Fortune 500」の約8割の企業を含む6,200社にのぼる。
そんな同社は2020年、業界固有のデジタルトランスフォーメーションの課題に対応した「業界向け新ソリューション戦略」を発表。通信業界向けソリューションの開発にも注力しており、業界における存在感を強めている。

岐路に立つ国内通信事業者、次の一手が重要に

通信は安定性と信頼性が第一に求められる社会インフラだ。従って、事業者に求められるものはこれまで、ネットワーク中立性を確保しながら、適正にリソースを提供することであった。だが、近年はそれらに加え、これまでにない新しい取り組みが必須の状況になりつつある。通信事業がボーダーレス化してきているからだ。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈でしばしば指摘されるように、ディスラプターと呼ばれる市場の破壊者が既存のビジネスモデルを覆し、産業そのものを新しいものに変えていく動きが加速している。

通信事業も例外ではない。GAFA(ガーファ:Google、Amazon、Facebook、Appleの総称)に代表される巨大IT企業があらゆる産業に乗り込んできており、続々と新サービスを打ち出している。近い将来、通信事業のビジネスモデルも変わっていくことは想像に難くない。さまざまな企業と協業し、既存の事業を変え、顧客に新しい価値を提供できる企業に変革していく――このことが強く求められている。通信事業者にとっては、次の一手がきわめて重要になるということだ。

鍵を握るのは、プラットフォーマー戦略

そんななか、通信事業者にとっての次の一手が「プラットフォーマー戦略」にあると指摘するのは、ServiceNow Japanの新谷 卓也 氏である。

erviceNow Japan合同会社 ソリューションコンサルティング事業統括 第一SC統括本部 通信SC本部 本部長 新谷 卓也 氏

ServiceNow Japan合同会社
ソリューションコンサルティング事業統括
第一SC統括本部 通信SC本部
本部長 新谷 卓也 氏

「他の産業と違わず通信事業も、新しい技術、新しい競争環境、新しい顧客要求、新しい標準が求められている状況です。ディスラプターが台頭しつつある中、事業者には異業種と差別化する新しい事業、サービスを創出していくことが求められます。また、これまでの顧客に新しいサービスを提供しなければ、企業としての成長もありません。従来ビジネスを守り新しいビジネスも創る。そのカギを握るのがプラットフォーマー戦略です。いかにして自社のICTやネットワークの強みを生かし、エンドツーエンドのプラットフォームを構築していくかが重要なテーマとなるのです。」(新谷 氏)

同氏が述べる「エンドツーエンドのプラットフォーム」とはどのようなものか。GAFAの1社であるAmazonをイメージすると理解しやすい。

Amazonは、単にECサイト上で商品を並べているだけではなく、商品を検索しやすくし、注文した商品を追跡できるようにし、物流も自動化するなど、顧客エンゲージメントをいかに高めるかを追求している。この顧客エンゲージメントを支えているのが、販売から注文、物流、配送、サポートまでをエンドツーエンドでつなぎ、一貫した顧客体験を提供するプラットフォームだ。

商品を探し、注文し、自宅で受け取る――こうした一連の顧客体験は、Amazonだけでなく出展ショップや配送業者など、数多くの企業が介在して提供されている。しかし、顧客が感じる体験は、"最初から最後までAmazonからサービスを受けている" というものだ。つまりAmazonは、さまざまなパートナーのビジネスをシームレスに繋ぐエコシステムを構築することによって、先述した「一貫した顧客体験」を提供しているのである。

プラットフォーマー戦略を阻害する2つの要因

「エンドツーエンドのプラットフォーム」の前提は、ビジネスやサービスを適切なスピード、適切なコスト、適切な品質で提供できることである。これは「一貫した顧客体験の提供=顧客エンゲージメントの獲得」と同義だが、実現するのは容易くない。

「既存のビジネスを維持することも重要という考えから、多くの企業が、新しい取り組みをスムーズに着手できずにいます。通信事業者も同様です。」このように新谷 氏は言及。しかし、根幹を紐解くとそこには「業務のサイロ化」と「品質を優先した開発モデル」という2つの課題があるとし、以下のように説明する。

業務のサイロ化

業務のサイロ化とは、一貫した顧客体験を提供すべき部門部署、パートナーがバラバラな状態で連携されていないことを指している。

「通信サービスについては、多くの事業者で個別最適なアプローチが採られてきました。これは社会インフラとして "つながる" という品質を重視してきたためであり、決して間違ってはいません。ですが、今後Amazonなどのプラットフォーマーと比較される時代に入ると、顧客は当然、エンドツーエンドでサービスを享受することを望むようになります。その際は、個別最適の結果生じている業務のサイロ化が阻害要員となるでしょう。実際、こうした懸念を既に持っておられる通信事業者のお客様からの相談は増えています。販売やサポート窓口の部門、スムーズな製品やサービスの提供を担うサービスオペレーションの部門、システムやサービスのバックエンドを担うテレコム基幹業務の部門がうまく連携できずにいるという声を多く耳にするようになりました。」(新谷 氏)

品質を優先した開発モデル

品質を優先した開発モデルとは、要件定義から設計、実装テスト、リリースの工程を従来型のウォーターフォール開発で行うモデルを指している。

「社会インフラとして安定性と堅牢性を重視したシステム開発では、ウォーターフォール開発が高い効果を発揮してきました。ただ、環境変化が激しい中で顧客ニーズに素早く対応していくシーンでは、世の中のテンプレートを業務に適応したり、アジャイル開発のような開発モデルを採用することが重要になってきます。しかし、これまでのやり方を変えることは簡単ではなく、戸惑いがあったり取り組みがうまく進められない現場が多いと感じています。」(新谷 氏)

プラットフォーマーと比較される時代を見据えるならば、サイロな業務をエンドツーエンド型へと変えていくことは急務となるだろう。この過程では、サービスを提供するまでで使用されるシステムも標準化が必要だ。可能な限り複数の業務が単一システム上で行えるようする。異なるシステムにまたがる場合にも仕様を標準化しておくことで人と業務をシームレスに接続する。ウォーターフォールのような "業務に合わせたシステム" では、柔軟性に欠けるためにこうした連携が難しい。したがって "システムに業務を合わせる" という発想転換が必要になるだろう。

  • 顧客要望に応対する場合、一般的には異なる部門が異なるシステムで対応を進めることとなる

    顧客要望に応対する場合、一般的には異なる部門が異なるシステムで対応を進めることとなる。この環境を標準化、統合すれば、サービス品質向上ひいては顧客エンゲージメントへ繋げることができる。

ただ、新谷 氏は、ウォーターフォールという考えを捨てろという話では決してないと言及し、次のように語る。

「通信事業者が重視してきた安定性や堅牢性は産業としての大きな武器ですから、サービスの根幹となる『プロセス設計』にあたっては、これまでと同様ウォーターフォール形式で進めるべきでしょう。ただ、各プロセスを構成する1つ1つの業務は、テンプレートを使って標準化し、柔軟性を担保する方がよいです。根幹のプロセスさえ間違いがなければ、たとえ顧客要望が変化しても業務の各テンプレートを変えるだけで対応できるようになりますし、標準化によって業務間をシームレスに繋ぐことも可能となります。ServiceNowが提供できる価値もここにあります。」(新谷 氏)

エンドツーエンド型のサービス提供モデルを支援する「Telecommunications Service Management」

ServiceNowは、エンドツーエンド型のサービス提供モデルを支援するプラットフォーム「Now Platform」を提供している。このNow Platformを活用すると、社内外に存在する人、各組織で行われる業務、タスク、コミュニケーションなど、サービス提供に必要な要素を単一システムで繋ぎワークフロー化することができる。Now Platformが包括していない業務領域についても、APIなどによって連携すればワークフロー化が可能だ。

  • Now Platform

さらに、ServiceNowではこの「Now Platform」の上に、通信事業向けのエンドツーエンドのワークフローをテンプレート化した「Telecommunications Service Management」を提供。これを適応することで、業務をエンドツーエンドで整流化することが可能となる。

  • サービス提供業務のデジタルワークフロー化が可能だ(左)。右の図は、ネットワーク接続サービスの中断から復旧までのワークフローイメージ
  • サービス提供業務のデジタルワークフロー化が可能だ(左)。右の図は、ネットワーク接続サービスの中断から復旧までのワークフローイメージ
  • サービス提供業務のデジタルワークフロー化が可能だ(左)。右の図は、ネットワーク接続サービスの中断から復旧までのワークフローイメージ。
    ※画像クリックで拡大

人と業務を統合してワークフロー化できることがNow Platformの大きな特徴なわけだが、 No Code/Low Codeな開発プラットフォームであることも同製品のユニークな点だ。

「業務をテンプレート化することで、顧客要望へ素早く応えられるようになると先ほど述べました。ただ、テンプレートの変更に専門的なスキルが必要では、開発からリリースまでのリードタイムが長くなってしまいます。Now Platformの場合、IT管理者でなくともプログラミング知識なしに業務テンプレートを改修していくことができますから、顧客ニーズに対して迅速に対応することが可能です。」(新谷 氏)

通信事業者のチャレンジを支える

Now Platformを利用してエンドツーエンドのプラットフォームを構築すると、どんなビジネスインパクトが生まれるのか。2つ実例を紹介したい。

1つは、ServiceNowの顧客である欧州通信会社Vodafoneの取り組み。同社はNow Platformを活用して、カスタマーサービス担当者が活用していた24種類ものアプリを「360度お客様ビュー」という一元的なプラットフォームに統合した。複雑な業務プロセスに起因する対応の遅延やミスを減らすことにより、カスタマーサポートの顧客満足度は25%向上。さらに従業員NPS(ネットプロモータースコア)に至ってはなんと66%も向上した。

  • 分散していた業務をNow Platformに統合しワークフロー化することで、Vodafoneでは顧客満足度と従業員NPSの両方を引き上げることに成功

    分散していた業務をNow Platformに統合しワークフロー化することで、Vodafoneでは顧客満足度と従業員NPSの両方を引き上げることに成功。

国内実績も既に存在する。ある国内大手通信キャリアでは、ServiceNowを活用して大規模商用サービスにおける故障発生から復旧までのワークフロー全体をエンドツーエンドで完全自動化した。これによりプロセス復旧までの時間を、従来の15~30分からわずか1分へと大幅に短縮したという。

「それぞれ異なる用途でNow Platformをご利用いただいていますが、両社様の間で2つ、共通していることがあります。顧客エンゲージメントの獲得に向けた大きな成功ビジョンを持っておられること、なおかつ、そこへ向けたアプローチは『スモールスタート/クイックウィン』を採っていることです。通信事業は "つながる" という品質が最重要ですから、簡単には大きな変革は進められません。それゆえにこれらのお客様は、小さなPDCAの積み重ねでエンドツーエンドのプラットフォーム構築に臨まれたのでしょう。これは通信事業者のプラットフォーム戦略を推し進める一つのロールモデルだと考えています。」(新谷 氏)

企業においてDXの取り組みが加速するなか、通信事業者への期待は年々高まっている。ServiceNowでは、そうした通信事業者の取り組みをサポートしていく構えだ。

[PR]提供:ServiceNow Japan